第23話 想いをのせて
一方、珍太郎の着想はシェリーを通して、NO RULEのメンバーに瞬く間に伝わっていった。
ジュエルはメロディーというテーマに基づき、歌詞を書き換え、そしてシェリーは楽曲を作り上げていった。
「8ビートはただ単に刻みを入れるだけでは淡白だ。
メロディーを生かしながら、休むところを与えてあげる。
そのためのオブリガード。
できるならば、ギターだけでも歌えるラインがいい。
ドラムはバシバシときめていこう。
息もつかせぬうちにこのメロディーを伝えきるんだ。」
シェリーは必死であった。
この一曲にNO RULEのプライドがかかっている。
そう思って作業を進めていたのだ。
大島さんや珍太郎が彼らから妙な気迫やロック感を感じたのは、無意識的に、こういった負けられないプライドや見栄を察したところにある。
彼らにとって、ロックとは語りきれない傷に化粧をして、俺たちはカッコいいと見栄をはる。
そういったものであったからだ。
それは何かしようともできなかった珍太郎にとってなど、まさに救済でありえたし、ジュエルの言う自浄の作用とまさに同意の事であった。
だからこそシェリーにとって、ジュエルにとって、この曲は次への課題であった。
自浄から救済へ
オナニーからSEXへ
個から集団へ
想いを伝える橋なのだ。
珍太郎はそれをメロディーの橋で表現していく。
珍太郎が書いた光の筋。
それは少しずつ橋へと変わっていった。
大船酒場に行く前の喫茶店、ノートパソコンにスケッチを描いていく。
まだ知らないけれど、あのNO RULEが自信を持って作っている、あの曲。
そして俺が描くこの橋が、どんな未来へつながるのだろうか。
とりあえず地続きなのは大船酒場。
だけど頑張って飲む酒は美味いもんだ。




