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「墓の魔女がまたやってるらしいよ。見に行かない?」
「怖いから行きたくない」
「弱虫だな〜」
「じゃあ1人で行けば?」
「そ、そんな事しない」
「やっぱ怖いんだ〜」
「怖くない!」
「じゃあ誰が怖がらないか、試そ!」
「え!?」
「いいね! 行こう行こう」
花壇の奥へ消えていく子供達。
歩きながらジャスミンに声を掛ける。
「そのアンデッドのにおいには、いつ気付いたんだ?」
「ん~、詳しくは分からない。でも結構前よ。結構前っていっても、そんな昔って意味じゃないけど」
「他に変わったことはあったか?」
「どうだろう。ケリーの事が心配だったから、他の事はあまり。でもそうね~…、あの時からずっと死霊のにおいを感じるのよね。最初は本当にケリーの呼び掛けにヴォイドが答えたのかと思ったんだけど。にしてもヴォイドも随分と非情よね」
「神に情を求めるのは間違っていると思うが」
「そう? でもいいわよね。祈り続けるだけで、本当に目に見える加護や恩恵を与えてくれるんだから」
「お前はどうなんだ? 信仰している神はいるのか?」
「いるわ。ディアーナよ。彼女の加護は私にとってこの上ない喜びなの。特定の種族に拘る、困った神も結構多いからね」
「確かに。ディアーナの獣の目の恩恵は魔力をあまり持たない者にとっては多大な恩恵だな」
「いいえ。加護の話よ。獣のにおいを嗅ぎ分けられる加護ね」
「そうだな…。今回のアンデッドの件、神が関係がしていると思うか?」
「ンフ! どうだろう。そんな神話みたいな大それた事に私が関われると思わない。運命の三女神を疑う訳じゃないけど、ただの偶然だと思う」
「でもお前の信仰心が際立って強いから、特別な加護なのかもな」
「嬉しいこと言ってくれるじゃない。そうね~。ディアーナの膝の上で撫でられる日も近いかも。んっ、この先みたいね」
ジャスミンが足を止める。
「壁の外か」
高い城壁が目の前に聳え立つ。
「何かまずいの?」
「猫と骨だけじゃ危険だろ」
「まあ、でも貴方はただの骨じゃない」
「そうだな」モートぐらいは呼んでおくか。だが今騒ぎが起きるのは困るな。しかしリスクは仕方ない。
「冗談じゃないなら、まあ待ってもいいけど。待っている間ににおいが消えちゃうかも」
「とにかく先に発生元だけ確認しておこう」
「分かった」
通過できる場所へ向かうジャスミン。
「お前は怖くないのか?」
「忘れたの? 私は女王よ」
「フフ、そうだったな。度胸があるな~。だがよく言うだろう。勇敢さと愚かさは紙一重だと」
「なんだか鼻が急に利かなくなってきたわ」
「女王陛下のお気に召すままに。冗談でも気取った銀猫になった気分だ」
「あら? サムのこと知ってたの?」
「ああ、お前とケリーを待っている間、橋の下で会った」
城壁を抜ける為の潜り路の前には、2人のノーム男の衛兵が立ち塞がり談笑している。
ジャスミンと共に角から覗き、聞き耳を立てる。
「おいもう聞いたか? 例の烙印の話」
「いいや、まだ聞いてない。どうなったんだ?」
1人が潜り路の鉄柵門に背を預け、腕を組みあくびをしている。
「武器庫で帳簿を担当しているジュナから聞いた話なんだが、ジュナが帳簿をつけている時、帰還したレンジャーの話を聞いたんだ」
「ほおほお」
潜り路の鉄柵門にもたれ掛かっていた衛兵が背を離し、興味津々に頷いている。
「レンジャーの話によると、調査隊は全員、額に烙印が刻まれ味方を攻撃してきたって話だ」
「まじかよ。確か調査隊にはエリアスのいとこがいたなよな?」
「ああ、気の毒にな」
「魅了か闇魔法系だと思うか?」
「さあな。そういうのは専門家のウィザード達にしか分からんさ」
「だな。俺もこの街にいる間はウルカヌスに改宗するべきかな? だったら魅了も神の加護で撥ね除けられるだろうし」
「馬鹿か。取っ替え引っ替えの信者なんかに、信仰心なんて宿らないだろう。偵察のドワーフ達を見てみろ。半端な信仰心じゃ守っても貰えない。それにウルカヌスはドワーフにしか恩恵を与えない心の狭~い神さ。やっぱりディアーナだろ」
「あ~あ! そうだな。ディアーナの領域に召されるのなら本望だ。でも万が一だぞ。烙印を受けたとして、意識があったとしたらどうする?」
「どういう意味だ?」
「そのまんまの意味さ。体が勝手に動いて、痛みも感じるとしたら」
「おいおいやめてくれよ。そんな物騒な話。お前はもう上がりだろうが、今日俺は夜勤なんだ。勘弁してくれよ」
「悪い。そうだったな。なにか合図みたいなの決めておいた方が良くないか?」
「やめろって。それにお前の言う通りだとしたら、体がいうこと利かないだろ? どうやって合図を送るって言うんだ?」
「そ、そうか~」
「少しは頭を使…」衛兵と目が合う「お、おいっ! 誰だ!?」
角から出る。
「そこを通ってもいいか? 正門まで行くのが手間でな」
こちらへ身構え、剣を抜く2人の衛兵。「あー、ここはそう、緊急用だ」
「そうそう。封鎖中だ」
「烙印の問題を調べてる。お前達も早く解決して欲しいだろ?」
2人の衛兵が剣を収める。
「なんだ傭兵か」
「それを早く言うんだ傭兵」
「調査している傭兵は多いのか?」
「ああ多いさ。それと報酬もな。てか知ってるだろ」
「そうそう知ってるだろ」
「まあ~帰ってくる奴もいないからな。悲惨だ」
「お前達は随分と似ているな」
「当たり前だろ。こいつは俺の弟だからな」
「そうそう俺の兄だ」
2人は肩を組む。
「じゃあ、通してもらえるか?」
「いいぜ」ノームの兄が地面に設置されたレバーを動かすと、閉まっていた鉄柵門が上へとスライドする「だが気を付けろよ」
「そうそう気を付けろよ」
こちらが通り過ぎると鉄柵門が再び下ろされた。
「街は俺よりも長いだろ? さっきの連中を知っているか?」
「いいえ。でも間抜けは早死にするってのは知ってるわ」




