第13話 Schweine.R
アメリカナイズされたライブハウスとは一線を画す音楽が流れていた。
パイプオルガンの荘厳な音楽がしばらく続くと、舞台の男は語り始めた。
「この河を流れる灯篭はまるでフローライトのようだ
Stop The Love,Memory,Hate and Truth
君の魂もこの灯篭に乗って、流れていくのかな。
頬を流れる川が止まらないよ。
キミヲコロシテシマッタノハオレナノニ」
いかにもフジロックに出てそうなバンドが好きそうな女の子が
目をきょとんとさせて彼をみていた。
珍太郎はこの子はきっと、MALICE MIZERのような音楽や、
プログレッシブロック、そしてFFやロマンシング・サガ等のゲームを注意して聴いた事が無いんだと思った。
そう、この舞台の男はおそらく今時の言葉でいうと中二病と言われる感性の持ち主で、
ヴィジュアル系に病的に影響を受けた上、たまたま行動力も伴い、こうした活動をしているのだと思われる。
だが、おそらく自分の世界というものが絶対的な価値となっている類の人間で、人の話はあまり聞かないのだろう。
「そういう音楽だ、こういうのは」
珍太郎は断定したが、大島さんのように、この手の音楽は嫌いではなかった。
珍太郎もヴィジュアル系やネオクラシカルメタルはアホのように聴いてきた人間で、
こういった道化ができる舞台の男を、とても羨ましく思い、
さらに言えば、行動力と作曲能力に敬意すら払っていた。
そんな事を考えてるうちに、ステージは終わり、舞台の男が下りてきた。
意外に人懐っこさそうな笑顔を見せ、珍太郎達に話しかけてきた。
「わざわざ見に来てくれてありがとう、どうでした?」
「すごくよかったです、マリスとかの影響をめちゃ感じましたね」
「なんかこう物語みたいなものを背後に感じる音楽やった」
大島さんの言葉に反応するように、彼は凄まじい勢いで喋り始めた
「これは、哀しい物語なんです!
ウリリッヒ王国の王子は、街の少女と恋に落ちて、でも実はそれは妖精で!
敵国のシェンカー共和国の策略により、殺さなければならなかったんだ!
」
あまりにも長く話すものなので、嫌気がさした珍太郎はなんとか返答した。
「なるほど、荘厳な音楽になる理由がわかります、ところでお名前は」
「Schweine.R
(スチュウェイドットローラ)」
「はぁぁ。。」
カタカナ読みで答えるので、日本人が偽名を名乗ってるだけと思われるが、その厨二ぶりに珍太郎達も思わずため息をついてしまうのであった。
そうこうしてるうちにエレキギターをバンッと鳴らす音などが聴こえてくる。
ロックらしいよく歪んだ音だ。
アーシーに気取った音楽はできない音色。
あのいかれた連中は何をしてくれる?
珍太郎達はしばしこのおかしな厨二男と会話しながら、ステージをゆっくり待つのであった。




