ある少女の話
「___精霊使いの少女は仲間たちと楽しく過ごしたのでした。…おしまい」
母親がその童謡を読み終え愛娘へ視線を移すと、少女はキラキラと瞳を輝かせていた。
「あらあら。シェリーはまだ寝れないのね」
クスクスと女性は笑い、次の絵本へと手を伸ばす。
絵本というものが出来てからまだあまり経っていないにも関わらず、この部屋には数十冊のそれが所狭しと並んでいる。
「お母さま、シェリーもせいれいさんたちが見えるようになる?お話できる?」
女性が次の絵本を手に取る前に、少女はその純な瞳に期待をのせるながらそう口にした。
女性は、そうねぇ。と言いながら、少し困ったように少女を見つめた。
「精霊使いは昔にいなくなってしまったけれど、シェリーがお勉強を頑張っていればきっと、話すことができるようになるわ」
「ほんとっ!?」
「精霊はとても繊細だから…、シェリーもあの女の子のように心の綺麗な子でいないとね」
「うーん?心がきれいってどうすればいいの…?」
「自分のことばかり考えず、周りの人にも気を配れる…そうね、他の人と一緒に笑えて、他の人の為に泣ける、ということかしら」
「う、うん、わかった!シェリー、がんばるね!」
「ふふ。もし精霊が見えるようになったら、私に教えてね」
「うん!!わたしがせいれいさんにたのんで、お母さまもいっしょに話すの!」
「ありがとう、シェリー。…このまま、貴方が真っ直ぐに成長することを願うわ」
母と娘が眠るその姿をじぃっと銀色の月は見ていた。
そんな月の周りでは、赤や青、緑に輝く星たちが爛々としていた。