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授業初日でございます 1

 入学式の次の日、私の抵抗空しく、メアリとセバスに学園へと送り出される。そして、割り振られたクラスにて、私は午前中の授業を受けていた……。しかも、最前列で……。


 なぜ最前列で授業を受けているのか、それは決して私が真面目だからという訳ではない。それに、席が指定されているからでもない。座る席は、自分自身で選ぶことができるのだ。

 教室の構造を説明したら、私が最前列に座っている理由が明白となると思う。教室は半円形で、ローマのコロシアムの観客席のように後ろに行けば行くほど、座る席が高くなるという構造なのだ。つまり、身分が高い者が、より高い位置の席に座り、身分の低い者は低い席、つまり前の方に座るのだ。そういう暗黙のルールがあるらしい。

 いや〜、ブルスプの謎が一つ解けたわ。教室がこんな立体構造になっていたとは思わなかった。たしかに、こんな教室の構造なら、身分が高い人が後ろの席に座るのが自然よね、と私は納得が言った。私がなぜ疑問に思っていたかというと、ブルスプにおいて、主人公は授業中にゴミを投げられたりするというイジメに遭遇する。主人公は最前列に座っているから、良いまととなるのだ。ゴミを毎回の授業で投げられると分かっているなら、後ろの席に座ればいいじゃん。何故健気に目に涙を貯めながら我慢しているのか、後ろに座れば視界に入るのだから回避することだって可能でしょ、と思っていた。蝋燭の揺らめく炎の中で、深夜まで勉強している主人公だから、近視になっていて、後ろの席に座ると黒板が見えないからだと思っていた。 

 そっか、主人公は最前列に座るという選択肢しかなかったということなのね…… なんて不憫なのでしょう…… って、私の今の状況がそれじゃん。攻略キャラとの恋愛フラグが立ってしまうと、背後から授業中にゴミを投げられるという憂き目にあってしまう。まじでやばい!!


 って、フラグ回避のことばっかり考えていたけど、何故私はこのマリジェス学園で普通に授業を受けているのであろうか……。ブルスプでも、朝9時から11時までの2時間と、13時から15時までが授業という設定だったのは確かだ。しかし、重要になるのは、お昼休みと放課後だ。授業なんてただの設定だと思っていたのだけれど、普通に授業を進められても困ってしまう……。


 ちなみに、ブルスプでは、攻略キャラとの親密度を深めるのは、お昼休みと放課後の主人公の行動によってである。

 お昼休みでは、11時から13時までの2時間で、主人公が何処で昼ご飯を食べるか、という選択肢が現れるのだ。カフェテリア、教室、噴水前、中庭の木陰、春の園、夏の園、秋の園、冬の園という選択肢だ。そして、その場にいる攻略キャラとフラグやらイベントが発生するという手筈なのだ……。あ、ちなみに、2週目以降の話だけど、主人公が生徒会に属した場合は、生徒会室という選択肢も現れる。


 でも、冷静に考えると、ブルスプのゲームでは、何処に行けば攻略キャラと出会えるか、ということがパソコン画面上に表示されていた。だから、フラグ管理は簡単だった。しかし、私が体験しているように現実のようになってしまったら、攻略キャラがどこで昼ご飯を食べているかなんて、把握できないではないか……。思わぬところで攻略キャラと遭遇して、フラグが立ったらどうしよう……。

 それに、放課後のクラブ活動を選ぶのも大変だ。帰宅部を選びたいのだけれど、マリジェス学園の方針で、どこかのクラブに属さねばならない。幽霊部員に成れれば良いのだけどそれは難しい……。


 とりあえず私が受けている授業は、文法の授業ということらしい。先生が授業を進めている。


「以上説明したように、文や語を対等に結ぶには、次のような方法がある。先生の後に続いて発音するように。Et canto et salto」と先生が言い、「Et canto et salto」と生徒が復唱する。


「Canto et salto」「Canto saltoque」「Canto, salto」と、先生が次々と発音をするのを生徒が真似ていく。


「また、2語以上の語や文を否定するには、nequeを繰り返し使うのだ。たとえば、Neque Canto neque saltoというようにだ」と先生が説明している。


 ブルスプの中では、設定すら出てこない授業の内容を体験するということには一瞬感動したが、それも最初の3分くらいだった。なんか、良く分からない言語の勉強をさせられて、これ、意味あんの? という感じだ。ゲームの世界なら、フラグに関係のある、主人公の行動選択時間だけでよいと思う。衣食住がリアルなのは昨日の段階で思い知ったが、授業とかまでリアルを再現されても困る。スキップしてよ、と思う。もともと、勉強嫌いだし!!


「では宿題を出す。De futuris rebus etss semper difficile est dicere, tamen interdum conjectura possis accedereを次の授業迄に訳しておくように」と、先生は黒板に文字を書いて、授業を終えた。




 数日後の事である。


 この宿題を時終えた時、私は唖然とした。

 訳した結果、「未来のことについて言うことは、常に難しいことであるにせよ、時には推論によって近づくこともできよう」という意味であるらしい。え? これは、ブルスプのシナリオから逃れられないという振りなのだろうかと……。

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