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サボリーマン珍太郎   作者: ケリーバーン
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第1話 ホッピーナイト

銭湯のようにもぅもぅした煙の中で、二人の男が燻されていた。

駅から少し歩いた穴場のやきとん屋での事であった。


「ほな、てっちゃんは最高やで」

てっちゃんとは豚のホルモンを甘辛いタレとたまねぎで炒めた大阪の郷土料理で、

大島さんの大好物である。


「やっぱりやきとんにはホッピーですかね。」

「ここの中身はドンっと入ってていいねん。頭パーッといってしまいそうですわ」


平日、いわゆる会社のある日は珍太郎にとって、飲み屋だけが心のオアシスであるため、

飲み屋には大体毎日行っていて、一人の時もあれば、こうやって大島さんや友達と繰り出すときもある。


大島さんは珍太郎の先輩で、彼ですら引くほどのアルコール中毒者である。

もともと音楽のクリエイターだったらしいのだが、酒をはじめとした不摂生により、異動してきたみたいだ。

たまに珍太郎も驚くほどの、アルコール臭を放ち出社してくる事もある強者で、

会社を無断欠勤する事もあり、ある意味で社内の有名人となっている。

しかしながら、仙人のような性格と、どんな暴言も馬耳東風に聞き流してくれる器の広さが

不思議と人を引き付けるところもある人として知られてる。


珍太郎は何でも聞いてくれて、酩酊するまで酒に付き合ってくれ、

そして少し多く会計を払ってくれる大島さんが大好きだった。


大島さんにとっても飲んだ事を会社に言わない珍太郎は格好の飲み仲間という事もあり、

必然的に一緒に飲みに行く事が増えたというわけだ。


さらに、珍太郎の豊富な飲みの知識が、大島さんに新たな飲み場を多く提供した事も

飲み仲間の信頼関係を深める事に繋がっていた。


程よく酒がまわってくると、人は本質的な話をするものだ。


「人は何のために、生まれてくるのでしょうか?」


珍太郎が焼酎にホッピーを継ぎながら語りかける。


「ノムさんは世の為、人の為や言うてたで」


沈黙が走れば、強い酒でも飲まずにはいられないのが世の常である。


「でも俺ら、世の為、人の為に、なんか役に立ってますかね。

こんなクソ仕事してて。」


「せやな、、、こうやって世の中に、金回してんねん。酒飲んでな!」


大島さんがカラカラ笑うと、珍太郎もなんだが気が軽くなって、同じように笑うのであった。


「じゃ、飲むしかないですね。」


今日も何も変わる事なく、それでも幸せな酒場の夜は続いていくのである。

次の日の二日酔いも知らずに。。

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