FPS 対セレジア 後編
翌日以降も、俺たち二人は1日1時間くらいはログインして、同じことをした。それでも、セレジアは懲りることなく、俺たちの相手をした。もちろん俺たちがセレジアから銃弾を受けることは一度もなかった。
だが、セレジアは日を追うごとに無駄な動きが減っていって、立ち回りがうまくなっていった。左手だけてのが信じられねえ。
「つまらねえ! セレジアの反応が面白くねえ!」
「こりゃ、作戦失敗なんじゃねえの?」
ダンテがほざく。
「うるせえ! こりゃ、顔も確認しねえとダメだな! 本当は悔しそうな顔してるかもしれねえだろ」
作戦の修正、盗聴だけでなく隠しカメラも使用して観察することにした。
セレジアが病室にいない時に設置。
そして俺の部屋に、もう一台のディスプレイが設置された。
「なんか狭くなってきたな」
「ほら、セレジアのご帰宅だ」
ダンテに言われ、カメラからの映像を見る。
「エッチなシーンでも写っちゃわねえかな」
俺は変な心配をした。
「別にいいんじゃねえか、ある種のドッキリ成功だろ」
「それもそっか!」
セレジアはまたゲームを始めた。気のせいか、なんだか嬉しそうに見えた。カメラをセレジアの顔面アップにして、俺たちもゲームに参加する。
今日のセレジアはいつもより動きがおぼつかなかった。やる気がなくなったのか? と思ったが、顔つきと、キャラの動きで、ただ単純に完全に操作できていない様子だった。
「なんだよ、弱えな」
「こっちが飽きちまう」
俺は、コントローラーを置き、カメラを操作して、セレジアの体全体を移す。
「…………」
なんだ? 別に変なところはねえが、なんか違和感が…………。
ピンクの患者着を着て、正座でコントローラーを操作するセレジア。もちろん右手だけでコントローラーを操作してる。
ん? 右手?
「なあ、ダンテ……セレジアが怪我したのってどっちの手だっけ?」
「あ? 右手だよ、何言ってんだ」
「……………………」
その時だった。セレジアが急に両手でコントローラーを握った。
「まずい!!! ハンデが消えた!! 反撃くるぞ!!!」
「はあ?」
ダンテがそう言った瞬間、ヘッドショットがダンテを襲う。
「くっそ!! やられた!!」
俺も急いで、コントローラーを握り、ダンテとともにセレジアを攻撃する。
だが、ハンデから解放されたセレジアは強いってもんじゃなかった。
動きの無駄は皆無、俺たちの動きを読んで、感知される前に脳天をぶち抜く。さらに気に食わねえのが、俺たちの連携を断ち切ろうとはしなかったことだ。一人と一人を相手にするんじゃなく、真っ向から二人を相手にしてやがる。
俺 「くっそ、体にも当たんねえ!!」
ダンテ「なんであの距離から頭当たんだよ!!」
俺 「壁通しやがった!!!」
ダンテ「ナイフで殺しやがった!!!」
そしてついに、両手を使ったセレジアに一発も当てられないままゲーム終了。
「くそおおおお!!!」
俺はセレジアが映るディスプレイにコントローラーを投げつけた。もちろん画面にヒビが入る。
「動きがぎこちなかったのは右手でやってたからか。てか、右手がもう動くのか」
ダンテが分析する。
「気は済みまして? わたくしもすっきりいたしました」
セレジアの声が聞こえてきた。
「ちっ…………バレてたか……」
●失敗原因
…………練習不足……?