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転生社畜のスローライフできない異世界TS王女生活〜タスクを処理しても処理しても無限に湧き出す特大案件! 俺を国難解決マシーンにしないでくれ!!〜  作者: RCAS
ガレリア動乱

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第二十二話:猛烈プレゼンと、金満宰相のささやかな抗議


 普段の俺は、何事も優雅に、そしていかに自分の労力を削って「定時退社スローライフ」へ持ち込むかを最優先に行動する、省エネ主義の王女である。

 だが、今回ばかりは話が別だ。相手が王制を否定する反乱軍だからではない。連中の思想が、前世の祖父の魂から受け継いだトラウマ――忌まわしき『アカ』だからだ。


 軍議の間でオーク材の円卓を粉砕した後、自室に戻った俺は一人で色々と情報を整理し、今後の対応策を練っていた。だが、どうシミュレーションを重ねても、あの危険な思想を野放しにしておくわけにはいかない。結論は一つ、完全に殲滅するしかない。

 そう決意を固めた俺は、同日の夜半、王宮にある宰相ボルマンの私室へと単身乗り込んだ。


「ルシエル殿下!? 夜分遅くにいかがなさいましたか、そのような恐ろしい形相で……」


 深夜だというのに執務机で山積みの書類と格闘していたボルマンが、バンッと乱暴に開かれた扉と俺の姿を見て、びくっと肩を跳ねさせた。俺は彼の机の上に、東部国境とガレリア王国の地図を力強く叩きつけた。


「ボルマン。ガレリアを落とした連中に対し、我が国から先制攻撃を仕掛けます。今すぐ戦費と兵站の予算を組みなさい」

「せ、先制攻撃!? なにを仰いますか! 相手は一国を落とした勢力ですよ。まずは国境線を固め、帝国の出方を窺うのが定石というものでは……」

「悠長なことを言っている暇はありませんわ! 連中の掲げる『お題目』が、どれほど致命的な劇毒か分かっていないのですか!」


 俺は前のめりになり、ボルマンの目を真っ直ぐに見据えて、あの狂った思想が辿るであろう『歴史的必然』を語り始めた。


「彼らは『国家が全ての生産手段を掌握し、平等に分配する』と言いましたわね。それはつまり、国家のトップに立つ一部の官僚機構が、富と食料を完全に独占するということです。平等という美辞麗句の裏で強烈な独裁が敷かれ、配給権を握られた民は逆らうことすらできなくなる。モチベーションを失った農地や工場は生産性を著しく落とし、やがて国中が飢餓に覆われるわ」

「……し、しかし、彼らもそこまで愚かでは……」

「いいえ、必ずそうなるのよ! 経済が破綻すれば、彼らは自分たちの失政を隠すために『反革命分子』という架空の敵を作り出し、密告を奨励し、身内での凄惨な粛清(殺し合い)を始める。そうして国を完全な地獄へと変えた後、その毒を他国へ広げるために必ず外へ侵略してくるわ!」


 俺の異常なまでの熱量と、あまりにも具体的すぎる『地獄のロードマップ』の提示に、ボルマンはゴクリと生唾を飲み込んだ。


「まさか、そこまで……。ですが、神算鬼謀のルシエル殿下がそこまで断言なされるのであれば……ウーム」

「ウーム、と悩んでいる場合じゃありませんわ! ボルマン、あなたの治める領地は東部国境沿いでしょうが! アカの毒が領民に回り、手遅れになる前に、火元を完全に滅ぼすしかないのよ!」

「ひっ! わ、私の領地が!?」

「ええ! もし万が一、あの毒があなたの領地に蔓延したら、領民は暴徒と化し、真っ先に領主であるあなたの館に火を放って首を刎ねるわよ! だからやるの! 大丈夫、ケツ持ち(事後処理と国際的な責任)は全部エドワード経由で帝国にやらせるから!」


 俺のドス黒い脅しと、ヤクザ顔負けの丸投げプラン(ケツ持ちは帝国)に、ボルマンの顔色が土気色に変わる。そこへ、俺はすかさず彼にとって最大の「ニンジン」をぶら下げた。


「ガレリアを制圧した暁には、あの豊かな土地の管理は宰相であるあなたに一任します。いいこと? あの真っ赤な連中に国土を汚染されて民が餓死するくらいなら、あなたのような金満の悪徳領主に支配されて、重税を搾り取られる方が、まだ百倍マシな世界ですわ!!」


 俺がバンッと机を叩いてそう言い放つと、縮み上がっていたボルマンは、なぜかひどく心外そうな、不満たらたらといった顔つきになった。


「……えーと。ルシエル殿下」

「何よ、まだ不満があるの?」

「いえ、大変申し上げにくいのですが……。私、過去は確かに私腹を肥やすためにやり過ぎておりました。ですが、五年前に殿下に諭されてからは深く反省し、今は民の生活向上を本気で考えております。微力ながら善政を敷いている自負もございますし、領民からも名君として讃えられておりまして……その、悪徳領主というのは、いささか心外と言いますか……」


 もじもじしながら、上司に評価の訂正を求める部下のような顔をするボルマン。

 ……あ、そういえばそうだった。

 こいつ、五年前に俺が社畜仕込みの論理で詰めて以降、すっかり改心して優秀なインフラ整備・内政特化型の宰相にクラスチェンジしていたんだった。


「…………」

「…………殿下?」

「……なら、その善政を! 奪い取ったガレリアの地に布けばいいでしょうが!! やれるわね!?」


 俺は自らの暴言(過去の評価)を力技で有耶無耶にし、ものすごい剣幕で彼に詰め寄った。

 あまりの俺の押せ押せな気迫に、ボルマンは完全に気圧され、居住いを正した。


「は、はいぃっ!! 仰る通り、我々でガレリアの民を救済(吸収合併)いたしましょう! ただちに戦費の調達と、兵站の構築に取り掛かります!!」


 よし、言質は取った。

 これで「財務と内政(予算)」のクリアランスは確保した。あとは武力だ。


「よろしい! 宰相の許可は下りましたわ! 次は軍よ!!」


 俺はドレスの裾を翻し、普段の優雅さなど微塵も感じさせない猛烈な足取りでボルマンの部屋を後にした。

 待っていろ、アカの首魁。

 俺のこの「定時退社」への執念と、祖父から受け継いだ反共の魂が、貴様らの組織を物理的に粉砕してやる。

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