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ロマンの休日

作者: 伊達邦彦

ロマンの休日



会場である帝国ホテルには、映画関係者や報道やマスコミ関係者で賑わい、綾子は、早々にマネージャーに後は頼んで、タクシーに乗ったのだった。3年前、映画プロデューサーからオファーを受け、映画に出演。映画の大ヒットを受け、新人女優賞を受賞。あれよあれよという間に、綾子は、売れっ子女優となったのである。まるで、走り続けているように……。しがないモデルとして貧窮していた頃に比べたら、収入は格段にアップして、CM出演もして、マンションも購入した。裕福になったと言えるだろう。だが……。


久しぶりの、モデルの仕事だった。

海外から帰ってきたカメラマンと写真集のために、伊豆で撮影する予定。山道を車が上っていく。伊豆半島の山が迫る豊かな自然に見とれていると、ホテルに着いたことを、山室君という運転していた男の子が告げた。額に汗が浮いてる。

山あいにある温泉街にあるホテル。

山室君は、四角い顔を緊張させていたが、ニコッと笑顔を見せると、東京に帰って行った。

3日間、撮影は行われるのである。思わずふっと綾子は息を吐く。がんじがらめになった鎖から開放されたようだった。



部屋でくつろいでいると、携帯電話がなった。私用はスマホだったが、仕事用に会社から渡されているガラケーで、ソフトな男性の声が聴こえた。

下のロビーにいます。


男性は、半白の頭髪の初老の男性だった。

渡された名刺には、

『山岳カメラマン

渡 悟郎 』

と、あった。

筋肉質で肘に皮の肘当てのあるジャケットを来ていもわかるほどだ。

赤銅色に焼けた顔はいかついが、目だけは少年のようだ。明日から、撮影するので、好きな服装できてください。


世界的に有名なカメラマンらしい。

あっさりとした物言いソフトな気取りなさに、綾子は好感を抱いた。それは、恋の予感だった。



半日は撮影。食事をしたり、街で二人で撮影に必要な洋服を探したり、男女の仲になるのに、時間を要することはなかった。

二日目の夜、ホテルのレストランで食事をしている時だった。

3日間経ったら、フランスに帰らなければならない。悲痛な顔で、彼は言った。

以前の彼女だったら、半狂乱になっていたかも知れない。

だが、彼の真摯な顔に嘘はないようであった。

有名であることに伴う痛みを二人は共有した。

撮影が終わると、彼は迎えにきた山室君に全てを託し、成田空港に向かったらしい。

朝靄がうっすら山林にかかっている。やがて、彼女は女優としてさらに活躍することになる。3日間だが、愛した男性がいたという事実は消えないのだから。









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