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なんで私があのゲームの主人公になってるのよ!!  作者: 池田瑛
学園生活 ~唱歌祭と期末テストと私~
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ディジー・エスティバンとキアラン・バータル 2

 幾何学の授業が終わり、私は駆け足で夏の園へ向かう。早く、髪の毛にべったりとくっついてしまった生卵を洗い落としたかった。髪の毛の場所によってはパリパリになっているし。トリートメント代わりなんて大嘘ついたけど、やっぱり早く洗い落としたい。気持ち悪いしね。授業の間、よくぞ耐え抜いたと自分を褒めてあげたい気持ちになる。


 夏の園の秘密の花園の噴水で、ポニーテールを解き、髪の毛を洗う。石鹸を持って来ればよかったと少し後悔をしながら髪を洗った。髪の毛から滴る水で、ブラウスまで濡れてしまうが、まぁ風邪はこの気温ならひかないだろう。

 毛と毛の間にしみ込んだ割れた卵黄の滑りがなかなか落ちないので、何度も洗う。ブルスプで、卵を投げられたり、雨が降った後の泥濘に尻餅をつかされたりという事はたくさんあったが、主人公のホリー・ヴァレンティノがそれをどうやって処理したかという描写はなかった。夕暮れ時の物寂しさのような、悲しくさびしい描写だし、カットされたのだろう。

 それに、制服の洗濯はメアリがするのだから、メアリは自分の雇い主が酷い状況にいるということに気付いたりしなかったのだろうか? ホリーお嬢様は、マリジェス学園でお転婆しております、なんてメアリ経由で実家に報告されていたするのではないか? そうだとしたら、目も当てられない……。


 ・


「ここで何をやっている?」と、夏の園から秘密の花園へ抜ける隠し通路の方から声が聞こえた。私は、慌てて手ぬぐいで顔を拭き、声の方向を見た。立っていたのは、ブリキット・アレクサンデルだった。


「お前は、チューティア・リノアルと一緒にいた…… ホリー・ヴァレンティノだな」と、彼は私を認識する。一度しか会っていないし、ポニーテールを解いた状態で、正解を導くのは、さすがは王族である。


「なぜあなたがここにいるの?」と思わず聞いてしまった。ブルスプでは、ブリキット・アレクサンデルが、ここに来るのはホリー・ヴァレンティノとの恋愛イベントがかなり進んでからのはずだ。イベントの進行具合から行っても、早くて来年の春のはず。だって、ブリキット・アレクサンデルとホリー・ヴァレンティノは、ここでファースト・キスをするのだ。彼だって、ホリー・ヴァレンティノを秘密の花園に案内する際に、「王族しか知らない秘密の場所なんだ。実際、僕も来るのは初めてさ」と言っていた。

 

しかも、恋仲になってから、この秘密の花園に一緒に行くまでのイベントも多い。なぜなら、周りの女子学生からちやほやされたり、黄色い歓声を浴びていた割に、ブリキットは奥手なのだ。


 カフェテリアで一緒に過ごし、いい雰囲気になるも、周囲の目を気にしてキスできない。


 夕暮れの教室の窓際、一つの窓枠で並んで外を見ているときに、一陣の風が教室に吹き込んでくる。そして、風でなびいたカーテンが2人を包む。そのカーテンの中で2人は熱く見つめあうのだが、ブリキットの踏ん切りがつかない。


 中庭の木陰で、ホリーが木を背にして立ち、ブリキットが左手の掌を木につける…… まぁ所謂、壁ドン的な感じのシチュエーションになるのだけれど、ブリキットがへたれる。


 春の庭で、2人で仰向けになり空の雲を眺めながら談笑をしているときに、おもむろにブリキットは上半身を起し、自らの頭をホリーの顔に近づけていき、ホリーは両目を瞑る。2人の唇の距離は縮まり、あと10センチで…… というところで、ブリキットは日和る。


 秋の庭で、2人っきりで仲良く裏千家流のお茶を堪能した後、いざ立ち上がろうとしたブリキットは、正座に慣れていないせいで、よろめき、ホリーを押し倒す形となる。既に2人の唇の距離は近く、見詰め合ったまま、お互いが息を飲む。ゆっくりとブリキットはホリーの唇に向かって頭を接近させる。2人の唇が触れ合うまであと数センチ…… というところで、獅子脅しが鳴ってしまう。その獅子脅しの音を、誰かが障子を開けた音だと勘違いしたブリキットは、キスを慌てて断念してしまう……。ちなみに、ブリキットの右手は、ばっちりホリーの胸を揉んでるのだけどね……。


 まぁ、そんな状況で、ブルスプで主人公が昼休みに過ごすことの出来るすべての場所、つまり、カフェテリア、教室、噴水前、中庭の木陰、春の園、秋の園、冬の園でのファーストキス失敗イベントとでも言うべきイベントを経て、やっと、この夏の園の秘密の花園のイベントが起こるのである。

 この王族しか知らない秘密の場所なら、絶対に人は来ない! 今日こそは! と気合が入っているブリキット・アレクサンデルを、ブルスプのプレイヤーは生暖かい目で見るのだ。

 ホリー・ヴァレンティノを人気のない場所に誘って、チューしちゃおうなんていう彼の作戦は見事成功しました! めでたし、めでたしってな感じなのだけど、乙女ゲームの王道とも言えるシチュエーションの数々を棒に振ってしまったブリキットが、果たしてキスできるのか? 何か、見落としているフラグがあるのではないか? そもそも、ブリキット・アレクサンデルとホリー・ヴァレンティノのキスシーンがあるのか? と、ブリキットのルートを初回プレイしたときには、逆の意味でハラハラしたものだった。やっとこの夏の園の秘密の花園でキスイベントを終えるのだ。


「それは、こちらの台詞だ。この場所は、王族しか知らないはずなのだがな……。王族専用ということでもないからまぁ不問としよう。ところで、お前は何をやっているのだ? 水浴びか?」とブリキット・アレクサンデルは、真顔で聞いてきた。


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