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私の目から見て
父は許すなと、私にそう教えた。
簡単に人を許せば、その人は過ちを犯し続けると私に言った。
しかしそれは、私の目には自分の誇りを保つ為の行いに見えた。
母は許せと、私にそう教えた。
人はお前もそうであるように過ちを犯すものだから、寛容であれと。
しかしそれも、己の何がしかを守るための方便に聞こえた。
許せないことがあるなら、許さなければいい。
許したいと思える相手なら、許そう。
そう私は思ったが、その答えは彼らを納得させるに足るものではなかったらしい。
その日は、自分の愚かな性分の所為で眠れずにいた。
それからしばらくして、どうも父母がつまらぬことで喧嘩を始めた。
しまいには、母の機嫌を損ねると夕食の質が落ちることを知っている父が頭を下げた。
母は、父の前に焦げた鰯だけを並べた。
許すべきか、許さざるべきか。
この命題には未だ答えられないが、少なくとも矛盾はここにあった。
適当に生きることだけは学べた。