変わった日
次に目を覚ました時、また誰かが話しかけていた。
「大丈夫ですか」
その人が肩を叩いてまた言う。
「聞こえますかー? わかりますか? 」
僕は鳴こうと口を開いた。
「……」
僕は声がでなかった。それは出せなかったのではなく、戸惑ったからだった。いつもと違う。それでも目を開ければ、男の人のホッとした顔が見えた。
「大丈夫ですか? 念のため救急車に乗ってください」
僕はキュウキュウシャが何かわからなかった。でも、いつもピーポーピーポーうるさいクルマが側にあって、それが救急車だと理解した。
男の人が僕を支えながら救急車へ向かう。僕はまたなんとも言えない違和感を覚えた。この男の人はなんて小さいんだろう。
それはすぐに間違いだと気付いた。いつもの河原のはずなのに、全てが小さくみえる。目線も高い。僕が大きくなったんだ。
救急車に近づくと、窓に僕を支えてくれている男の人が、また別の男の人を支えているのが見えた。その人はじっとこっちを見ている。そして僕と同じ動きをする。
僕はそれが妙に怖かった。
救急車に乗ると、僕は寝かせられた。男の人はどこかビョウインを知っているか尋ねる。怖くなり暴れた。男の人が押さえつける。僕はビョウインが大嫌いだ。いつも痛い思いをするんだ。今はご主人様もいないのに我慢できるわけない。僕がもっと激しく暴れると男の人は、他の人にビョウインを探すように言った。そして、救急車が動きだす。僕はビョウインにつくまでずっと押さえつけられていた。
ビョウインにつくと、たくさんの人が走り寄ってくる。そしてまた僕はどこかに運ばれる。
小さな箱に何回も押し込まれて僕はとても怖い思いをした。でも、それが終わると僕はベッドに寝かされた。ご主人様のベッドのようにフカフカではないけれど、僕1人にベッドがもらえるなんて初めてでとても嬉しい。