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サボリーマン珍太郎   作者: ケリーバーン
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第5話 大船酒場

さくっと会社を上がった珍太郎は、自分の住環境を改めて考察した。


異動してからの珍太郎は、ちょうど契約期間も切れたというところで、

練馬駅付近のアパートに引っ越してきた。


なぜ珍太郎は練馬が良かったのだろう。

珍太郎の職場は新宿駅にある。

それだけならば、小田急沿線や京王線、もしくは埼京線沿いの駅でも問題はないだろう。

しかし珍太郎には練馬がベストスポットと考え、大江戸線での通勤を選んだのであった。


珍太郎曰く、大江戸線は全てに通ずるという。

練馬で西武池袋線の飲み屋街に接続、中井で西武新宿の飲み屋街に接続、

東中野で総武線の飲み屋街に接続、都庁前の乗り換えで、下町までも楽々。

さらに青山一丁目からは三軒茶屋、溝の口に接続する事ができる。

新橋だって、接続される。

まさに呆れたものの見方であるが、

聡明な読者の皆様お気づきの通り、酒をまず第一に考える珍太郎ならではの発想である。


そして練馬である事の決定打は、街自体が飲み屋街である事、

さらに野毛(桜木町)が直通で行ける事だ。


このようなどこでも行き放題の環境に住んでしまったがゆえに、

会社帰りの珍太郎は常に考察する。


それで花金なのだから、考え込んでしまうのも無理はない。


しかしながら、悲しいがな、飲兵衛は近所の行きなれた酒場を選んでしまうのが世の常であった。


珍太郎のお気に入りは江古田にある大船酒場である。

練馬の駅にある酒場はいなたすぎる老舗酒場が多く、構えてしまう。

さらに珍太郎のあまり好まない人種がいる若い店も多く、

実はそこまで気軽に行けるわけではないのだ。


さらに飲兵衛というのは酒場に人間関係ができると定住するものなのだ。


大船酒場に初めて行ったとき、珍太郎はおじさん達と友達になった。

おじさんと話すうちに、焼き師やお姉ちゃんと話すようになった。

飲兵衛通しなのでタガが外れると。ちょっと年増だけど、ヤラせてくれた女もいた。

人間関係が希薄な珍太郎にとって、そこは生まれて久々に感じるぬくもりの場所であった。


結局練馬に住んだのに、週に三回程はこちらにとぼとぼと歩いてきてしまうのであった。


今日も悪びれなく黒いセブンスターをふかして、大船酒場までの道を歩いていく事となった。

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