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ヴォイドの呼び声  作者: 昔は良かったと口癖になり始めた人向け


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4

好きずきも大概にしないとな。こんなものを食うとは。まさか知らずに飲み込んだとはあるまい。

人差し指と親指で硬貨を持つ。

見た事のない硬貨だな。硬貨の記憶は生きているが一致する物はない。

外の世界は随分と流れてしまったようだ。今更驚くべき事でもないが。


次は…ゴブリンか。

ゴブリンの顎を持ち、こちらに顔を向ける。

なんだこれは。額に妙な烙印の跡があった。それも精巧だ。あまり良い予感はしないな。


こっちはリザードマン、いやエルフか。

洒落た指輪をしているな。指輪を拾う。


最後はレッドキャップ。

こいつを現状従属にできれば、多少良い戦力になるんだがな。


少し後……。


結局、イエナ以外はすべて塵になってしまった。あいつは特殊なのか。少し出自が気になるな。他のはもうやるまでもないだろう。墓場から掘り出してきた方がまだマシだろう。

まったくこんなものじゃ、まともなのは生み出せそうにないな。先行きはどうも不安だ。

「イエナ、装備はあったか?」

「沢山ありました」

「そうなのか?」いきなり期待を裏切ってくれるな。装備の山を眺める「確かに数はあるが……どれも状態が悪く錆びていているな。革や布もボロボロ。あまり役に立ちそうではないな」

「そうですね……」

まあまあな状態の革の装備が丁度一式ある。まあこの中では上等な方だ。

古びた革装備一式を身につける。

着心地は悪いが、風が骨の隙間を抜けない分、多少は落ち着くな。

「ほら」状態がマシな剣をスケルトン達に投げ渡す。首までの泥が胸までの泥ぐらいにはなるだろう。錆びた剣を掲げる「これはすぐに折れそうだな」

掲げると同時に中心から折れた。楽しませてくれる。


スケルトン達が状態がマシな剣や盾を装備していく。

「あの…私はどうすれば?」

「戦いの経験はあるのか?」

マシの中のマシな剣を腰へ差す。

「す、少しならあります」

「生前はどうしていたんだ?」

「弓で狩りを」

「ほお〜」

「あ、あの…」

「残念だがここに弓はない」

「他の経験は……まったくないです」

「いいか、お前はアンデッドのマミーだ。毒系統の魔法が使えるはずだ。試しにやってみろ」

「はい…」両手を開き前方に突き出すイエナ「ん、んっ!」

「違う。手に魔力を集中させ、力を込めるようにするんだ。それと、落ち着いてやれ」

「はい」

イエナの手が緑色に光る。

「いいぞ。意外と飲み込みが早いじゃないか」

小さな黄色い毒液が放射状に飛び、スケルトンの背に当たる。

両手で口を押さえるイエナ

「ご、ごめんなさい」

「飲み込みが早くて良い」

「でも当たっちゃいました」

「アンデッドには毒は効かないんだ。寧ろ活力を再生させる」

「そ、そうだったんですか」安堵からか少し笑みが溢れるイエナ。

これは生前心得があったな。蘇ったばかりで記憶があやふなだけかもしれん。

「あ、あの…。これが繭の中に残っていました」

イエナから古びた羊皮紙を受け取る。


──色褪せた羊皮紙。

今の僕は筆を執る指が震え、言葉さえ喉に突き刺さるようだ。こんな結末で君を裏切ること、どうか、どうか許してほしい。 僕の魂は、あの日からずっと君の傍らにあった。どんな時も君を愛する情熱だけが僕の命を繋いでいた。それはウェヌスに誓って本当だ。だ。

けれど兄の急逝という冷酷な運命が僕の行く手を阻んでしまった。家門という重い鎖が僕を縛り、もはや僕自身の意思で歩むことは許されなくなった。分かってくれとは言わない、ただ、抗えぬ運命の濁流が僕を君から引き離したことだけを、どうか心の中に留めておいてほしい。

耳に届いているかもしれないが、僕には許嫁が定められた。彼女は清らかな人だ。けれど、僕の心が彼女にときめくことはない。僕の心は、あの日君に預けたままなのだから。君にだけは、最後の瞬間まで偽りのない僕でいたかった。だからこうして僕は本心をすべて君に向けて書いた。

もう君の瞳に映ることは叶わない。卑怯にも手紙という形で別れを告げる僕を蔑んでくれて構わない。 指輪は、どうか冷たい川の底にでも投げ捨ててほしい。僕との記憶ごと、深い淵へ沈めてほしいんだ。

君は光り輝く新しい朝を迎えるべき人だ。

君の故郷ウッドエルフの森は、きっと今も古の美しさを湛えていることだろう。木漏れ陽と、さざめく風の調べが、どうか君の傷ついた心を優しく抱きしめてくれますように。

君の歩む道が、祝福と幸福に満ちたものであることを、遠き空の下からいつまでも祈り続けている。

エリオット。

──


男は運命の鎖に縛られたまま、女はこの世からの解放という道を選んだ。塵にする前に目にしたかったな。

羊皮紙を地面に捨てる。

魂の中で蠢く慈悲の慟哭。この世の汚れを切り裂くために、慈悲をも凌駕する残忍な幼子の影。この壊れた魂の天秤の中で、己の影はただ虚無を求め佇んでいた。

「イエナ、戦闘の際はお前はスケルトン達の後方から魔法で援護しろ」

「分かりました」

スケルトンが剣で壁を叩き合図を送ってくる。

「何かあったんでしょうか?」

「そのようだな」

スケルトンの元まで向かう。

「これは一体何でしょう?」

「ふむ、魔法障壁の跡だ」

焦げ跡のように残る、障壁跡を指でなぞる。

「まだ魔力が残っているのですか?」

「いいや、風化して今や面影だけだ」

跡がこれほど鮮明に残っている。かなり強力な魔法だったようだな。

「スケルトン3、先行しろ。イエナ、俺の後に続け」

「はい」言葉を発するその体は指先がかすかに震えていた。

通路の奥へ進んでいく。

窮屈な通路を抜け出した瞬間、突如として視界に広がる解放感。

天井の高い開けたフロアは足音がかすかに遠くへ響いていく。

「随分と広いですね」

「そうだな」

少しだが見覚えがある。

「これはなんの像ですか?」

「種族や魔物の像だな」

えらく多いな。

スケルトン3がフロアの奥へ進んでいく。

その時、スケルトンの足元に魔法陣が現れ、視界を覆うほどに緑色に輝いた。だが魔法陣はすぐに輝きを失い、消滅していった。

「まだ罠が残っているんでしょうか?」

「そうだな。今のは不発だったが、足元に気をつけた方がいいだろう」

フロアの奥へ向かう。

「ここは何の場所なんでしょうか?」

「恐らく宝物庫だろう」

「でも像以外なにも見当たらないですね」

「誰かに持ち出された後か、それかどこかへ隠されているかだ」

あれは何だ?

台座へ向かう。

台座に巻き付いた蜘蛛の糸を取り払い、積もった塵を念動で払う。

何かの手形が彫られた台座だった。

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