第7話 銀輪部隊
「またどうしようもない休日を過ごしてしまったなぁ。」
月曜日0815分頃の大江戸線、酒臭い息を吐きながら珍太郎は思った。
サラリーマン諸君、特に仕事にやりがいを感じない皆様にはお分かりの通り、
Monday Blue…というものである。
さらにここに二日酔いが重なった時の、どうしようもない情けなさ、
未来以前に、今日の夜までもが想像できないほどの空しさは、
是非とも道徳の教科書に載せて、未来ある若者に警鐘を鳴らしたいと思うほどだ。
立ったまま、ボケッと物思いに耽る。
花金の夜、大船酒場での珍太郎は「かち割りワイン」を飲んでいた。
ふと気づけばやたらに肌寒く、尻から太ももにかけてが痛かった。
肌寒さと共にザザザっとホワイトノイズのような音が聞こえてくると、
徐々に珍太郎も状況を把握しはじめる事になるのだ。
珍太郎は見知らぬコンクリートの塊に身を寄せていた。
そして遠くに、暗い闇が見えてくると、若干悟ってきた。
「あっ!」
なぜか珍太郎は驚くほどの速度で鞄を探り出す。
財布、定期、社員証、鍵、カード類、タバコ、携帯電話、
必要な持ち物を確認して、息を吐くと、財布の中身を見て、残念そうにタバコに火をつけた。
「予想以上に使っちまったな。」
外は雨がザーザーと降っている。
そして周りは銀輪部隊、そう駐輪場で雨宿りをするうちに眠ってしまっていたのであった。
そこからの珍太郎は慣れた様子で携帯電話に没頭し始めた。
まず、位置情報を確認して、そのままタクシー会社に電話、物の数分で、小汚い家に到着し、
再び眠り始めたのであった。
珍太郎のような酩酊者は、普通以上に危険な目に合う事が多く、
トラブルに対し、何をしたらいいか、一般人よりも把握している物なのだ、
例えば、珍太郎は鮫洲の免許センターに5年で3回くらい行っている。
つまりはそれだけ経験豊富なのである。
土日は大した事もなく、基本的に夜までネットサーフィンを繰り返し、
大船酒場に繰り出して、酩酊して帰るといった日々が続いた。
土曜日の午前は二日酔いの中、彼女への言い訳対応に追われた。
原因は酩酊時の電話に、酒場の女が出てしまった事であった。
終わったら、阪急ブレーブズ(現:オリックス)についての調べものをしていた。
山田久志のシンカーボールについて考えていると、珍太郎は心が躍った。
他人にとってどうでもいい事が人間一番好きなものであったりするのである。
胃腸が回復してくると、シャワーを浴びて酒場に出かける事にした。
日曜日についてはあまりに酷い生活であったので、
珍太郎の名誉を守る為、筆者が割愛する。
「Eagle fly free, Let people see, Just make it your own way」
~大空を舞う鷹よ、人々の目やルールを気にする事はないさ~
初期ハロウィン、マイケルキスクのハイトーンで現実に戻された珍太郎は
会社が近づく事に嫌な気分を感じたが、
手を打てるわけもなく、とぼとぼと電車を降りていくのであった。