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第43話 珍太郎凱旋5
下町に来たならば、やきとんを食べるのが相場である。
下町やきとんの魅力はなんといっても新鮮なモツと長く続けている親父達の卓越した焼き技、合わさった秘伝のタレにあり。
珍太郎自身も近頃の酒場ブームで山手のターミナル駅でもやきとんが気軽になったと感じるが、やはり本物は下町、もしくは野方あたりにあるのだと確信する。
そして合わせるのは通称ボールと呼ばれる酒である。
これはハイボールの略なのだが、ウイスキーで割ったものではない。
焼酎を炭酸で割り、そこに甘めなシロップを入れたものだ。
これは下町で生まれた文化で、まだ戦後の貧しい頃、安くてまずい焼酎をなんとか楽しもうと生まれた下町の知恵なのである。
現代のうまい焼酎で作ればなんとも美味なもので新鮮なやきとんと合わせて飲んだとき、珍太郎は現代に生まれてよかったと思った。
やきとんの王道はかしら、しろ、たんだと思う。
ややこしい説明は次回に、ということでボールを美味そうにすする珍太郎。
「ちなみ、最近目の酒場では下町ハイボールという名前で売られてることがあるみたいやな」




