ガラス割り2 対セレジア 後編
<シャール基地施設0708時>
特訓する俺。監督はダンテ。
「違う! 《加速》はいきなり全力じゃなくて、後半に集中させろ! じゃねえとロープがキレちまう!」
突入方法は、前回と同じく、上の階からロープで降りて、両足で、ドカン! って感じだ。だがそれだけだと、《加速》する距離が足りねえ。だから、上の階の部屋の中から《加速》を開始する。そして、ロープを頼りに、180度《加速》方向を反転させ、セレジアの部屋に突っ込む。
ダンテの指導は途切れることがなかった。
「両足揃えて、窓に着地しろ! 突入後にバランスを崩すぞ!」
「練習時でも《加速》《排他》は本気でやれ! 怪我したいのか!」
「ちゃんと、部屋の中に入った後のこともシミュレーションしとけ! そっちが本番だろ!」
練習は休憩も挟みながらみっちり12時間続いた。朝6時から夜6時まで。
ちゃんと本番通り、強化ガラス+鉄格子のセットを使って、リハしても、突入は成功した。
ちゃんと、強化ガラスの種類と鉄格子の種類も合わせた上でのリハ。
え? なんで種類を知ってるかって? 前回セレジアの窓を割った時に、俺のとこに請求書が来てて、それを見た。金の管理はめんどくせえからそっちのけ。だから、セレジアが鉄格子をはめたことも知らんかった。
シャール基地から、イーティル軍本部までのヘリでの移動中は仮眠をとって、休息。
<本部兵舎棟セレジア部屋の上の部屋0302時>
そして、本番。
「おはようございます」
午前3時。良い子も悪い子も寝る時間だ。セレジアの直上の部屋。家主は拘束中。
もちろん赤ジャケ着用中。プレートは邪魔だから今回はなしだ。
対象確認。寝てる。が、すぐそばに刀をおいてやがる。
「ジュリア、セレジアが刀持って寝てんのって前回のせいじゃねえの?」
「まさか……考えすぎだろ」
「まあいい。カウントダウンを開始する! 10、9、8、7、6、GO!!」
「はいはい……」
俺は一気に外に飛び出した。ある程度飛んだところで、ロープに引っ張られ、まるでターザンのように弧を描いて、セレジアの窓へ接近。《加速》と《排他》を最大限にして思い切り窓をぶち破った。
強化ガラスが割れ、鉄格子が外れる
。
ものすごい音を出しながら、俺はセレジアの部屋の中に突入できた。
足と《加速》によって、減速する。耳につけたインカムのカメラで、ベッドで寝てるセレジアを撮影した。
しかし……
ベッドで寝てるはずのセレジアが、すでに身を起こしていた。いや……それだけでない。刀を握り、すでに抜刀していた。
抜刀? いや……もうすでに斬り終えた体制をしてるのはなぜだ?
その時、急にうなじが寒くなった。文学的表現じゃねえぞ! 本当に寒くなったんだ!
確認すると俺の肩まであった髪が耳下くらいまでに、スパッと切断されていた。思わず首が繋がっているかを確認するが、無事だった。
「またですの? こんな時のために刀を持って寝ていて正解でしたわ」
セレジアの使う刀の能力は「切断」だ。能力しだいだが、刀を振るだけで斬撃を飛ばすことも可能だ。そして斬る物を選択することも可能だ。
つまり、セレジアは俺が入ってきた瞬間に、俺の首元を横に一線、斬撃を放った。首は切断せずに。髪だけ切ったわけだ。
したがって、俺はセレジアの裁量次第で、首が落ちていたってっことになる…………。
「短い髪もお似合いですわね」
セレジアがそう言うも、まるで頭に入ってこなかった。
「っててめえ! お……覚えてろ!! 次は……次こそドッキリ成功させてやる!!」
俺は玄関から走って出て行った。
●失敗理由
セレジアが強かった……
いや……マジで……怖かった……。てか、まだ風邪治ってなかったのかな……?