第30話 クリスマスパーティー
24日、25日のどこかで由美子と会う手筈を整えておけば、
寂しい奴らとクリスマスパーティーを開催する事ができるのだ。
大人のクリスマスパーティー、言い換えれば飲兵衛たちのクリスマスパーティー
といえば、酒場に集まりクダを巻く、世間的にやる必要も全くないものなのだが、
これがまた楽しいのである。
大船酒場には珍太郎とシェリーが集まっていた。
なぜか大島さんと紅葉もいた。
「シェリー君はわかるんだけど、紅葉は?
普段大船来ないじゃない?」
珍太郎は疑問に思う、紅葉にとってはおそらくテリトリーではないからだ。
「まあ、紅葉はさ、どこも行く宛がないからさ、
こういうシケタ店で酒でも飲んでるのがいいんだってさ。」
返答をしつつも、大島さんが気になるシェリー。
「大島さんは、まあ言うまでもない感じ。
クリスマスという意識すら欠如してしまっているようだね。」
「せやな、クリスマスってなんや、うまいんか。
わいはな、ローストチキンで酒飲むのが好きなんや。
ほら、うまいわ」
ローストチキンならぬ、手羽先の焼き鳥とホッピーを流し込みながら、
大島さんは上機嫌である。
普段、珍太郎たちが好んで食べている手羽先の焼き鳥には
サンタクロースの置物が添えられ、酒飲みの親父たちにもささやかな恩赦を与えているようだった。
「名前さえ知らない店の片隅で 繰り返すだけでいいのさ。」
紅葉が珍太郎の肩をたたいた。
「いってぇな。何するんだよ。」
「いやっ、ロックだと思ってな!」
いつの間にか、かち割りワインを飲み干していた紅葉、
そしてホッピーを片付けるお三方。
「知らない店のハードリカーは、自殺酒だぜ。」
珍太郎は紅葉に耳打ちした。
寂しい街にも、親父にも、シケタロックンローラーにも
サボリーマンにもクリスマスは訪れるのだ。
今年も珍太郎はサボリーマンとして、過ごし切った。
そして残すはお正月までサボりきって、また来年も目標などを立てるのだけど、
酒とたばこに忙殺されてしまうかもしれない。
けれど、今年は出会いもあった、そうしたことがきっと未来につながっていくのだ。
吉良吉影は「激しい「喜び」はいらない…そのかわり深い「絶望」もない……」
と言ったが、芋虫のようでも、人間は前進していきたい。
チャンスの糸に吊り上げられるその日まで、芋虫のように前へ前へ
「そう!とりあえずメリークリスマス!」
ホッピーの渋みが胃をカッと熱くさせるのであった。




