ロッソア王子の神殺し事件
神帝歴47年暮の月に行われた史上最悪のクーデター。
かねてより神帝オーリが庇護を与えていたロッソア魔術国第1王子エーヴィルが神帝オーリの暗殺を企てた。
エーヴィルは神帝の信頼を逆手に取り、神帝オーリの弱点が記されているとされる機密文書(『友人提案ノ書』)を盗み見て、計画を立てたと考えられる。
経過
神帝歴47年暮の月22日、日没後にロッソア魔術国第1王子エーヴィルは神帝オーリの私室を訪ねた。名目は当時の世界首都オルドラへ出立する挨拶とされている。
神帝オーリは快くエーヴィルを迎え入れ、二人は夕食をともにした。
この夕食の際に、エーヴィルは侍女を巻き込んで神帝オーリの食事に魔法道具を混入したと見られる。
エーヴィルは神帝オーリが苦しみ始めると、魔法と物理攻撃によって神帝オーリを追い詰めた。
エーヴィルは当時11歳でありながら、その力は神帝オーリに匹敵するものであったと言われ、神帝オーリはかなり危機的状況であった。
神帝オーリはかろうじてエーヴィルの追撃をかわし、極秘ルートでロッソア魔術国から脱出した。
その傷が完全に癒えるまでじつに3年を要した。
暗殺こそならなかったものの、戦闘に限って言えばエーヴィル側の完全勝利に近かった。
動機
エーヴィルは動機について語っていないが、自身に引き続いて、メカリア王子ワイゼンやヤポニア王子ルーファーにも庇護を与えたことに対する嫉妬ではないかと推察される。
またエーヴィルの実母である女帝シーマへの神帝オーリの待遇が低かったことも遠因ではないかとされている。
処罰
侍女
エーヴィルに指示され、食事に魔法道具を混入したことは間違いないと考えられる。
事件後に昏倒しているところを発見されたため、おそらく自害を謀ったと見られるが、「なにも覚えていない」と供述。
エーヴィルが魔法道具を侍女にも飲ませたと供述すると、女帝シーマの判断により無罪となる。
ロッソア魔術国第1王子エーヴィル
神帝オーリの暗殺という史上空前のクーデター計画であったが、女帝シーマの判断により地位の正式な剥奪は行われず、一時的にオルドラで謹慎することとなった。
3年後、神帝オーリが復活するとその罪を赦され、ロッソア魔術国第1王子の座に正式に復帰。公務への参加も許可された。
疑問点
エーヴィルも神帝オーリも詳しくは語らなかったために、このクーデターには様々な疑問が残っている。
1:神帝オーリの弱点
『友人提案ノ書』に記されていた神帝オーリの弱点は、このクーデター以外では使われた記録がない。
そのために実際には弱点は存在しなかったのではないかという説は根強い。
2:エーヴィルの実力
のちにロッソア魔術国魔王となるエーヴィルは魔力と剣技のどちらにも精通しており、3王子の中では筆頭の強さを持つとされている。
これは9歳のときに達成した第9次北伐(神帝歴45年)の功績が大きいためで、実際、エーヴィルはその生涯においてはこの北伐以外に大きな戦果をあげていない。
このことからエーヴィルの戦闘能力が神帝オーリに匹敵したとする説には異論がしばしば起こる。
神帝オーリの弱点をついてなお、エーヴィルには神帝オーリを倒す力がなかったために、暗殺は未遂で終わったのではないか、とも考えられる。
3:神帝オーリの被害
神帝オーリがエーヴィルの襲撃を受け、負傷を負ったことは事実である。何人かの証言と、神帝オーリ自身も傷を受けたことは認めている。
しかし、怪我の大きさには諸説あり、かすり傷程度から重体であったとする説、「神帝崩御」(神帝歴62年)の遠因となったという説もある。
4:3年間の神帝不在
神帝オーリがこのクーデター後、3年間その存在を隠したのも事実である。
怪我が3年癒えなかったと考えるのが一般的だが、他のなんらかの要因で神帝オーリの力が弱まっておりその問題解決のために奔走していたという説や、エーヴィルの裏切りにひどく落胆したという説もある。
影響
神帝オーリへの襲撃自体は成功と言える。女帝シーマ以外で神帝オーリを追い詰めたのはエーヴィルのみである。
しかし、クーデターとしては失敗であった。
女帝シーマがエーヴィルを謹慎させたこともあり、また神帝オーリの遺体が見つからなかったことから、神帝オーリの支持は衰えなかった。
この事件によって神帝オーリは3年間消息不明となり、女帝シーマが世界最上位役職(筆頭君主)へ仮に就任したが再び神帝オーリが公の場に姿を見せると女帝シーマは筆頭君主の座を神帝オーリへと返還した。
エーヴィルはこの件の影響からか、3王子の中で唯一筆頭君主の座についていない。
(『神史』:ロッソア王子の神殺し事件)




