興味の無い男の小難しい話ほど、つまらないものはございません①
次の日の昼休み、私は秘密の花園で人を待っていた。待ち人はブリキット・アレクサンデル。彼はきっと来てくれるだろう。
昼休みに入るや否や、私はブリキット・アレクサンデルが授業を受けている教室に行った。そして、教室の最後尾の席に座っていた彼と目を合わせたのだ。視線が合った。そして私は、彼と目が合うと、何も言わず、なんの合図も送らず、そのまますぐに教室を出てた。彼なら、その意味を理解してくれるだろう。あの観察力に優れた王子であるならば、私が彼のいる教室に来た、そして彼と目を合わせた意味を推してくれるであろう。そして、待ち合わせの場所がこの花園であるということも分かってくれるであろう。本を片手にお弁当を食べながら彼を待った。
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「何か私に用事か?」と秘密の花園に通じる抜け道を潜り抜けると彼は言った。私の待ち人は正しく来てくれた。
「用事があるのは、ブリキット・アレクサンデル様の方ですわね」と、私は椅子から立ち上がり淑女の礼を取るが、視線は彼から外さない。私は怒っているのだ。
「何のことか分からないな」と彼は肩を挙げて笑いながら言う。どうしてそんなに怒っているんだい? とでも言うような、少し困ったようなしぐさをする。腹芸だろうが。
「生卵と言えば、お話くださいますか?」と私は単刀直入に言う。
「ああ。そのことか」とブリキットは事もなげに言う。
この確信犯め! と私は心の中で悪態を吐く。
「どういった意図で、あのようなことをされたのでしょうか? 私はひどく迷惑をしております」と私は両手に腰を当てて、怒りを表現する。
「実験をしてみたのだ」
「実験でございますか? 意味が分かりかねますが」
「ホリー・ヴァレンティノは、帝王学というものを知っているか?」とブリキットは私に尋ねる。
帝王学? んなもん知るかってーの、というのが私の腹の中なのだけれど「申し訳ございません。浅学菲才。私の無知をお許しください」と赦しを乞う礼を取る。
「王妃を目指すなら、修めていた方がよいぞ。2学年になれば、選択として履修できたはずだ」とブリキットは言う。この人は、私を挑発しているのだろうか? 『王妃を目指すなら』という言葉の意味は、この国の王となる男と結ばれるということ、つまり、私の目の前で、金髪の髪をかき分けているブリキット・アレクサンデルとの結婚をすることを狙うということだ。彼の言葉を正しく言い直せば、「俺と結婚したかったら、ちゃんと帝王学も勉強しておけよ」ということだろうか。どれだけこの人は不遜なのだろうか。
「王妃など私には恐れ多いことでございます。私は子爵の娘。身分を弁えております」と私は答える。つまり、あなたに興味は無いですよ、と意思表示をする。
「その身分差を乗り越えることができるが、婚姻という手段であろう。それに、それはこの学園で学ぶ目的の1つでもある」とブリキットは言い切る。
本当に、この人は嫌な性格をしている。 この学園で学ぶ理由。入学式の時に王子が言った、「私はこの3年間で、信頼に足る側近と、そして私の傍らに立つ本妻を、そして側室を見つけたいと思っている」というのが、この学園のすべてだ。貴族は、将来、王に良く仕えることができるように。私はこれを否定することはできない。
「そうでございますね」と私は渋々ながらも同意をした。そして、ふっと私はブルスプのキャラ設定を思い出す。この王子への対応は、「私は、本妻を狙ってます。なんらな、側室でもいいです!」ということを全力で出さなければならない。王子に興味が無いということであれば、逆にこのブリキットから興味を持たれてしまう。
ブリキットのやったこと、そしてこの態度には腹が立つが、フラグを折るためには仕方がない。
「ブリキット・アレクサンデル様。私の考えが間違っておりました。良ければ、その帝王学というものがどのようなものなのか、私にご教授いただけないでしょうか」と私は淑女の礼と、満面の作り笑顔でブリキットに言う。
「良かろう。殊勝」と、ブリキットは小さな笑みを浮かべる。ただ、目が全く笑っていないように見えるけれど。




