京太と実美子
「おーい、ミッチー!」
「あ、サトちゃん、おはよう」
月曜日、大学で智光を見つけた京太は彼に駆け寄る。
「ミッチー、先週はありがとうな!奥さんにもよろしく伝えてくれ」
智光は京太の表情を見ると嬉しそうに微笑んだ。
「そっか、上手くいったんだね。よかった」
「今度なんかお礼させてくれよ」
「ううん、そんなのいいよ。やっぱり、サトちゃんには実美子ちゃんがいないとダメなんだねって…あれ?サトちゃん、その子は?」
智光は、京太がさっきからずっと手を繋いでいる女の子を実美子だと思って見ると、目を丸くした。
「ふっ、ミッチーでもわからないか?」
女の子をジッと見る智光に、京太はクスッと笑って言った。
女の子は落ち着かない様子でビクビクしている。
「え?!実美子ちゃん?」
「…うん」
実美子は遠慮がちに頷いて、そのまま恥ずかしそうにうつ向く。
「わぁ!実美子ちゃん、すごく可愛いし綺麗だよ!誰だかわからなかったよ」
「…ありがとう。京太君が、こういう格好の方がいいって言ったから…」
そう言って、実美子は耳まで真っ赤になって京太にしがみついて顔を隠してしまう。
今の実美子はファッションにメイクもヘアスタイルまで全て変わり、今時の女子大生らしいオシャレな格好をしていた。
「はぁ…。まぁ可愛くなったのは嬉しいんだけど。予想以上に可愛くなりすぎて、ご覧のとおりさ」
京太は実美子と繋ぐ手を上げて見せる。
「……?」
智光はわからず、首を傾げた。
「まぁ、つまりコイツをちょっとでも一人にすると、すぐ男に絡まれるという事態になっててな…。どうやら、みんなあの変人実美子だとわからないらしい」
「ふふっ、またまた大変だね、サトちゃん」
「まだ午前中なのに、大学に来てから何回男に捕まってたか…」
「実美子ちゃんはサトちゃん一筋なんだから、もうちょっと信じてあげれば?」
「コイツに何かあったらどうする!?心配過ぎて手が離せないんだ…」
「すごいね、実美子ちゃん。サトちゃんメロメロで大変だね」
「大丈夫」
「え?」
「京太君、心配しないで。もしピンチになったら、このGペンで相手刺すから」
「そうか…わかった」
「実美子ちゃん!それは危険だよ!」
「泉君、しぃー。大丈夫、本当にはやらないから。こう言っておけば、安心するからいいの」
「さすが、扱いになれてるね」
実美子は京太と手は繋いだまま、智光の耳元にこっそり話す。
「それより、またお家に遊びに行きたい。奥さんにも会いたい。お礼言ってないし」
「大歓迎だよ。ゼヒ遊びに来て」
智光はにっこり微笑んだ。
「おい!二人でなにコソコソしてるんだ?」
「京太君、泉君にまでやきもちやかないの」
「だって…」
「あんまりしつこいと、もう勉強教えてあげないから!」
「わ!それだけはやめてくれ!実美子様ー!」
「ん?実美子ちゃんて、サトちゃんに勉強教えてるの?」
「うん、昔からずっとそうだよ?」
「あぁ、実美子は本来美大だって行ける脳みそしてるんだよ…。だけど、俺と一緒がいいって聞かなかったんだ」
「ごめんね、スゴく以外だよ。やっぱり二人はセットだね」
京太と実美子は自然と見つめ合い笑った。
京太と実美子 はここで終わりです。
ここまで読んで下さり、ありがとうございました。