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サボリーマン珍太郎   作者: ケリーバーン
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第6話 大船酒場とバンドマン

凍える街に一人、未来の姿が見えないのはまた珍太郎も同じであったが、そんなことを妄想するうちに大船酒場に辿り着いたのであった。


「らっしゃい」

「おう、珍ちゃんお疲れよ」


ワイワイと賑わう酒場にあっという間に馴染む珍太郎は昼の職場からは想像できないほどにアクティブだった。


あどけない若者を捕まえては、


「覚悟ってのは暗闇の荒野に進むべき道を切り開くことだぜ」

と言ってみたり、


おじさんと肩を寄せ合っては会社では見せないようなとびきりの笑顔を見せたりするのだ。


それもこれも酒場の良い雰囲気に気持ちが明るくなっているからなのだが、やはり酒の力を借りているところが大きかった。

さらに言えば珍太郎を一気に酔わせてるのは、誰がどうみても「かち割りワイン」のせいであった。


「かち割りワイン」はジョッキ一杯の氷に赤ワインを注ぎ込んでくれるシロモノで気をつけなくてはあっという間に酩酊する危険酒であった。


そして珍太郎は「かち割りワイン」が大好きであった。

現実のあのクソ野郎どもの事を忘れて、アルコールの天国にあっという間に連れてってくれる、、

しかも290円やで。

と、まさに現実逃避にうってつけの酒と言えた。


そんな中、珍太郎に問いかける声があった。


「あんた、アイアンメイデンが好きなのかい?」


ちょっと驚いて振り向いた先には、モーターヘッドのTシャツを着た中肉中背の男が立っていた。


なんで俺がアイアンメイデン好きだと知ってるんだと尋ねる前に、珍太郎は顔を赤らめた。


つまり彼のTシャツには「キラーズ」とアイアンメイデンの2ndアルバムが刻印されていたからであった。


「好きだよ、あんたは?」


「もちろん、パワースレイブがクールだと思うぜ」


なんとなく友達になれそうなので、話してみると、


「俺はロックンロールを生業としようとしているギターヒーローだぜ」


ずっとこのような事しか言わないので、ついつい珍太郎も


「生業ってなによ、アホかい」


「アホじゃないさ、俺たちはロックンロールをプレイしてる」


奴は、タバコの灰の跡がある汚い名刺を渡してくると

「俺たちはNO RULEってバンドをやってるんだ。」

と言って、すぐに


「おまえメタラーだろ?一回来いやライブ」


「ところで名乗ったらどうだ」


珍太郎は酒の勢いもあり、モーターヘッドの男に迫った。


「わりー、俺は本名は名乗らないタチでな、シェリーって呼んでくれよ」


メガ霧島を持った奴は恥ずかしげに言うと、ちょっと気まずそうな顔を浮かべ、一気に飲み干した。


「じゃあ帰るぜ、また会おう。次のライブに来てくれよ、KILLERS」


そそくさに会計をするシェリーとかいう男、人が苦手そうだが、俺とは気が合うかもしれないな

珍太郎はそう思った。


最近来始めたやつなのかな、、珍太郎は一瞬そう思ったけれど、すぐに「かち割りワイン」に意識がいってしまい、

速攻でぼんじりと一緒におかわりするのであった。


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