北伐
北伐(『神史』)
神帝歴36年から神帝歴45年にかけて行われた敵対部族の鎮圧作戦。
神帝オーリの発議によって実行され、9度行われた。
発端はロッソア建国によるもので、エジン、ルーポラ、アーカナー族が従属せず、ロッソア魔法国への反乱した。
小規模かつ断続的な反乱で国力の低下が画策されており、反乱派閥に対する周辺の反応は冷ややかなものであった。
しかし、神帝オーリは「いかなる場合でも自国民を軍で制圧することは考えない。何年かかっても我らの手で終わらせる」と宣言し、軍の使用を禁じた。
結果
反抗はおよそ10年続いた。全9度の北伐のうち、8度までが神帝管理下において行われ、8回目にはほぼ反乱は静定していた。
しかし、神帝オーリは9度目の北伐直前に原因不明の体調不良で、全権を自らの庇護者であるロッソア魔術国第1王子エーヴィルに預ける。
目立った問題もなかったため、エーヴィルはエジン、ルーポラ族族長から従臣の意志を伝えられ、これを了承した。
影響
一時、ロッソア魔術国第1王子エーヴィルはロッソア国内で神帝オーリや初代魔王イルギィスを凌ぐ名声を得た。
しかし、増長したエーヴィルはその後、ロッソア王子の神殺し事件を起こす(47年)。
もともと原因不明の体調不良に悩まされていた神帝オーリは深い傷を負い、その姿を3年間隠した。
そのあいだ、エーヴィルの実母である女帝シーマが3年間代理で筆頭君主を務めたが、3年後に神帝オーリが復活するとあっさりと筆頭君主を神帝オーリに返還した。
神帝オーリは復活後もエーヴィルを咎めることはなかったものの、エーヴィルはのちに再度裏切り、10年に渡る神失期という未曾有の危機を生み出す遠因となった。
疑問点
1:9度目の北伐の意義
仮にエーヴィルが優れた王子であったとしても、わずか9歳で神帝オーリを超える功績をあげたとは考えにくい。
さらに言えば、エーヴィルはその後目立った戦績をあげておらず、神帝オーリが庇護者であるエーヴィルに功績を与えたと見る説が根強い。
2:神帝オーリの毒殺計画
神帝オーリは生誕以来、圧倒的な戦闘力で君臨しており、80を越えても衰えを見せない。長期に渡る体調不良はこの9度目の北伐からシーマ代理筆頭期までの3年超を除けば神失期以外にない。
どちらもエーヴィルが原因で引き起こされたと考えられる。
そのためこの体調不良自体がエーヴィルによって画策されたものであったとする疑いもある。
3:エーヴィルの処罰の不透明さ
それまで神帝オーリは自らに反旗を翻した者へは強い姿勢で望んでいるが、庇護者であるエーヴィルには甘い裁定を下した。
しかしながら、エーヴィルが3王子の中で唯一筆頭君主になれなかったことを考えると、完全に許したわけではない。
ロッソア国内でのエーヴィルの根強い人気を懸念したのではないかと推察される。
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北伐(『神義定款』)
神帝歴36年から神帝歴45年にかけて行われた反抗部族との抗争。9年間に渡る作戦行動であり、記録では9度行われたとされる。
ロッソア魔法国の前身であるロッソア連合設立時に、エジン族、ルーポラ族などの部族が従属派と独立派に分裂したために起こった反抗に対して、神帝オーリらがその沈静化を図った。
反抗とは言え、ロッソア魔法国とエジン、ルーポラなどの北部同盟による戦闘は極めて小規模でしか行われておらず、そのほとんどは調査目的での派兵であった。
また最終的解決に戦闘行為が一切発生しておらず、事実上はエジン、ルーポラ族による神帝オーリらパーティとの地位協定交渉であったとも言える。
このことから今日においては反抗・反乱というよりも部族のロッソア連合の内部抗争とその折衝という側面が強いと言われる。
背景
神帝歴36年に神帝オーリにとって初めての国であるロッソア連合が建国された。
当時、神帝オーリは「圧倒的に強いパーティのリーダー」としか見られておらず、こんにちのように世界の支配者としての役割はなかった。
もともとロッソア帝国に対して反抗的態度に出ていたルーポラ族や、本来従属をよしとしないエジン族はこのロッソア連合建国に際して、反抗的姿勢をとった。
しかしながら、神帝オーリに武力でかなわないことはすでに広く知られていたため、再独立は部族内でも結論が出せなかった。
先んじて再独立したグレム、チェインキーなどの国家に対して、トゥーリから殲滅作戦の概要が早急に発表されたため、エジン、ルーポラが完全な再独立に踏みきれなかったとも言われる。
またフェルマンやヤームポートと言ったロッソア連合に好意的ではない国家もグレム、チェインキーの援助を行わなかった。唯一、シーズだけはチェインキーに対して軍事援助を行ったが、ほぼ効果はなかった。
経過
神帝歴36年
第1次
神帝オーリが単独で北伐。戦闘記録はない。
神帝歴37年
第2次
神帝オーリ、ヴォーディが2名で向かう。第1次同様に戦闘記録はない。
第3次
エジン族と、ルーポラ族の独立派との小規模戦闘。ルーポラ族3名を捕虜とするが、即時返還。
神帝歴39年
第4次
吹雪の中行われ、遭難したアーカナー族の女児を救出したと記録。
神帝歴40年
第5次
イルギィス単独で北伐。戦闘記録はなし。
神帝歴41年
第6次
神帝オーリ単独。戦闘記録なし。
神帝歴42年
第7次
神帝オーリ単独。戦闘記録なし。
神帝歴44年
第8次
神帝オーリ最後の北伐。エジン族、ルーポラ族の族長と会談。
神帝歴45年
第9次
ロッソア魔法国第1王子エーヴィルとヴォーディによる北伐。
エジン族、ルーポラ族が従順の意をエーヴィルに示し、北部同盟は解散した。
結果
神帝オーリの数度に渡る遠征にも関わらず、ルーポラ族、エジン族はどちらも反抗をやめなかった。
8年に及ぶ沈静化に効果が見られない神帝オーリは、トゥーリの反対を押し切り、強硬策に出ようとした。
このための最後通牒が第8次作戦であったと言われる。
8年のあいだにメカリア以外の国家を制圧していたロッソア魔法国に対して、ルーポラ族、エジン族が選択可能な作戦は、事実上なかったとされる。
第8次作戦の翌年、ロッソア魔法国第1王子エーヴィルと絶対無敗の剣豪ヴォーディがふたりでエジン族、ルーポラ族、アーカナー族の族長と会談。その場で3部族はエーヴィルに対し、忠誠を誓った。
神帝オーリではなく、その庇護者エーヴィルに忠誠を誓うという形は当初、トゥーリからの提案と見られていたが、近年ではアーカナー族のソタルによる仲介であったのではないか、ともされる。
ソタルは政治的に微妙な立場でありながら、エーヴィルの養育係であり(後に側室となり、エーヴィルとの間に2女をもうけた)、ロッソア会談によって政争に敗れたヴォーディとも懇意であった。
影響
わずか9歳であったロッソア魔法国の王子エーヴィルが北伐を終結させたことはロッソアにとってはふたつの大きな意味があった。
ひとつは神帝オーリの支持増加である。
神帝オーリはエーヴィルに対して加護を与えており、父であるロッソア魔王イルギィスと並びエーヴィルの後見人筆頭であった。
そのためエーヴィルは実の父のように神帝オーリを慕っていた(神帝オーリはメカリア神聖国王子ワイゼンや、ヤポニア技術国王子ルーファーにも同様に加護を与えている)。
エーヴィルに支持が集まることによって、神帝オーリによる間接的な統治を認める民衆が増加したと言われる(北伐の完遂によりロッソア魔法国は完全なる統一を果たしたと言え、国内の反抗する勢力が消滅したために、安定的な政局運営が可能になったことも支持の一因であるとされている)。
もうひとつは政治的な変動である。
初代ロッソア魔王イルギィスは、自身の王子であるエーヴィルの功績に歓喜し、「我が国の未来は明るい。なぜなら私を超える王がいるからだ」とまで言い切った。
後にエーヴィルが2人の弟王子に先んじて筆頭君主に就任したのは、この北伐による功績が大きかったと考えられる。
また当時なんの地位にも就いていなかった絶対無敗の剣豪ヴォーディは親エーヴィル派であったと言われており(のちにワイゼンの保護を受けるようになるまでの期間)、このエーヴィルの功績によってヴォーディの政治的復権も叶ったと言える。
ヴォーディはロッソーナ会談(神帝歴35年)において政治的敗北を喫しており、その後、ロッソアの乱(神帝歴44年)まではメカリア地方を中心に転戦していたが、ロッソアの乱を機にロッソアでエーヴィルの剣術指南及び北伐の監督的立場になっていた。
肩書は与えられなかったものの、政治的中心地にいることができたために、復権への足がかりになったと言えよう。
歴史的意義
この北伐の完遂をもってロッソア魔法国は国内を完全に平定したと言える。北伐完遂前年のロッソアの乱が終結すると、残る課題は北伐のみであった。
先に完全な支配下にあったメカリア神聖国、ヤポニア技術国と合わせて、こんにちまで続く3国統治が完成した。
言い換えれば、世界の争いが終息した年とも言える。
以後、大きな戦いはこんにちに至るまで起きていない。
そのため、戦いにおいて功績をあげるという立身出世は不可能になった。




