爆弾1 対フレイン 前編
モニターの前で、ターゲットが来るのを待つ少女。映る廊下に仕掛けたのは爆弾。もちろん本物。
少女はかれこれ2時間もの間、待機していたが…………
画面に、やっとターゲットが映る。
少女は、爆弾のボタンに親指をかけた。
動画視聴者のみなさん、いかがお過ごしでしょう。『ジュリア・ブールのドッキリTV』の時間がやってきました!
まずは自己紹介。企画、司会、実行を担当するジュリア・ブールと言います。軍所属の15歳独身女性です。
…………堅っ苦しい敬語はやめやめ!
経歴は面倒だから今度にすっから!
『この番組はターゲットに人道的なドッキリを仕掛けて、それを撮影、編集し、非公式電波に乗っけて放送するという形でお送りいたします』
さっそくターゲットの紹介。
この神経質そうな顔してる女兵士がフレイン・イクスクルつう奴。見た目通り超ビビリで、危険察知能力だけはチートレベルな奴。周りからは最強って言われてるが、まあ否定はしないわ。
俺の目的はこの最強と呼ばれるフレインを屈服させること。屈服と言っても難しいから、まずは体に傷をつけることを番組の目標にしてる。最強言われるだけあって、あいつの体は傷ひとつ無いし、怪我したところも、入院したところも見たこと無い。
え? 裸を見たことあるかって? まあ、多少は……。
ターゲットはもう一人いるが、そいつは次の次の回で放送します。
●今日のドッキリ
「フレインの部屋に爆弾を仕掛ける」
すごく簡単な作戦だ。シンプルイズベスト。え? 死なないかって? この軍の兵士はなんらかの能力(異能)を持ってるから大丈夫。能力つっても3種類あって、身術、動術、刀術がある。俺は刀術、フレインは動術を持ってる。それ以上の説明はめんどくせえから割愛。今度説明してやる。
じゃあ、爆弾の用意。
<兵舎棟1400時>
ある奴に電話をかける。相手は腐れ縁の奴。あ? 相棒じゃねえよ。
「もしもし、ダンテか? 今から爆弾用意しろ」
「あ? 何言ってんだ。自分で用意しろよ」
電話の主はダンテ・インプつう軍人。ぱつきんロング、外見だけはやたらいい奴。俺と一緒に任務をすることがほとんど。だから相棒じゃねえよ!
「めんどくせえからだよ! 前に使おうとした威力弱めの奴あんだろ。それでいいからよこせよ」
「ああ、入院中のセレジアに送ろうとした奴か。持ってくなら勝手に持ってけ、部屋のベッドの下にあっから」
早速回収した。
<兵舎棟ダンテの部屋近く>
「なんでついてくんだよ」
ダンテが爆弾と一緒についてきやがった。
「フレインにかますんだろ? 見せろよ」
「番組見ればいいだろうが! ……勝手にしろや」
●第一関門 フレインの部屋の開錠<兵舎棟フレインの部屋近く>
フレインっていまどこにいるんだ?
「いまフレインは?」
「調べとけよ。任務か訓練じゃね? 昨日は見かけたぞ」
「おう」
帰ってこないうちに仕掛けちゃうか……。
「どうやって部屋ん中入んだよ」
ダンテが聞いてくる。
「めんどくせえから扉の前の、あの消化器の裏っ側でよくね?」
「雑な野郎だ」
「野郎じゃねえよ」
めんどくさかったから部屋内ではなく廊下に設置することに。
設置完了。小型とはいえ、消化器が壁内の空間からちょっと飛び出してるが、まあいいや。
廊下の端に小型カメラ設置、ライブ映像を確認しながらフレインを待つ。部屋の前に来たら手元のスイッチでドカン。
完璧だ。
1時間後……
<兵舎棟ジュリアの部屋>
「遅ええ!」
イライラする。
映像の確認は俺の部屋でやってるが、ダンテの奴俺のベッドで寝てやがる。
2時間後……
来ねえ。ここらへんは編集でカットだな。
ちなみに編集は下請けに出してる。もちろん非公式? 違法? なところに依頼してる。
ダンテはまだ寝てる。もう夕方だぞ。どっかの主婦かよ。
3時間後……
「来た!!」