第37話 作曲法
大船酒場では、今日も変わらず珍太郎とシェリーが杯を囲み、
次につながるか否かわからない話を続けていた。
今日はまもなくWithout A Melodyが完成するという話で盛り上がっていた。
以前、Withoutと名付けられていたキャッチーな音楽の断片は、
珍太郎のMelodyというテーマと、あの暗闇を照らす光がモチーフのジャケットを得たことにより、
音楽としての仕上がりに進み始めていたのだ。
「Without A Melody、どうよ??」
シェリーが渡したイヤホンからは機械的なジョージウィンストンと言えるような
ピアノ曲が流れていた。
スーパーのBGMのようにチャチだが、メロディーは生き生きとしたなんとも泣かせるものだった。
「なんか、すごくきれいだし、歌えそうな、ぐっとくるものなんだけど、
これはバラードにでもするのかね?」
珍太郎は率直な疑問をシェリーにぶつける。
「確かにな、わからん人にはね、そう聴こえるかもしれない。
だが、これは俺が長年曲を作ってきた中で、最も合理的に良い曲を書く手段なんだな。」
「ほぅ」
「音楽っていうのは、基本的に分解しちまえば、メロディと和音とリズムでしかないんだわ。
どんな名曲でも結局そこにいきつく。
逆にメロディと和音がクソなら、どんなギターやシンセが入ってもクソだよ。
少なくとも、ポップスやロックはそうなんじゃないかなと思うわけよ。」
「しかもギターとかを早い段階で入れてしまうと、その段階で縛られてしまうし、
ちょっと変えようと思っても、エディットも面倒だしな。
それであればこのピアノ一つの段階で、徹底的にメロディとコード進行を練るのが良いんだわ。
メロディは歌えるか、サビは立つか、響きや流れは単調じゃないか?美しいものか。
それができたら後は占めた物よ、ギターやベースなんか自ずと弾くべきは決まってくるってわけだよ。」
「へぇ、すごいな。でも歌詞がなんかでてきそうなメロだけど、これはメロだけで考えたの?」
「違うよ、ジュエルの作った仮の詩を鼻歌で歌いながら、メロは起こしていった。
もちろん、足し引きはして、きれいだなって思えるまで妥協はしなかった。」
「なるほどね、実は最近酒に弱くなってきたから、これくらいにしよう。」
珍しく珍太郎は家に帰ろうと思った。
というのも、長く飲みすぎていたせいか、最近二日酔いどころか、
寝てる時から頭痛や胃痛が酷くて、飲む快楽より苦しみが勝るケースが多いのだ。
「次回はアレンジが固まったら、飲もうか?」
「楽しみにしておくぜ。」
今週も肝臓に気を付けながら、次もまた美味しい酒が飲めたらよいなと
思いながら帰路に就く二人であった。




