第34話 そうだ転職しよう
後藤君は驚くほどの堂々としたサボりぶりを発揮しながら、
珍太郎に話しかけてきた。
「こんな仕事、長々やっててもなんかあるんすかね。」
「でもさ、そもそも後藤君、何もしてないじゃん。
このまえの報告書も俺が9割くらい書いたしさ。」
「俺ああいうの苦手だから、珍太郎さんがやったほうが効率的じゃねって思ったんす。」
「まあ、そういう考え方もあるわな。
でも仕事は振るとしても、根本的な事は握っておいた方が後々楽だよ、たぶん。」
たしかに後藤君の言う事は最もなところもある。
将来設計を考える中で、例えば社会に放り出されてしまったら、自分は何もできないなぁと思う事が多い。
大きい会社は分業制や既得権益が絡み合い、その会社だけの仕事というものが生まれてしまう。
珍太郎達の外注管理課もそういったもので、会社がなくなれば、ここでのスキル等溶けていってしまうのは明確だった。
外注管理課やそれと同じような部署の多くの人間が漠然とそのような思いを持っているのだろうけど、
大企業のぬるま湯に浸りきってしまった彼らには、腰を上げる勇気も度胸も、根こそぎ奪われてしまっていた。
アルバイトの人がへぇこらと働いているのをポケっと見ているだけで、ある程度の金が転がり込んでいくのだ。
終身雇用制が充実した時代であれば、これ以上の甘い汁はなかったに違いない。
ただ、人間プライドもある。
そして描きたい気持ちを抑える事はもうできなかった。
「そうだ、転職しよう。」
珍太郎は転職サイトをググり始めたのであった。




