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終末をコンビニで

作者: 野々
掲載日:2016/02/08

 空が赤に染まっている。午後六時ちょっと過ぎ。

線路の途中で止まっている電車の横を自転車で駆けていく。

 普段は渋滞しているコンクリートの道路の真ん中を走る。歩道も道路も人がいない……自分以外の人間が世界に居ないのかと錯覚する程の静寂の中、油がきれかけのチェーンの悲鳴を聞きながら俺は駆けていた。

「まったく……何でこんなことをしてるんだ……!」

 俺は悪態を大きく吐いた。普段なら人目を気にするが、今の状況でそんな事は一切考えなかった。






 後、八日で地球が崩壊する

 コンビニのバイト帰り。アパートで普段通りカップ麺にお湯を入れていた時、テレビで流れた緊急放送がそう伝えた。

 ……何やら偉そうな肩書きの外国人が会見をしている映像が流れ、地球大の隕石だの、計算によるとだの難しい話をしていた。その話の全てを全人類が理解できたかは分からない。だが、少なくとも全日本人は理解しただろう。

 後、八日で地球が崩壊することが

 その次の日、俺はいつも通り講義の為に大学へ行った。道行く人は皆、緊急放送の話で持ちきりになったが、半信半疑な感じであった。電車も動き、普段は無駄話をしない大学の教授もその話を出したが、概ねいつも通りであった。

 その次の日、始まりは一人のフリーターがナイフを使って無差別殺人を行ったというニュースから。俺が終わりを感じ始めたのはこの時だった。

 地球崩壊まで後五日。大学に行こうとしたが、友人からの電話を聞いて、足が止まった。

 誰かが仕掛けた爆弾によって電車が動かなくなったらしい。ニュースやネットの情報を見ると、世界が終るのだからと商品を爆買いする人が大量に居て、街中がお祭り状態。俺はまだ、軽い感覚で大学に行くのを諦め、家で過ごした。

 次の日、テレビで季節外れの帰省ラッシュが起きていることを知った。自分の住む街を離れ、何処か遠くへ逃げようとする者。実家に帰って最後の時を過ごそうとする者。様々な人が居るらしい。

更に街の無人になった建物に侵入し強盗する者が居ることをニュースで知った。ニュースキャスターの表情が何処か青ざめている気がした。

 昼に母親から電話が来た。自分の事が心配だと、普段よりも早口で喋ってきた。俺はいつも通りの口調で自分は無事な事と、交通手段がないから両親の元へ帰れないことを伝えた。母親の口から嗚咽が漏れた。

 後三日になった所で友人から電話が来た。彼は私に遊びの話を持ち掛けてきた。どうやら彼は無人のカラオケ店に入って一日中歌ったり、宝石店から宝石を盗んできたりと色々楽しんでいるようだ。

その時、俺は部屋の食料が無くなっている事に気づき、その事を軽く友人に伝えた。すると彼はまるで常識かの様にこう返した。

「それ位、適当な所から取って来れば良いだろ。もうお店なんて誰も居ないよ」

 そして、俺は友人と強盗をした。場所は近くの駅のコンビニ。コンビニの自動ドアは閉められていたが、車が突っ込んだ跡があり、酷い有様だった。俺は申し訳なく思いながらインスタント食品をコンビニの袋に詰めた。その途中、ふと友人の方を見た。友人は適当な商品を笑いながら漁っていた。彼はあそこまで不気味に笑う人だっただろうか?

 コンビニを出た後、遊びに誘われ、そのまま付いていった。他の友人も集まり、無人の店で暴れたり、人の居ないゲームセンターに朝まで入り浸った。皆、笑っていた。俺も笑っていたが、孤独感が湧いた。

 後二日、家に帰ってきたのは夜九時だった。友人はもっと遊ぼうと誘ってきたが、断った。帰った途端に疲れが降りかかってきた。スポーツをした時とは違う、嫌な汗が出た。変わってしまった世界。終わる世界。その最後に好き放題やろうとする人々の狂気。それを感じた俺は耐えられなかった。

 気分を変えようとテレビを付けた。画面は黒一色。何も映らなかった。

 そして人類最後の日。だというのに俺は午後六時に目が覚めた。友人たちと遊びまくった反動だった。コンビニから取ってきたインスタント食品を食べ、何もせずにいると唐突に電話が鳴った。相手はバイト先のコンビニの店長からだった。焦った口調で喋りかけてくる。

「た、大変だよ! 原山君! 島田さんが! 島田さんがお店に居るって!」

「はぁ」

 店長の言葉と裏腹に俺の反応は薄くなってしまった。原山は俺の事だ。島田さん……それも分かる。島田雪乃、大学生で同じコンビニでバイトをしている。明るく、長い髪と笑顔が特徴的な子だった。彼女が店に居る事の何がおかしいのだろうか。

 とそこまで考え、俺が一昨日やったことを思い出し、顔を青くする。そうしている内にも店長の話は続く。

「さっき島田さんから『誰も居ないんですけど、一人で仕事してて良いですかね?』ってお店から電話が有ったんだよ! ああ、もう! コンビニなんて強盗が来て当たり前の場所だよ! そこに島田さんみたいな子が居たら大変だよ!」

「あ、はい! 分かりました! とりあえず俺が今から行ってみます!」

 店長の言葉を聞き、状況の危険性を理解した俺は自転車の鍵だけ持って部屋から飛び出す。

何でわざわざ最後に日に自分の職場に行くんだ? どうせ何もかも終わるんだ。他人なんて放っておけ。そんな心の声が響く。それでも俺は自転車に飛び乗った。





 その後、心の中で自問自答を繰り返しながら俺はバイト先まで着た。バイト先は強盗したコンビニとは違い、車などは突っ込んでいなかった。俺は自転車置き場に先程まで猛スピードで走っていた自転車をねぎらう事なく乱雑に置き、外からコンビニを観察する。外は問題ないが、中は結構酷い事になっていた。ATMは倒れ、商品の幾つかは中身が飛び出して床を汚している。地震の後……という程ではないが確実に何人かに荒らされていた。

 そしてそんな床を熱心に拭いている女性が一人……島田さんだ。

「いらっしゃいま……あ、原山さん! おはようございます!」

「おはようございます……って何やってだよ」

 ここのコンビニは自動ドアが作動しており、中は蛍光灯で明るかった。入ると島田さんが一瞬驚いた顔をしながら笑顔で出迎えてくる。

「え、床掃除です。結構汚れが酷くて……ほら、ここの牛乳が零れちゃって、あとちょっとしたら酷い匂いが出るところでしたよ」

「いや、そうじゃなくて……」

 島田さんの雰囲気は余りにも違った……いや、島田さん自身は何時も通りだ。違うのは俺を含む周りとの雰囲気。彼女はまるで世界の終わりなど知らないかのように何時も通りの表情を浮かべていた。

「島田さん! どうして働いてるんですか! もう今日でせか」

「はい、そうですね。でも今日一応シフト入ってますし……」

 ……俺はその言葉に声が出なかった。彼女は最後の時間に過ごす行動をその程度の理由で決めたのだ。さも当然のように。

「そうだ原山さんは何で来たんですか? 買い物?」

 そんな俺の驚きを気にせず彼女は見当はずれに聞いて来る。……店長の不安も尤もだ。俺は先ほどまで急いでいたことに少し恥ずかしさを感じながらも、俺はため息を一つ付いた。





「ごめんなさい原山さん」

「いや、俺が勝手にやるだけだし」

 約一週間ぶりのコンビニの制服を着ながら、俺はレジに立っていた。島田さんは暫く床を掃除していたが。或る程度綺麗になったからか、俺という仲間が増えたからか、掃除を止め、横に笑顔で立っている。

 俺はしょうがなくここに残る事にした。彼女をここには放っておけないし、帰っても特にすることが無いからだ。そして彼女は規則正しく制服を着ているのに俺は私服なのはどうかと思い、自分の制服に着替えてきた。

「え、原山さん。それ本気ですか?」

 俺がここに残ると言った時、彼女は驚いた顔でそう言った。恐らく素である。その後、彼女は嬉しさと恥ずかしさが合わさったような笑顔をしていた。

「どうしました?」

 俺が黙っていると島田さんが不思議そうに首を傾げてくる。

「あ、あぁ何でもない……そういえばレジは生きてるんだな」

 俺は何気なしに近くのレジを触った。バイトの時嫌と言う程触ったこの機械はこの日もいつも通りに稼働していた。襲われたような形跡は何処にもない。先週と変わらぬ少し黄ばんだレジだ。

「はい、助かりますね」

「……あってもなくても変わらない気はするが」

 今更お金があろうがなかろうが何も変わらないのだ。だから盗もうとする人が居なかった。それだけのこと。

「でも助かります。助かったんです、私にとっては」

 なのに彼女はそう言って、レジの文字盤を触って笑っていた。俺はその笑顔がよく分からない。けれど分かる気がした。


 午後七時。外は夜になった。俺と島田さんは二人で喋りながらのんびりと商品を見渡していた。

 その時、コンビニの扉が入店音と共に開いた。

「「いらっしゃいませー」」

「うわっ!」

 俺達の言葉に(恐らく)今日の初客は驚いた声で返してきた。扉の前に居たのはシャツにジーンズというラフな格好の少年で、手にはバットを持っていた。

 俺はそれを見て友人を思い出し、警戒する。

「え、あ、その俺は……」

 少年は俺達の事を見て、明らかに動揺していた。どうやら誰か居るとは思っていなかったようである。

「何か御用ですか?」

 俺と少年の様子など一切気にせず、島田さんはいつも通りの声音で少年に聞く。

「あ、いや、まさか人が居るとは思わなくて」

「そうだろうな。おれもそう思う」

 少年の言葉に俺は島田さんを見ながら同意する。

「で、お客様。何かお買い上げを? それとも強盗ですか?」

「え、あ、いや、物を盗むとかそういう訳では」

「原山さん!」

「あー、はいはい」

 俺が少年を軽くいじめようとした所で、島田さんから叱責の声が飛ぶ。

「駄目ですよ。お客様にその態度は」

「いや、でもどっからどう見てもあれ」

「はーらーやーまーさん」

「……ウッス」

「……プッ」

 突然、俺達のやりとりを聞いていた少年が声を漏らした。そちらへ向くと、先ほどまでおどおどしていた少年が口を手で押さえて笑っていた……目から涙を流しながら。

「す、すみません……ちょっとおかしくて」

「そんな泣く程か」

「い、いえ……泣いたのはそういう理由じゃないですよ」

 少年は目をこすりながら、言葉を続ける。

「その、なんていうか。懐かしかったんです。隕石が地球に落ちてくるって言われてから。俺、その、友達と遊びぼうけたんですけど……何かが足りないと思って」

「……」

 少年の言葉に俺と島田さんは黙った。島田さんが何を思っているのか分からない。けれど、俺は彼の心の中で思っている事を少しだけ理解することが出来る気がした。友人と遊んでいる時に感じた孤独感、狂っていく世界に残される自己。

「それがちょっとだけ見えた気がしたんです。ここでほんの少し……」

 そう言った後、少年の目から再び涙が溢れた。

 俺達はそれを黙って見ていた。


「……原山さん、どうしました?」

「ん、いや?」

 その後、泣き止んだ少年は炭酸水と菓子パンを買って出て行った。最期の時は家族と一緒に過ごすのだという。

 俺は商品を買った時の少年を思い出していた。無料で良いと言った俺達に商品を払い出て行った彼は最期、清々しい表情で「ありがとう」と言った。

 その時の彼を俺は同情し、羨ましいと思った。何でだろうか。

「よいしょっと」

 そんな事を考えている俺を無視して島田さんは休憩室から何かを持ち出し、それを適当な場所に置いた。それはラジオだった。

「何でラジオを持ってきてるんだ」

「えへへ……いや、ちょっと暇つぶしに何か聞けないかなーって」

「一応勤務中ですよ」

 そうは言うが俺も暇なため、それ以上は言わない。彼女がコンセントを探している内に俺は時計を見上げる。時計は午後七時半を指していた。

「うーん、何処も放送してませんね」

「そりゃそうだ」

 こんな時まで仕事をしようなんて馬鹿はそうそう居ない。電波を拾おうとしている島田さんを見ながらそう思った。

 ……まあそれには自分も含まれるが。

 なんて思っていると再び入店音が鳴った。

「いらっしゃいませー」

「……」

 視線を向けると、三十代程でよれよれの有り合わせの服を適当に着てきたといった感じの男が、眼鏡越しに驚いた眼を向けていた。

 男と暫く目を合わせ続けていると、ハッとした表情をした後、髪を恥ずかしそうに掻き始めた。

「は、はは……すまない。まさか人が居るなんてね」

「あはは……それさっきも言われましたね」

 男の言葉に島田さんは笑顔を浮かべる。

「で、何しに来たんですか。余り詳しくは知らないけど、隕石が来るまでもう時間ないですよね」

「そうだね。隕石が降るのは後三時間か、四時間と言われているよ。君たち、帰る場所は?」

「……俺は一人暮らしだから暇なんすよ」

「両親は?」

「新幹線が動かないんで」

 その言葉を聞いて、男は申し訳なさそうな表情へと変わる。

「別に気にするような事でもないですよ……あんたは?」

「あはは、私の親はもういなくてね……。会社の社長とかも何処かへ逃げたらしくて、することがなくて家にずっといたんだけど、備蓄がなくなっちゃってね」

「奥さんとかはいらっしゃらないんですか?」

 島田さんが疑問に思ったのか質問してくる。その途端、男の動きが固まった。

 ……ああ、これは地雷だ。

「あ、あはは……奥さんか……奥さん。うん、居たんだよ」

「あ、えっと……その、ですね」

 そういって力なく笑う男。それを見て、島田さんも流石に不味いと思ったらしく表情を変え、慌ててフォローしようとする。

「いや、君が気にすることじゃない。彼女に問題が有ったわけじゃない。私に問題が有ったんだ……私は追っていたものは。私が見ていた場所は余りにもしょうもない場所だった。そこに気付くのが遅すぎた。それをつい一週間前にやっと気づいた……」

 男の言葉に俺達は黙ってしまった。それ位、男の言葉には深みが有った気がした。俺の様な大学生程度の人生では到底たどり着けない、暗い底。それを理解している男の言葉だった。

「……今となってはもう遅すぎる。遅すぎるんだ」

「……そんな事は無いんじゃないですか」

 今にも床に臥してしまいそうな表情をした男に、島田さんはそう言った。表情は笑顔では無かった。普段でも中々見ない。真面目な顔をして、男の前に立っていた。

「あまり事情を知らない私が言うのも可笑しいと思います。けれど、それで良いんですか? 後悔して、悲しい顔をして終わって良いんですか?」

「……とはいってもな」

「あなたは自分の力で、気付けたんです。だから、大丈夫ですよ」

「……はは」

 島田さんの言葉を聞いた彼は可笑しそうに笑った。さっきまでの笑みとは違う笑みだった。

「まさか君みたいな子に諭されてしまうとはね。昔だったら『事情も知らずに偉そうに』って怒ってたかもしれないな」

 そう言うと男は置いてある珈琲の缶を一つ取り、コンビニのレジの前に置く。

「買ってくよ……最後に来たお店がここで良かった」

「はい、お買い上げ、ありがとうございます!」






 午後八時、外を見てみたが、近くのビルなどは殆ど明かりが付いていない。そんな中、俺達はコンビニに居た。俺は商品を適当に眺めており、島田さんはレジに立ちながらラジオを弄っていた。

「う~ん、CDとか持って来ればよかったかな……」

「そういえば島田さん」

 暇だった為、俺はずっと疑問に思っていたことを口にすることにした。

「はい、何ですか?」

「どうしてここに?」

「今日シフトが入ってるからですよ?」

「いや、そうじゃなくて……そうだろうけどそうじゃなくて」

 首傾げている彼女に何て言えば良いのか悩む。多分、それだけじゃない気がするのだ……普通に考えて、シフトが入ってるからって理由だけで地球最後の日にバイトにくる馬鹿は居ないだろう。

 俺が追及するように睨みだすと、島田さんは「分かりました……」と、少し恥ずかしそうな顔をしながら言葉を返した。

「原山さんは隕石が振るって告知されてから何してましたか?」

「え、俺?」

 突然質問され、言い淀む。大学に行けなくなってから……両親と電話し、友達と……。

「私、最後だからって友達と、悪い事一杯してたんです」

 俺が何かを言う前に彼女は目を閉じながら言葉を続けた。

「悪い事?」

「はい、友達と人の居ないお店で好き勝手にやったり、カラオケ店でずっと歌ったり……そう色々と」

 ……成程、どうやら彼女は、俺や俺の友達と同様に羽目を外していたらしい。そのことを恥じているようだ。

「その時、私は有る事に気づいたんです」

「有る事?」

「はい」

 俺の疑問に対して、彼女は指を上に向けた。その先に有ったのは……蛍光灯。

「電気がずっと供給され続けているんです。私が好き勝手やってた時も、日本……それどころか世界の人が我先にと逃げようとしている時にも……」

 ……気付かなかった。俺は今更のようにその事に気付いた。日本中がパニックになっている時、電気だけは決して止まっていなかった。それだけじゃない、両親とも店長とも繋がった電話。これもだ。そういったインフラは不自由しなかった。

「それに気付いたら恥ずかしくなったんです。多分、これは最後まで困らないように発電所の方が頑張っているのに私は何をしているんだろうって……そして今更怖くなったんです。私が『何時も通り』を失くしてしまっている事に」

 「何時も通り」を失くす……そういう言葉で彼女は表現した「それ」に俺は覚えが有った。物を盗み、遊びほうけた時の友人のあの笑み。そしてあの時感じた俺の孤独。恐らくそれは彼女の「それ」と同じものだ。

「それで最後にコンビニに? 『何時も通り』を取り戻す為に?」

「すみません、最後に出来る限り取り戻そうとした時にシフトが入ってる事思い出したので……あ、あの時、店長に電話したから……」

 何か思い出したのか、彼女は俺を見て突然顔を赤くする。俺はその意味は分からなかった……けれど。

「……ありがとう」

「……はい?」

 思わず口から感謝が出た。

 彼女のその行動で、俺は何かに救われたのだ。






 午後九時。

「島田さん、上がりますか?」

「そうですねぇ……」

 シフト通りなら、もう上がる時間だろう。しかし島田さんは悩むように人差し指を唇に乗せていた。

 そしてその気持ちは俺にも理解できた。最後の瞬間に生まれた「いつも通り」。それを手放したくない。まるで夕方に帰るのを渋る子供の頃に戻ったような気持ちだ。

「原山さんは?」

 彼女に尋ねられた。残念ながら何も考えていない。

『ザザー……どうせ最後だからやってやるぅ! グッドアフタヌーン! グーテナハト!こんばんはぁ! ミツキラジオの時間だよぉ!』

 その時、音が聞こえてきた。音源は原山さんが持ってきたラジオから。電波が掴めなくて放置されていた彼が音を紡ぎ始めた。

 突然の事に驚きながら俺達はラジオに意識を向ける。

『地球最後の日? そうね、そうかも。でもね最後だからって落ち込んでるのは良くないと思うのよ。という訳で最後に私がラジオやっちゃう。うん、やっちゃおう! 適当に残ってたハガキを掻き集めてどんどん紹介しちゃうよぉ。まずはラジオネーム。目が覚めたらエルフさんのお便り――』

 ラジオから流れる見知らぬ声を二人で聞き、顔を合わせる。そして思わず同時に吹き出した。

「同じような事、考える人居るんですね」

「……そうだな」

 その後、二人共服を着替えた。彼女はカーディガンとシャツというシンプルな格好しており、肩に小さなバッグを掛けている。そして大事そうにラジオを抱えていた。

「原山さん、ここから近いのか?」

「いや……近くは無いですね」

「……というかラジオ持っていくの? コンセントないとラジオ聞けないんじゃ」

「道中はこっちで聞きます」

 そう言って、彼女は小さなラジオを取り出す……ここのコンビニで売っていた電池で動くものだ。

「……まあ、いいか」

「お金は置いてきましたよ」

 そう言うと、彼女は何時もの笑顔を向けてくる。俺も呆れた顔を返す。


「最後なので、二人で一緒に出ますか」

 彼女の言葉で俺と原山さんはコンビニの前に並んで立つ。

「原山さん、ありがとうございます」

「……ん?」

 その時、彼女は顔を赤くしながら小声で言った。

「正直に言うと、店長に電話したのは寂しかったんです。もし電話したら誰か来てくれるかもしれない。そんな気持ちだったんです……だから、嬉しかったんです」

「え……?」

 彼女のその言葉を聞いて、聞き返そうとした瞬間、彼女は大きな声を上げる。

「さ、行きましょ!」

「お、おう……」

 彼女の声に従って、二人一緒に歩き出す。心なしか浮かび上がる足。

 そして二人同時にコンビニの光を抜けていった。






「ところで、原山さんはどっちですか?」

 出た直後に島田さんは聞いてきた。

「俺はあっちだな。島田さんは?」

 俺は自転車を準備しながら家の方向を指さす。

 彼女は俺の言葉を聞いた後、少し、考える様な仕草をした後、少し小声で返してきた。

「……原山さんと一緒の方向ですね」

「ん、そうだったのか。じゃあ、途中まで行くか」

「……はい! 是非」

 


目を通して頂けた方、ありがとうございます

ところでこういう作品のタグってどの辺りが良いんでしょうか?

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― 新着の感想 ―
[良い点]  三つ挙げさせていただきます。  まずは、私が個人的に終末世界観が好きというのがありまして、それが一つ。  二つ目は普段意識することのない社会的インフラに携わる人々に思いを馳せてるのがいい…
2016/02/08 06:53 退会済み
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