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なんで私があのゲームの主人公になってるのよ!!  作者: 池田瑛
学園生活 ~唱歌祭と期末テストと私~
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ディジー・エスティバンとキアラン・バータル 7

 キアラン・バータルが、フェルマー・ワイルズの定理を証明するか、反証を提示するということを貴族の名誉に誓ってから一週間が経った。

 相変わらずキアランと私の放課後の勉強会は続いていたが、キアランの機嫌はすこぶる悪い。

 その理由は2つだ。

 1つ目の理由は当然、彼が未だにフェルマー・ワイルズの定理を証明できていないということ。


 そして2つ目が、私の幾何学の理解が大幅に向上したからだ。今まで、何度説明をしても理解しなかった私が、一を聞いて十を知るようになったからだ。これは、幾何学に関して頓珍漢というブルスプの設定という名の主人公補正を、デカルト座標というチート知識ではね除けた結果なのだけど、そんなことを彼には説明できない。

 彼は「どうして、この説明だけで理解できるのであれば、今までの無理解は何だったのだ?」と首を傾げている。むしろ、私が分からない振りをして、キアランをおちょくっていたのではないかと彼は疑い始めている。


「これでやっと、授業の進捗に追いついた。勉強会は今日でお終いだな」とキアランが言った。


「長い時間、丁寧に教えていただき、ありがとうございました」と私は淑女の礼を取る。


「いや。学級委員長としての責務を果たしただけだ。やっとこれで、あの定理について考える時間を作れるというものだ」とキアランは言った。

 私には、未だにフェルマー・ワイルズの定理を証明できていないことへの言い訳に聞こえるのだけどね。


「そうですか。頑張ってください。答えが出るのを楽しみにしていますわ。私は、放課後は図書部の活動をしているので、もし、あれが解けた際には、図書館で声を掛けてください」と私は、2つの意味で念を押しておく。

 1つ目が、教室で声を掛けないでね、という意味で。2つ目が、問題が説けるまでは、私に声を掛けないでね、という意味で。

 やっとキアラン・バータルとの放課後勉強会というフラグをへし折ったのに、それ以外の理由でキアランとの接触が増えてしまっては意味がないからだ。


「ああ。僕も、放課後、図書館でこの問題に取り組む予定だからちょうど良い」とキアランが言った。

 この学園にいる間にキアランが証明まで導き出せるとは思えないけどね、と心の中で私は思う。だが、放課後にキアランが図書館にいてくれるのであれば、図書部員でもあるディジー・エスティバンとの接触が期待できるから、それはとても好都合だ。

 フラグをへし折っているという充実感を私は感じる。


「それでは、私は帰宅いたしますので」と言って、私は教室から出て行った。


 ・


 馬車に揺られながら、今後の展開を考える。ディジー・エスティバンとキアラン・バータルが恋仲になってくれるように、アシストをするべきかどうか。私はそれについて悩んでいた。オリビアとゴウィンに関しては、図らずも私がゴウィン・ニールの目を覚まさせるという偶然だけど、ナイスなアシストをした形となった。できれば、ディジー・エスティバンにはあまり関わりたくない。生卵投げてきた主犯だし……。

 放置していても、勝手に恋仲になってくれればそれがベストなのだけど…… 様子をさりげなく見張る必要はある。

 しかし、ディジー・エスティバンに関していえば、なぜかここ2週間、学園に来ていないのだ。また、クラスの女子生徒の数人も同じように授業に来ていないという状況が続いている。

 別に、出席日数の規定とか学園にはないし、何日休もうが別に問題はないのだけど……。5月病にしては、時期が違うしねぇ。

 教室では、何かの御病気かしら? 流行病、まさか黒死病? などというような噂をしているのを盗み聞きをした。私も事情を聴きたいのだけど、クラスに話しかけることができる人がいないし……。キアランに聞けばいいのかも知れないけど、彼とはあまり接触したくない。

 それに、同じクラスの生徒の病状を心配していないというと薄情に聞こえるかも知れないけど、ディジー・エスティバンが授業に来ていないということは、生卵を投げられるとか、虐めを受ける心配がないということで、安心して授業に集中することができるのだ。


 あ、そうだ。もし、ディジー・エスティバンが病気なら、キアラン・バータルに見舞いに行かせればよいのだ! と思いついた。「学級委員長として」とか言えば、責任感の強い彼なら、見舞いに行こうとするのではないか。休んだ分のノートを持っていく、というような気の利いたことをしてくれそうである。


 よし! 明日にでも、キアランに、学級委員長として見舞いに行くべきだ、と進言してみよう。見舞いの品は、薔薇の花束も持っていくべきね、なんて耳打ちもしよう。

 ふふふ、と私は馬車の中で不敵に笑う。気分は、シェークスピアの『オセロ』のイアーゴーになった気分だった。

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