風邪ひかせ 対???? 後編
「うっへ! つめてえええ!!!」
予想以上に冷たかった。だが、セレジアの顔は一切の変化を見せなかった。ちょっと期待したんだけどな。
ダンテとフレインはゆっくりと浸かっていき、肩まで沈んでいく。
狭い水風呂に4人が固まって、体を小さくして入る……。はたから見れば異様な光景だろうな。
奥に俺とセレジア、手前側にダンテとフレイン。俺とダンテは隣同士。つまり、
奥
ジュリア セレジア
ダンテ フレイン
手前(出入り側)
こんな感じ。
「おいフレイン、肩までちゃんと浸かれよ、不公平だぞ」
「おいジュリア、動くな。冷たい」
水風呂入ってる時って、静か〜に浸かってれば、体の周りの水が温まって、冷たさをあまり感じない感じになれる。まあ、その時に誰か入ってきたら、殺したくなるけどな。
「おいセレジア、どうやったらそんなデカパイになれんだ?」
「別に何もしてませんわ。まさかご自分を気にしてまして?」
「してねえよ! 成長中だって言ってんだろ! そんなことより、ダンテとセレジアではどっちが、でかいんだ?」
「おめえ、さっきから胸の話しかしてねえな」
3分経過…………
慣れてきた…………。
セレジアは変化なし。フレインはいつものように丸まって小さくなってる。ダンテは少しだけ辛そうに見える。
10分後…………
結構クル…………鼻水が勝手に出てきて、止まらねえ。
セレジアは少しだけ顔が白くなってきた。フレインはそれを通り越して青ざめてる。ダンテはいつの間にか目を閉じて必死に耐えてた。
「おい、セレジア……限界が近えんじゃねえのか?」
「ダンテさんとフレインさんの方が限界が近いのではありません?」
「…………もう限界!!」
その時、フレインが水風呂から上がろうとした。
「まだいけるって!!」
俺がフレインの足を掴み、引っ張る。フレインも必死に抵抗する。
「おいダンテ! 手伝え!!」
「……………………」
ダンテ、戦闘不能。使えねえ奴だ。
「おいダンテ!! 寝たら死ぬぞおおお!!」
俺はフレインの足を掴みながら、ダンテの顔面を思いきり殴る。
「てめえジュリア!!」
そう言ってダンテは俺の後ろに回って、チョークスリーパーで首を締め上げる。
「ギブ! ぐぃぶ!! ぁいってる!! hぁいってる!!」
意識が薄くなり、フレインの足を離してしまった。俺はダンテに反撃するために、頭を思いきり後ろへ打ち付け、ダンテの頭と衝突させる。
「いってえええ!!」
俺が言っちまった。ダンテは無言のまま後ろへ倒れた。もちろん俺も。
視界が、水の中になった。
「やってられませんわ……」
セレジアも、バシャバシャと水が跳ねる中で水に浸かるのはしんどいらしく、水風呂を出た。
俺とダンテは冷たい水風呂の底で溺れ掛けていた。
気づいた時には、フレインも、セレジアも浴場にはいなかった。
俺とダンテはキンキンに冷えた体を暖かい湯に浸かって、温めていたが、体の中は寒いのに、表面は暑く感じるという謎の現象によって、我慢できずにさっさとあがっちまった。
風邪ひき作戦を立案した俺たちが風邪をひいちまうのは本末転倒だから、ちゃんとビタミンCとB群を摂取、ヨーグルトとオリゴ糖摂って腸内環境改善させて、うがいと手洗いして、暖かい状況で寝た。
翌日……
フレインの部屋にて
「ずずずずzzz、はああ……、へ……へっ…………へっくしょん!!!!」
鼻をすすり、かんでもかんでも出てくる鼻水と、止まらないくしゃみ。
フレインは風邪をひいた。
セレジアの部屋にて
「けっほ! けっほ!! こっほ…………はあ…………」
止まらない咳、チクリと痛みも感じる喉。
セレジアは風邪をひいた。
ダンテの部屋にて
「ふう……ふう…………ガタガタガタガタ…………」
勝手に動く下顎が歯を鳴らす。着ても着ても暑くならない体。
ダンテは風邪をひいた。
ジュリアの部屋にて
「うぅ…………また来た…………いててて! はあ、いてえ」
定期的に腹部を爆撃してくる痛み、わかない食欲。
ジュリアは風邪をひいた。
結局全員風邪をひいた。
鼻くる人(フレイン)は黄色のベンザ
喉からくる人(セレジア)は銀色のベンザ
熱からくる人(ダンテ)は青色のベンザ
腹からくる人(俺)は茶色のベンザ?