雨、傘、水玉。
あなたと出会ったのは雨の日の地下鉄
突然の夕立ちに戸惑う八月
雨具なんてもちろん持って来てなくて
途方に暮れてた気分は最悪
もしよければと差し出された赤い傘
顔をあげれば漂う微かな香りが
僕を包み視線の先には温かい眼差し
心を揺さぶる これは一夏のまやかし?
受け取った傘に写る水玉模様
それはまるで満たされない心のよう
埋めきれない穴は不満となって
この世に放たれることもなく僕の中で死んでゆく
そんな世の中の不条理が大嫌いで
今日も死ねなかったと後悔する駅のホーム
灯りのない人生に一筋の光
優しさで溢れてるあなたとの出会い…
この出会いが広い世界にどう影響するかなんて
分からないけれど確かに僕に勇気をくれたんだ
この出会いに何の意味が?
この出会いはどうして起きた?
そんなことどうでも良いんだ
ただ僕に生きる勇気をくれた
次の日は晴れてその次も晴れ
いつになってもあなたは現れず
爽やかな風と眩しいほどの日差しが
陽炎を揺らし眩暈がするほどギラギラ
もう会えないのかな、いやそんなことないと口ごたえ
きっといつか 儚い願いで言い逃れ
毎日毎日水玉の傘を刺し
来る日も来る日も結局"また来ない"
蝉の鳴く声が変わり傘を刺したまんま
麦わら帽子もいらない風鈴の音が心地よい晩夏
いきなり降り出した雨はあなたのことを思い出させ
僕の心をそこはかとなくノスタルジックにさせる
足は自然とまたあの地下鉄に向かい
後ろ姿で分かるあなたに胸がいっぱい
もしよろしければと差し出す傘に
戸惑いながらも受け取る また漂う微かな香り…