平凡な毎日が終わった日
魔法といいつつ魔法がさっぱり出てきません。
ジャンルはコメディーになりますので、ファンタジーと思われた方は申し訳ありません。
「陸、誕生日おめでとう」
「りっちゃん、お誕生日おめでとう」
家族に祝いの言葉を受けながら、ありがとうと答えると、
両親がこれはプレゼントだよと小さな箱を渡してくれた。
開けてみるとそこには某ブランドの腕時計が。
そこまで高いものでもないが、陸上をしている俺としてはとても嬉しい贈り物だった。
ストップウォッチもついているので、これで自主練をしていてもタイムが計れるのは大助かりだ。
「もう陸も高校生か、早いもんだな」
隣で一際大きなケーキを口に運んでいる圭一兄さんがオッサン臭い事を言い出す。
「兄さんずいぶんおっさん臭いね、年だって俺と3つしか離れてないじゃないか」
「お前、華の大学生に向かっておっさん臭いとは何だ、おっさん臭いとは!」
「・・・そもそも華の大学生って古いし、それに女性に使う言葉じゃないの?」
「ほほう、お前はそんなにもこのプレゼントが欲しくない様だな」
そう言って一枚のCDを取り出す兄に動きを止めてしまう。
「申し訳ありませんでした、お兄様。ぴっちぴちの華の大学生でございます。」
「良かろう、ならばくれてやろう。」
偉そうな態度の兄から受け取るのは洋楽のCD。
CDとはいえ中学までは小遣い制で高校入学したてであり、
それにまだバイトもしたことが無い俺には買うのに躊躇う物だった。
「ありがとう、これファンだったから嬉しいよ」
素直にお礼を言い、自分もケーキと紅茶を食べる。
毎年こうやって家族で祝う誕生日を過ごしていると今日はひとつ違った。
「さて、陸には実はもうひとつ渡したい物があるんだ。」
いつもの穏やかな誕生日会と違って、急に真面目な顔で父さんが少し大きめな箱を出してくる。
そこにはプレゼントを贈るという雰囲気ではなく、少し緊張した空気が漂ってた。
そもそもプレゼントを二つもらうということに疑問に感じながらも、素直にお礼を言いつつ受け取った。
「えーっと、ずいぶん大きいね。何だろう?開けて良い?」
「ああ、まずは見てもらってから話をしよう」
父さんの若干意味のわからない言葉に首を傾げつつも箱を開けていく。
そして現れたのは・・・変身ステッキ。
どこぞの少女アニメにでも出てきそうな形をしているが、
見ると子供のおもちゃと違って妙に出来が良い。
「・・・父さん、これ何の冗談?」
「冗談ではないんだ、まずどこから話をするべきか。」
え?本当に?母さんや兄さんの顔を窺うと、二人ともいたって真面目だ。
「うちの家系は魔法使いなんだ。」