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なんで私があのゲームの主人公になってるのよ!!  作者: 池田瑛
学園生活 ~唱歌祭と期末テストと私~
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興味の無い男の小難しい話ほど、つまらないものはございません②

 ブリキットに促されて私は秘密の花園のテーブルにブリキットに促されて座る。風に揺れている花々は、いつもは長閑で私の心を休ませてくれるのに、今日はどこか儚げで頼りない。


「さて、卵の件だったな。あれは、ただの実験だ」とブリキットは黄金の髪を掻き分けながらドスンと椅子に座った。


「何かそれが帝王学と関係があるようなことを仰っていましたね」と私は話の続きを促す。


「帝王学は教える。王とは孤独なものである、とな」とブリキットがドヤ顔8割、憂い顔2割といった表情で言う。イケ面なのだけど、なんかイラっとする。


「そうなのですか」とだけ私は答える。

 今の王様も、王妃に、側室を百名以上囲っているのに何が孤独だと言うのだろうか。このブリキットだって、この学園で、将来の王妃と側室を見つけるとか入学式の挨拶でハーレム宣言をしている。しかも、学園でも毎日、数十人の貴族がブリキットの金魚の糞のように後を追っかけまわしている。異性だけではなく、将来の側近という地位を狙って、同性もブリキットの周りに控えていたりする。いつも人の群れの中心にいながら何が孤独であろうか。自分は孤独だ、なんて、安っぽい口説き文句であろうか。私が「では私があなたの孤独を癒します」とか言うのを期待してるのだろうか? フラグ回避の意味では、そう言っておいた方が、上っ面だけでも私もブリキットに興味があると示せて、私の身の安全につながるだろうけど。


「今回の卵のこともそうだ。少し考えれば、生卵を付けたら髪の毛が美しく絹のようになるなど、浅はかな妄言であると分かるはずだ。しかし、私がその話を肯定したら、それを盲信する。嘆かわしい」とブリキットは噴水に視線を向けて言った。


「それは盲信とは違うのではないでしょうか。私も含めてですが、この学園に通う女は、ブリキット・アレキサンドル様の王妃、もしくは側室になりたいと考えております。そのブリキット様に、髪の毛の美しさを褒めてもらいたいと思うのは自然なことですわ。少しでも可能性があるのなら、それを実践してみる価値はあると思う女は多いはずです。私も、ブリキット様からその話を伺ったならば、それを実践していたことでしょう」と私は真面目な顔をして言う。

 私もブリキットの王妃、側室を狙っているということをアピールして、フラグ回避。私もあなたを狙っているOne of them ですよ――!! とアピールして、ブリキットが私に絡むことが今後はないように布石を打っておく。


「だがそれではだめなのだ。王は間違うことはなく、王が言うこと、行うことは常に正しい。だが、別の正しい方法があるやもしれない。そんな時に、王の言葉を盲信せず、助言や忠言をくれる者を私は求めているのだ」


 いやいや。王は間違うことはなく、王が言うこと、行うことは常に正しい、ってさ。助言をするならば良いが、忠言をするって、それは王様が間違ったことをしようとするから、諫めようとするわけだ。だから、忠言を言うわけでしょ? それなのに、その忠言を聞く王様が、「俺がやることなすこと全部正しい」って態度なら、忠言も意味ないじゃん。「王様だって間違える時があるから、それを諫めてくれる側近が必要だ」とかそう言えばまだ話は分かる。王様の周りにYesマンしかいないと困ったことになると言っているのだろうか? 


「そうであっても、実験という名目で、民が苦しむようなことをされるのは、如何なものかと思います。今回のことだって、卵を髪に塗ったせいで、下痢が止まらず学園に来れない学生がたくさんいるのですよ? In multitudine populi dignitas regis, et in paucitate plebis ignominia principisと言うではありませんか」と私は言う。ついでに、文法学で習った諺をそのまま引用する。


「王の栄えは民の多いことにあり、王の滅びは民を失うことにある。 箴言の14の28だな。だが、14の35において、Acceptus est regi minister intelligens; iracundiam ejus inutilis sustinebitとも言われているだろう?」


「賢いしもべは王の恵みをうけ、恥をきたらす者はその怒りにあう、でございますか」と私は答える。確かに、そんな記述もあったような気がする。見事に言い返されてしまった。ブリキット・アレキサンドルは貴族よりも遙かに水準の高い英才教育を受けているから、私のにわか勉強が通じるような相手ではないか……。

 だが、そのブリキットの言う、「実験」とやらで、私が悪女呼ばわりされるのは心外だ。はっきり言って腹が立つ。まぁ、生卵の一件で、私が邪智暴虐の悪女だとか魔女だとか言われて周りから恐れられ、ブルスプのストーリーのように私を虐める学生が減ったのはありがたいことだし、結果オーライだ。しかし、不快なことには変わらない。

「失礼ながら申し上げます。卵を髪に塗るという行為自体は愚かな誤りであるかも知れません。しかし、先ほども申し上げましたが、その行為は、ブリキット様の王妃や側室になるための行動。貴方様を思っての行動です。その思いを汲み取るのも、王に求められることのように思います。王が「実験」などと称して、民を試すなど、あってはならないことだと思います。ブリキット様は、王は孤独だと仰られました。しかし、王がまず先に、民を信じないと、民も心を開けません。王と民が互いに疑心暗鬼になったのであれば、王は孤独になりましょう」と私は言ってやった。

 生卵の一件のブリキットの思惑は分かった。しかし、やり方がスマートじゃない。


「うむ。ホリー・ヴァレンティノよ。お前が言っていることは一見正しい。しかし、思い違いをしているぞ。貴族は民ではない。先ほどの引用を見ても、お前は民と貴族を混同しているぞ。この学園に通う者たちは皆、貴族の子息女。決して民ではないのだぞ?」


 王制が引かれた国なら、この国の人達は、皆、国民。つまり民でしょ? ブリキットの言っている言葉が飲み込めない。


「何を言っているか分からないという顔だな。たしか、ヴァレンティノ家はお前の祖父の代で貴族になったのであったな。まだ、民気取りか。自ら与えられた特権を忘れたか?」とブリキットは厳しい顔で言う。


「どういうことでございますか? 不勉強で申し訳ありません。民と貴族の違いは何でしょうか?」と私はブリキットに聞く。この国の国民、イコール、民ということではないのだろうか。

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