刀奪い 対セレジア 前編
「ジュリア・ブールのドッキリTVの視聴者、皆さまこんばんは。
前回の再生数は…………1588再生!? この再生数の訳はセレジアVSフレインの戦闘シーンがあったからだろ。なんか知らないところから、「戦闘はこれだけか?」「違うアングルからの映像はないのか?」など、うるせえことになってた。
で、そんなこんなでフレインの刀を奪うことに成功したが、一応フレインの任務予定について調べ(させ)てみた。
直近3日は任務なし。
もし任務があったら、さすがに返してやろうか考えるわ。考えるだけな。
フレインは動術士だから、この刀も、「折れない刀」のみの価値しかなくて、この刀に宿ってる能力は使えない。だから、フレインの使う刀は能力刀であれば正直なんでもいいことになる。
でも、あいつはこの刀を心底気に入ってる…………らしい。
で、この刀についても調べてみた。
能特刀「ドツ・ダラ・ヴィーラ」 常色刀(白)、能力:「運」
能特刀ってのは……説明がめんどくせえ! ざっくり言うと公式が認めたすごい刀のカテゴリーに含まれるってことだ。
常色刀ってのは常に刀身が色づいてる刀のこと。能力がやどった刀はほとんどすべて刀身が何かしらの色で染まる。は刀術《印加》で能力を発動させた時のみ染まる刀がほとんどの中、常に色づくのが常色刀だ。レアなんだぜ。
ダンテの刀「エイロ」は橙色、俺の刀「ゲンチア」は青紫色に染まる。常色刀じゃないから、《印加》するときのみ色がつく。してない時は普通の刀。
ということで、この「ドツ・ダラ・ヴィーラ」っていうなんとも禍々しい名前の刀を、フレインはおそらく3日以内に取り戻しに来る……。
楽しみだ。でも今回のターゲットはセレジアだ。
『この番組はターゲットに人道的なドッキリを仕掛けて、それを撮影、編集し、非公式電波に乗っけて放送するという形でお送りいたします』
●今回の作戦
「セレジアが共用浴場に入浴中に、ロッカーから刀を奪う」
フレインの刀ドツ・デラ……? あれ? なんだっけ? ああ、そうそう、ドツ・ダラ・ヴィーラか。ヴィーラでいいや。
ヴィーラを奪うことに成功したから、味をしめて、セレジアの刀も奪えないかな……って思ったしだいです。はい。
●実行
<共用浴場近く2030時>
セレジアが刀をロッカーヘ入れ、服を脱いで、バスタオルを巻き、髪を留めて、風呂場へ行った。
脱衣所にカメラを仕掛けて盗撮して確認中。
一応3分ほど待ってみる。……………………戻っては来ない。
「いくぞ、ダンテ!」
「おう」
脱衣所へ入った。
「じゃあ、ピックよろしく」
「高くつくぞ」
ダンテはロッカーの鍵穴に金属の棒を2つ差し込み、カチャカチャする。
脱衣所には俺たち2人以外に誰もいねえ。でも風呂場には何人かいるっぽい。あまり見られたくはない。
2分経過
「遅えぞ!」
「うるせえ! じゃあおめえがやるか?」
「何言ってんだ、できねから依頼してんだぞ! 客の言うことは黙って聞けよ」
「てめ…………開いたわ」
「でかした!」
その時だった。
脱衣所と風呂場の扉が開いた。出てきたのは……………………フレインだった。
「ビビらせんな! フレインかよ……。おめえ、ここ使ってたっけ?」
フレインも俺たちの存在にビビってる。そして身構えてる。
「二人とも何やってるの…………。…………そんなことよりドツ・ダラ・ヴィーラ返してよ」
「力づくで奪ってみろや! まあ、簡単には返さないけどな!! はははは!」
「……………………」
フレインが、「えぇ……」と言わないことに違和感を覚える……。
フレインの表情は、何かを迷っているように見えた。
そして、意を決したような表情に変わると、風呂場の方を振り返り……
「セレジア! 刀が二人に奪われる!!」
……と叫んだ。
この野郎…………!!