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ヴォイドの呼び声  作者: 昔は良かったと口癖になり始めた人向け


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7

ささやかな時の後……。

「あら、もういなくなってるかと思ってた」

「お前に聞きたい事があってな」

「はは~ん♪。当ててあげましょうか?」人差し指を軽く立てるマーラ。

「いや、いい」

「実は小心者で臆病とかね。実はここで縮こまってたとか」

「このにおいだ」

空間の吐息を吸い込むマーラ。確かにじめっとしてるわよね。

「遺跡の出口の方で、何者かが待ち構えている。それと真新しい血のにおいもな」

「だったらにおいを辿れば出れたんじゃ…。血ですって!?」マーラは急いで来た道を戻っていく。

言葉が思考に追いつかず、言葉の断片だけを宙に舞いつかせる。魂の置き場所を忘れ、時の怪物に追われているかのようだ。見込み違いか「行くぞ」

「はい」

マーラの後を追い、出口へ向かう。

「次、曲がります♪」

通路の角を曲がる「楽しいのか?」

「ンフ♪ はい! その、自分でもよく分からないんですけど、何だか急に気分がふわふわとしてきて」

「漂う死霊魔力を吸い込んだからだろう」

「そうなんですか! ンフフ♪ でも身も蓋もないですね」


前方の地面にしゃがみ込んでいるマーラが見えてくる。側には2つの死体が横たわっていら。

マーラは目を瞑り、胸の前で手を合わせ祈っているようだ。側まで着く。

「ヴォイドよ。どうかこの者達の魂を導きたまえ。ウルカヌスよ。献身なる信仰者の魂を救いたまえ」

「これはマーラ司祭。どうなさった?」振り向き睨みつけてくるマーラ「友人が殺されたのよ。茶化さないでくれる」

「死は始まりに過ぎない。見掛けより信心深いんだな」

死は始まりに過ぎない? そんなこと信じてるなんて、あなたこそ見掛けより信心深いのね。じゃあ、今すぐ死んでその始まりとやらを見せて。って、ああ、もうあなた死んでたわね。

ハッハッハッ、面白い奴だ気に入った。

「こうしてるのは、2人が信心深かったからってだけよ」

「殺した連中に心当たりは?」

どう見ても殉教騎士でしょ。この傷と、頭を潰しているからすぐ分かる。わざわざね。彼らを始末したら、墓石に無駄な努力をした人って彫っておこうかしら。

「ほお、会話の阻止か。その連中にも多少の知識はあるようだな」

「ええ、悲しいけどね」

「こいつらは親しかったのか?」立ち上がるマーラ。

「済んだ。さっさと火葬して行きましょ」

「死の経験が少ないんだな」

「そりゃ、あなたに比べたらね。だから何だっていうの?」

「マーラ…」悲しい声で囁くイエナ。

生は素晴らしいものだ 最後には必ず終わるのだから。

その口、閉じれないなら、私が閉じあげましょうか?

「そこをどけ」ドワーフの死体に近づく。

「何する気?」

「戦力がいる」手を構える。

立ち塞がるマーラ。「ダメよ。ダメ!」

「なぜだ? もう魂はない。こいつらはただの肉の器だ。それにこいつらを殺した連中が待ち構えているんだぞ」

「そんなことあなたに言われなくてもわかってる。アンデッドのあなたには分からないでしょうけど、私たちには弔いが必要なの。死霊術は使わせない」

「あ〜あ! なぜお前達ブラックハンドが、その騎士連中に追い詰められているのか分かる気がするな」

「フンッ、何も知らない癖に、偉そうにしやがって!」

勢いよく迫り、睨み付けてくるマーラ。同時にスケルトン達が一斉にマーラに剣を向ける。片手を開き、下に2度振る。スケルトン達が剣を下げる。

離れ、興奮気味に息を切らしているマーラ。

「落ち着け。俺は敵じゃない」

「味方でもない。ここで怯えて隠れていたあんたなんかに、一体なにが分かるっていうの?」

「少なくとも、お前よりは冷静な判断ができている。それに後をつけられたのはお前の失態だぞ。おかげでこっちは巻き添えだ」

「その口を閉じないと、リッヂごとき始末できなくもないのよ。ハッタリじゃーないわ」腰に差してある短剣に手を置くマーラ。

「嘘じゃなさそうだな。見事な短剣だ。だが周りを見ろ。お前だって無傷じゃ済まない。それにお前の友人を殺したのは俺じゃあない。こんな事をして喜ぶのは、その騎士連中だ。奴らを喜ばせたいのか?」

時が停止したかのよう微かな瞬きさえも許さず、俺を睨み付けたまま微動だにしないマーラ「…………クッ!」一瞬にして張り詰めた空気は、不機嫌を物語るマーラの不満げな表情を消し、マーラが距離を取る事で過ぎ去った「冷静っていうのは嘘じゃなさそうね。はんっ、負けた、負けた。口が上手い奴は大嫌いよ」

蜘蛛の足を両手で掴み、身を隠していたイエナ。イエナが静かに歩み寄ってくる。

「き、緊張しました……」

「なぜだ?」

「私はその……まだ戦う覚悟ができていなくて…」

「覚悟を決めるんだな。戦いの鼓動が時を刻み始めているんだぞ」

「待って下さい。その騎士の人たちには勝てるのですか?」

「素性の分からない相手に、優位も劣位もクソもない。だが運命がどちらに向うとも覚悟は必要だ。世界は常に血で浄化を求めているからな」

「分かりました…。その、あなたがいても、勝てるかどうかは分からないのですか?」

「それを確かめに行くんだろう。まあ、最後の演舞の始まりになるかもしれんがな。ハッハッハッ。

「…………」静かに俯くイエナ。

「迷いは捨て、選択をしろ。猶予はないぞ。決断の時だ」

「はい…」イエナの魂の鼓動は短く、不安定なリズムを刻んでいる。


弔っているマーラの元へ行く。

仰向けにし、ドワーフの両手を腹に揃え、目蓋を閉じさせている。

「心の整理とやらはついたのか?」

「まったく。寿命なんか無い癖に、私より生き急いでいるんだから」マーラは短く息を吸い込み、それをため息の代わりに、周囲の空気を押し出すように吐き出した。焦燥の火がマーラの瞳に宿っている。何か別の方法、あるんじゃない?

お前が生き急ぐ必要がなければ、探すのを手伝ってやる。

笑える。

その騎士連中の実力はどれほどのものなんだ?

「連中は一応アンデッド狩りの専門家よ。こっちの手の内は簡単に読まれてしまう可能性が高いわね」

「程度によるだろう。だがどうもお前の話は信用ならんな。奴らは何か対策を講じているのか?」

「それはお互い様でしょ。そうね、まあ…もちよ。ムカつくほどにね。殉教騎士は全員、スケルトンの大群を一瞬で塵にできる力を訓練で得ているんだから」

「アンデッド退散か」

「そっ。おかげで下級アンデッドはまったく役に立たない。あなたが大切そうに連れている連中とか、一瞬で塵ね。まっ、ブラックハンドはそれでごっそり戦力を削られたみたいだけど」

「まるで他人事だな」

「そ、そんな事ないわ。追い詰められてるから情緒不安定なだけ。察してよね」

「他には?」

「そうね~。全身、対死霊魔法用の装備を着込んでいるとか」

「連中に随分と詳しいんだな。ただの間抜けな探検家ではないんだな」

「ええ、そうよ」

「お前達は少しでも抵抗したのか?」

「フッ、向こうは湯水のように金を注ぎ込めるのよ。でもこっちは? お察し。皮肉屋で偉大なリッヂなら分かるでしょ」

「お前を追っている奴は何人だ?」

「あんたヴァカなの? そんなの分かるわけないじゃん」

「よく考えろ。長年追われているのなら、大体の見当はぐらいはつくだろう?」

「偉そうに」頭をひねるマーラ「ここはドワーフ領だから、大勢は無理でしょうね。でも敵地だから生半可な部隊ではないはずだし…」

「ふむ」

「そんな目で見ないでよね。仕方ないでしょ」

「少数精鋭か?」

「そうなんじゃない」

「大体何人だ?」

「多くて4人ぐらいかな」

「4人か。それなら何とかなるかもな」

「それ以上いたらどうすんの?」

「何とかするさ」

「心つよ〜い。あなたは強いスケルトンとかじゃなくて、本物のリッヂなんでしょ? 何か凄い死のパワーとかで、連中をどうにかできないわけ?」

「その騎士連中が幅を利かせている以上、リッヂなんて取るに足らない存在なんだろう。誇大な気がしてならないがな」

「それは、まあそうだろうけど。んんっ、文献ではもっとこう、偉大に見えたから。ヴォイドの加護を受けているらしいし」

「何にせよ、戦力が必要だ」

「つまり私の友人の遺体を差し出せって事よね」

「俺達が無事ここを出るには、それしかない」

「でも2人はヴォイドの信仰者じゃない。2人がウルカヌスに恨まれる事になる」

「ウルカヌスに恨まれるのは2人じゃなく俺達だろう。それにウルカヌスはドワーフには寛大だ」

「…………分かった。まったく。どうぞ。リッヂは皆、口が上手いわけ?」

「無駄に長生きしているからな。それともお前がやるか?」

「あなたの方が私より精通してるでしょ。いいから早く済ませてよ」

地面に横たわるドワーフにヴォイドの囁きを放つ。

あぁ、やはりこの感覚は最高だな。しかし蜘蛛の時よりは満たされん。

槌を装備していたドワーフの体が大きく膨れ上がり、地面に手をつき、ゆっくりと起き上がる。

そのまま血肉が混ざり合った液体がドワーフを包み込み、その後すぐに流れ落ちた。

「デュラハン…」

ふむ、知っているのか。

ったり前でしょ。

こっちはモートか。グールよりは使えるな。

「にしてもゼン…」マーラは片膝をつき。モートの顔を手で優しく撫でる。

「こんなに素敵な体にされちゃって、でも見た目は少し吸血鬼みたいね」

ネクロマンサーの集団にいた奴だ。道徳心などこんなものだろう。

「気に入ったか?」

「ええ。まあ。アンデッドを生み出す光景なんて…。私ならやっぱりリッヂになりたいかな」

「騎士連中のせいで、リッヂも長居はできなくなったのにか?」

「それでもね。それよりも中級アンデッドが2体増えたところで、戦況が変わるとは思えないけど」

「お前が奴らを読み違えている可能性もあるんだ。それに本来死霊術というのは、対象の生命、魔力。そして他の魔法同様、術者の練度、信仰心に左右される。そんな単純で明確な基準など存在しないんだ」

「ごめん。なにか言った?

行くぞ。

つまりあなたの生み出すアンデッドは強いって意味なの?

「それを早く確かめたいんだ」

「オッケー」

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