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サボリーマン珍太郎   作者: ケリーバーン
38/53

第37話 作曲法

大船酒場では、今日も変わらず珍太郎とシェリーが杯を囲み、

次につながるか否かわからない話を続けていた。

今日はまもなくWithout A Melodyが完成するという話で盛り上がっていた。


以前、Withoutと名付けられていたキャッチーな音楽の断片は、

珍太郎のMelodyというテーマと、あの暗闇を照らす光がモチーフのジャケットを得たことにより、

音楽としての仕上がりに進み始めていたのだ。


「Without A Melody、どうよ??」


シェリーが渡したイヤホンからは機械的なジョージウィンストンと言えるような

ピアノ曲が流れていた。


スーパーのBGMのようにチャチだが、メロディーは生き生きとしたなんとも泣かせるものだった。


「なんか、すごくきれいだし、歌えそうな、ぐっとくるものなんだけど、

これはバラードにでもするのかね?」


珍太郎は率直な疑問をシェリーにぶつける。


「確かにな、わからん人にはね、そう聴こえるかもしれない。

だが、これは俺が長年曲を作ってきた中で、最も合理的に良い曲を書く手段なんだな。」


「ほぅ」


「音楽っていうのは、基本的に分解しちまえば、メロディと和音とリズムでしかないんだわ。

どんな名曲でも結局そこにいきつく。

逆にメロディと和音がクソなら、どんなギターやシンセが入ってもクソだよ。

少なくとも、ポップスやロックはそうなんじゃないかなと思うわけよ。」


「しかもギターとかを早い段階で入れてしまうと、その段階で縛られてしまうし、

ちょっと変えようと思っても、エディットも面倒だしな。

それであればこのピアノ一つの段階で、徹底的にメロディとコード進行を練るのが良いんだわ。

メロディは歌えるか、サビは立つか、響きや流れは単調じゃないか?美しいものか。

それができたら後は占めた物よ、ギターやベースなんか自ずと弾くべきは決まってくるってわけだよ。」


「へぇ、すごいな。でも歌詞がなんかでてきそうなメロだけど、これはメロだけで考えたの?」


「違うよ、ジュエルの作った仮の詩を鼻歌で歌いながら、メロは起こしていった。

もちろん、足し引きはして、きれいだなって思えるまで妥協はしなかった。」


「なるほどね、実は最近酒に弱くなってきたから、これくらいにしよう。」


珍しく珍太郎は家に帰ろうと思った。

というのも、長く飲みすぎていたせいか、最近二日酔いどころか、

寝てる時から頭痛や胃痛が酷くて、飲む快楽より苦しみが勝るケースが多いのだ。


「次回はアレンジが固まったら、飲もうか?」


「楽しみにしておくぜ。」


今週も肝臓に気を付けながら、次もまた美味しい酒が飲めたらよいなと

思いながら帰路に就く二人であった。

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