授業初日でございます 2
入学式の次の日の授業初日。やっと午前中の文法の授業が終わった。私は、座っている先から後ろを振り向き、私のクラスメート達を確認する。
まず、攻略対象としては、二アール・アンドレイが同じクラスだが、これは想定内。なぜなら、彼とは常に同じクラスになるという設定だからだ。適度に絡んでいないとフラグが立つから、要注意だ。
そして、それ以外の攻略キャラで同じクラスなのは、ゴヴァン・ルイージとキアラン・バータルだ。ルイージ家は、侯爵で、この国随一の商家である。ルイージ家は、この国の建国時から続く名家である。なんでも、この国の建国時に多大な功績をしたということで、この国で唯一、外国の金貨とこの国の金貨を交換することが許可されている商会なのだ。外国の金貨とこの国の金の純度が違うから、貿易の際にはこの商会を通さなければならないらしい。ちなみに、名家であり、建国来の忠臣であるということは自他認めるけど、公爵家ではないのは、王族家と婚姻、つまり血のつながりを持たないというのが、ルイージ家の家訓にあるかららしい。王族と身内になったりして、なぁなぁな商売はしませんよ、ということらしいけど、そこが厄介なのだ! つまり、はっきり言うと、玉の輿を狙える名家なのだ。王族や公爵家、またそれらと血縁が近い家は対象外となると、ゴヴァン・ルイージの結婚相手は、侯爵家の中の下くらいから、伯爵家、子爵家が候補となる可能性が大きい。格式がない家でもチャンスが!! ってな感じだ。ある意味、王子であるブリキット・アレクサンデルよりも、タチが悪い。
キアラン・バータルは、学者の家系で、攻略キャラ唯一の眼鏡キャラだ。知性溢れる感じで、主人公と同じクラスで、かつ、王子様であるブリキット・アレクサンデルが主人公と同じクラスでない場合は、このクラスの委員長になるのだ。今回は、キアラン・バータルがこのクラスの委員長になるだろう。彼が委員長になった時は、対応が簡単だ。主人公がある程度良い成績を取っていれば、あまり関わることがないのだ。逆に、成績が悪いと、めんどくさいことになる。キアラン・バータルが、「どうやらこのクラスの平均点を下げているのは君なようだな。僕が委員長になったからには、平均点でも向こうのクラスを凌駕したい。君に勉強を教えよう」と、絡んでくる。「ああ、気にしなくてもいいよ。君に多少の時間を割いたところで、どうせ僕は満点だ。結果は変わらない。いや、これは悲劇か。これ以上僕がどんなに努力しようとも、満点以上の点数を取ることができないのだから…… 」って、うざい台詞を放つのだ。
でも! でも! 彼は努力家で、蛍雪の功よろしく夜遅くまで毎日勉強しているのだ。その時間に加え、思うように成績向上の兆しが見えない主人公のために、自作の問題などを丁寧に作ってきてくれるのだ。そして、放課後、主人公が問題を解いている間に、寝不足の影響でうっかり寝てしまうキアラン・バータルの寝顔……。そして、「問題が解けたから起こす」と「このまま起きるまで待つ」の選択肢の末……。いやぁ、あのイベントは良かった良かった。
って、キアラン・バータルとのフラグも立ててはならないから、ある程度中の上くらいの成績を保たねばならない。勉強もちゃんとしなきゃいけないなんて、ついてない。
そして、ライバルキャラは同じクラスに誰がいるのか、と確認しようとした時、「こんにちは。もし良かったら食事を一緒にしていただけないかしら? 私は、チューティア・リノアルと申します」と話しかけられた。
やはり、こうなるのか…… と内心思いながら、私は「私でよければ喜んで。私は、ホリー・ヴァレンティノと申します」と、私は淑女の礼を取った。