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転生社畜のスローライフできない異世界TS王女生活〜タスクを処理しても処理しても無限に湧き出す特大案件! 俺を国難解決マシーンにしないでくれ!!〜  作者: RCAS
ガレリア動乱

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第二十四話:一皮剥けた男と、王の決断、そしてデスマーチ

 ルビコン領の素朴な教会。その奥にある控室(寝室)での、あまりにも強引かつ無茶苦茶な『既成事実作り』は、無事に完了した。


 最初は「ええ!? 今から!? ギュンターが見てる前で!?」と顔を真っ赤にしてパニックに陥り、涙目で抵抗していたエドワードだったが、途中からどうやら腹を括ったらしい。完全にスイッチが切り替わり、後半は大いに割り切ってその状況を楽しんでいたようだった。

 事を終えて部屋から出てきた十四歳の皇子は、憑き物が落ちたような爽やかな笑みを浮かべ、完全に『一皮剥けた男の顔』になっていた。ただの剣術バカが、妙な大物感と適応力を見せつけている。


 ちなみに、帝国の古参派閥に一切の難癖をつけさせないための『処女の証明』も完璧にこなした。

 立会人として無理やり引っ張り込んだギュンターが「しょ、処女の証明など、私にはわかりませぬ!」と激しく狼狽したので、「分からないなら、分かる人を呼んできなさい!」と怒鳴りつけ、任地に同行していたギュンターの妻を大急ぎで連れて来させて、厳密な確認作業を行わせたのだ。

 真っ昼間から夫婦揃って王族の初夜の証明をさせられたギュンター夫妻は、今も部屋の隅で遠い目をして灰になっている。申し訳ないとは思うが、これも稟議(大義名分)を通すための必要経費である。


「よし、これで帝国が介入する大義名分は完璧ね!」


 俺はドレスを着直すなり、感傷に浸っているエドワードの尻を容赦なく蹴り飛ばした。


「痛っ!? 何するんだよルシエル姉!」

「さっさと帝国本国へ戻って、援軍を引っ張ってきなさい! わたくしと正式に結婚したのだから、必ず帝国の軍は動くわ! そのためにも、わたくしたちは一刻も早く戦端を開いて前線を押し上げておく必要があるの!」

「わ、わかったよ! 任せておけ!」


 俺は頼もしい顔つきになった夫(仮から正式に昇格)を帝国へと走らせると、拉致した大司教を馬車に回収し、自らも超特急でエルネア王都へととんぼ返りした。


「――というわけで、エドワード殿下と結婚してきましたわ! これで帝国からの援軍は確実です! 援軍が到着する前に、ただちに戦端を開きなさい!」


 王宮に到着するなり軍議の間に駆け込み、そう高らかに宣言した俺に対し。

 クラウス大佐や王国軍の幹部、そして宰相ボルマンたちは、完全に思考を停止させ、冷や汗を流しながら凍りついていた。

 大司教を拉致し、ルビコン領で電撃略式結婚を挙げ、真っ昼間に帝国の将軍夫妻を立会人にして初夜を済ませ、帝国を戦争に巻き込む。

 その常軌を逸したスピード感と、倫理も慣例もかなぐり捨てた無茶苦茶な手法に、百戦錬磨の軍人たちですらドン引きしているのだ。


 だが、その凍りついた空気の中で、ただ一人。

 上座に座る弟のアルフだけが、極めて冷静だった。


 彼はゆっくりと立ち上がると、姉を案じる『弟』の顔を完全に消し去り、エルネア国王としての威厳ある冷徹な顔つきで、俺を真っ直ぐに見据えた。


「……必要であるから、そこまでしたというわけですね? 姉上。……いや、ルシエル」


 その真摯な問いかけに、俺もまた『アカ絶対殺す』という狂乱の熱をスッと収めた。

 姿勢を正し、王族としての、そして国を背負う臣下としての本気の顔つきになる。


「はい、国王陛下。ガレリアの地に蔓延るあの忌まわしき毒の浄化こそ、我が国の至上命題。この命を捧げてでも、成し遂げなければなりませぬ」


 俺の言葉に嘘や誇張は一切ない。

 軍議の間に、周囲の将官たちが息をするのすらためらうような、王族特有の重く張り詰めた空気が流れる。

 俺の退路を断った覚悟を受け取ったアルフは、静かに目を伏せ、そしてゆっくりと口を開いた。


「姉上がそこまで『アカ』とやらを恐れる理由が、僕には分からない。……けれど、そこまでの覚悟があるというのなら――」


 アルフの強い眼差しが、俺を射抜く。それは紛れもない、姉への絶対の信頼だった。


「承認します。事ここに至っては、国の全霊を懸けて当たるべきでしょう。……余も、親征として自ら軍を率いて出撃する」


 国王自らの出陣宣言。

 それは、この戦争がエルネア王国の総力を挙げた、国家の存亡を懸けた戦いになることを意味していた。


「し、親征……!?」


 張り詰めた空気を破ったのは、宰相ボルマンの絶望に満ちた悲鳴だった。


「ル、ルシエル殿下の無茶苦茶な結婚の事後処理だけでも限界なのに、国王陛下の出陣準備まで同時進行!? ま、まったく準備期間の猶予がありませんぞ! む、無理です、過労で死んでしまいます!」


 顔面を蒼白にし、頭を抱えてガタガタと震え出すボルマン。

 だが、俺は極上の微笑みを浮かべ――前世の、いかなる言い訳も許さない敏腕プロジェクトマネージャーの顔で、彼の肩をガシッと掴んだ。


「大丈夫ですわ、ボルマン。わたくしも全力であなたを手伝いますから」

「ヒッ……!」

「さあ、一秒の無駄もなく、完璧なスケジュールで作業を回しますわよ。あなたには死ぬ気で、いえ、死んでも働いていただきますわ」


 圧倒的な実務能力と前世の社畜スキルを持つ俺が直接介入したことで、ボルマンの逃げ道は完全に絶たれた。

 こうして、エルネア王宮の中枢は『言い訳』も『サボり』も一切許されない、有無を言わさぬ完璧なデスマーチへと突入していくのだった。

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