トイレ襲撃 対フレイン ②
フレインの声がした瞬間、個室のドアが開かれた。ゲンチアが扉に刺さる前にフレインの愛刀のドツ・ダラ・ヴィーラがはじき返した。
俺は後方に下がった。フレインも個室から出てきて対峙する。
「なんでドアを開いた? そのままゲンチアが刺さってれば有利にな状況になるんじゃねえの?」
「ドアが壊れるから」
「お優しいこと。……どうした? 外へ続く扉はここ1つだけだぜ? 油断したな、窓のないトイレに隠れるなんて」
「そう……だね……」
なんか気に食わん……。いつものフレインじゃねえ。なにかを気にしてるというか、何かを狙ってるように感じる。
「なんだ? 何を気にしてる、フレイン・イクスクル」
「…………」
ちっ!! ムカつくなあ!!
俺は左手でハンドガンを構え、フレインに掃射した。フレインは《排他》で銃弾を防ぐ。その排他空間を俺はゲンチアで刺突する。
フレインは《排他》を解除し、刀で刺突を弾く。そのまま《加速》し、一気に逃げようとする。
「おっと、そうは問屋が!!」
予期していた俺は、《排他》と《加速》を発動しながらフレインの逃走ルートを妨害する。フレインはとっさに方向を切り返そうとするも、俺も同様に反応した。
フレインは俺の行動を見て、1度距離をとる。
「なんだ、そ……」
フレインは距離を開けた瞬間に再び距離を一気に詰めた。
その行動に反応が遅れた。《排他》も間に合わない!
フレインは刀を思い切り伸ばし、俺の右耳を斬りつけた。
斬られたと思ったが、フレインが狙ったのは……
カメラだった。
耳から外れたカメラがトイレの床に転がる。見事に真っ二つになったカメラだったものは、セレジアに壊された時に比べて修理が絶望的なのが一目でわかった。
せっかくの新品をもう壊されてしまった。
「…………」
「…………」
しーんと静まり返るトイレ。
「やってくれたな……このやろう……」
「…………」
俺はゲンチアを納刀すると、両手でそっとカメラだったものを拾い上げる。
それを両手にのせたまま、俺はトイレを出た。なぜか、鼻水がよく出てきたから、何度か鼻をすすった。
トイレに1人残されるフレイン。
「成功……したのか……な?」
念のためフレインはしばらく抜刀状態を解かなかった。