トイレ襲撃 対セレジア 終
その時だった。誰もいないはずの後ろから斬撃をうけた。確かに左耳を冷たい刃が攻撃してきた。
耳につけていたカメラが鈍い音を立てて壊れる。セレジアとダンテの顔は、予想もしてない状況に驚くものだった。
耳を攻撃した正体は……先ほどかわしたエイロだった。
床に転がるダンテの刀。あたりはシーンと鎮まり返り、戦闘は停止した。
「あら……お気の毒に」
「おいおい、カメラ死んでねえか?」
ぼーっとしてた思考がみるみる戻っていく。心配するのはもちろんカメラだ。
すぐさま左耳のカメラを外す。耳も切れたのか、自分の血がカメラや手についているのがわかるが、そんなことどうでもよかった。
レンズは割れてない。だが本体部分はスパッと切れていて、修理は絶望的だった。今日取った分も取り出せるかはわからねえ……。
「てめえふざけんなよセレジア!! 何してくれとんじゃ!! どれだけ高かったかしってんのかよ!! オーダーメイドだぞ!! そもそも刀を蹴るヤツがあるかよ、恥をしれ恥を!!」
「それは失礼いたしましたわ」
セレジアはひょうひょうと口にした。
「ダンテ、てめえもてめえだ!! 自分の刀ぐらい自分で握ってろや!! どうしてくれんだよ!! あーもう!!」
「何言ってんだこいつ」
「萎えたわー。あーあーツマンネ。帰るわ。邪魔だ、どけセレジア」
俺はセレジアのすぐそばを通りながら言った。
セレジアは何も言わなかった。表情をちらりと見ても「はいはい……」と言わんばかりにいつも通りだった。
隙を見て一撃入れることも考えなくはなかったが、ガチでテンションだだ下がりだったし、多分攻撃してもセレジアはきっと簡単に対処しただろう。
カメラどうしようか……。予備なんて作ってあったか……? 修理じゃすまねえよな……。今度から安いので代用するのはどうだ? いや……どうしよう……。
ダンテは刀を拾い上げた。
「雑に扱いやがって……」
セレジアはネリンを手の平から体の中へ納刀し、そそくさとその場を後にする。
「おいセレジア、口直しに俺と一試合どうだ?」
ダンテがわざとらしく挑発的に言う。
「遠慮しておきますわ」
セレジアは振り返らずに返した。
荒れ果てた女性用トイレ。その中にある、鍵がかかっていたもう1つの個室がゆっくりと開く。
「弱点は……カメラ……?」
フレインはそっとつぶやいた。