なぜ、ライバルキャラと交流しなければならないのか 3
この本はこの場所ね、と私は指定された本を書架に戻していく。デイジー・エステバンとキアラン・バータルも、黙々と本を本棚に戻している。
この本は……、あ、あそこね、と私は戻すべき場所を探し当てる。しかし、本棚の7段目は、私の手では届かないような微妙な高さだった。ステップ台とかないのかしら、と通路を探しても見当たらない。さっき、図書館内の見学をしていた時には、ステップ台を見かけた記憶はあるのだけど、どうもこの辺りには置かれていないようだった。
私はステップ台を探すのをあきらめ、本を右手に持ち、踵を上げられだけ上げて背伸びをする。本の角がなんとか本棚の端にかかったが、そこから本を奥へと押し込むことができない。本を落とさないようにしながら、人差し指で本を奥へ押し込もうとするが、上手くいかない。
その時、後ろからふっと人の気配がして、私の持ち上げている本に、誰かの手が伸びた。
「その本をしまいたいの?」と、私の耳元でキアランの声がする。甘くささやかれているような声だった。あるはずのない甘い吐息を私の耳が感じとり、腰が砕けそうになる。
私は驚き、首だけで振り返ると、キアランの顔が物凄く近かった。あ、え? と私の頭は真っ白になる。そして、上げきった踵と脹脛が限界に達し、私はバランスを失い、重力に従ってキアランの方へと倒れていく。
私が倒れてくると思っていなかったのか、キアランまでドミノ倒しみたいにバランスを崩す。
「危ない。本が……」とキアランは言って、倒れながらキアランは私を彼は抱きしめた。え、なんで抱きしめられちゃうの? なんて一瞬思うが、視界の中に先ほどの本が宙を舞っているのが見えた。私を守ろうとしてくれたのだろう。
私とキアランはそのまま床へもつれる様に倒れた。なんか私が押し倒してしまったような体勢となった。そして、キアランと私の顔が近すぎると思い、顔を離そうとしてら頭上から本が落ちてくる。本の衝撃を受けた私の頭は、キアランの顔へと接近した。そして、接触してはいけないところが接触してしまった。
「……」
「……」
「本で頭打ったようだけど、大丈夫?」
「あ、大丈夫です。あ、それに、ご、ごめんなさい」
「あ、いや。それはね。とりあえず、起きようか?」とキアランは言った。
「あ、そうよね。ごめんなさい」と私は起き上り、そして、キアランに手を差し出す。
「ありがとう」と言ってキアランは颯爽と立ち上がり、ズボンの汚れを払う。
「……」
「……」
なんとも言えない気まずい空気。
「あの御二人方? お邪魔して悪いのだけれど、本は全部元の位置に返し終わったわ」と、デイジー・エステバンが言った。
私はハッとする。あ、もしかして、キスしちゃった所、見られてしまった? これはさすがに不味い、ヤバい。
「あ、え、デイジー・エステバンさん。さっきのは事故です。ただの事故なんです。私の身長が低くって、それで、えっと、それで…… その……」と私は大慌てで事の次第を説明する。
「申し訳ないけど、貴女はどなた? 私は貴女に名乗った覚えはなくてよ。それに…… ここは図書館なのだから、静粛にすべきじゃなくて?」とデイジー・エステバンは言う。
し、しまった。そうだ。自己紹介されてないや。勝手に名前を言ってしまった。大失態だって、それに物凄く怒っているわ。あ、でもそれはそうよね、ライバルキャラの前で、攻略対象とキスなんてしたら、それは怒るわよね。私の学園生活、終わったぁ。
「すみません。私、これで失礼します」と私は、その場から逃げ去った。図書館を走ってはいけなかったと後から気づくほど私は慌てていた。
そして私は、図書館を出た後、まっすぐ馬車のところへ帰り、そのまま屋敷へと逃げ帰った……。




