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「んっ! そ、そうだった」ケリーは手を引っ込め、左手で右手をさすっている「ハァ、ハァ、う、嘘みたい。信じられない! まさか本当に、この目で直接見れる日が来るなんて!」ケリーが笑みを浮かべる「最高!」
「実はな、その猫に…」
「ね、ねえ! ヴォイドに頼まれて来たんでしょ? あなたは私をネクロマンサーにしてくれるの? それともヴォイドの元へ連れて行ってくれたりして、リッヂにしてくれるの? ねえ?」
「その猫に頼まれて…」
片手を開き、こちらに伸ばすケリー「も、もちろん分かってる。あまりに音沙汰がなかったから、信仰心を失いそうになった時も当然あった。けど、でも、今はこうしてヴォイドへの信仰心は揺らいでいない! 今までは私をずっと見極めていたんでしょ? そうでしょ? だからこうやって出向いてくれて、ついに認めてくれた。そう、ヴォイドがあなたを使者として私の元へと寄越してくれた。そうでしょ? 違うの? ねえ? 何か答えて!」
歓喜に酔い、こちらの話が聞こえていないようだ。
「…………」
「ああ…私…何かいけない事言っちゃったかな?」
「少しは落ち着いたか?」
「ご、ごめんなさい。つい興奮しちゃって。でもどうしても話しておかないと気が済まなくなって」
「気持ちは分かる。確かに俺はリッヂだ」
「やっぱり~! 見るからにスケルトンっていう風貌じゃないもんね。ンフフ~」前屈みになって両手をで口を塞ぎ、嬉しさのあまり笑い声を漏らしているケリー。
「さっきのお前の使った魔法は、ヴォイドへの信仰心が大きくなければ扱えない死霊術だ。だからお前の信仰心に疑いの余地はない」
「う~! 最高~! ヴォイドが私に恩恵を与えてくれてるなんて~!」
「恩恵ではないが。それよりも、あの魔法は同時にかなりの死霊魔力が必要になる。お前はどうやって放った?」
「そ、そうだったの? あ~、えっと~……」
言葉を慎重に選んでいるのか、それとも本当に無意識なのか。
「お前からはそれほどの魔力も感じない」
「ま、待って!」腕を伸ばし両手を開いてこちらに向けるケリー「私はまだ12だし、これから魔力ぐらい身に付けてみせる! だから見捨てないで」
「落ち着け。ネクロマンサーには冷静さが必要だ」
「そ、そう…。ふう~」
少し安堵している様子のケリー。
「魔力をさして得ていないにも関わらず、死霊魔力を操り、死霊術を放てたということは他の要因があるということだ」
「他の要因…詳しく教えて」
〘⇄〙
簡素に。
詳細に。
「お前の体内にかなりの死霊魔力が貯蓄している可能性が高い」
「ど、どういう事なの!? どうして!? 一体!?」
「1人しかいないだろう?」
ケリーの目をじっと見つめる。
「まさか…私!?」
ケリーは人差し指で自分の顔を指差す。
「恐らく今まで死霊術は成功していたんだ。だが自身に掛け続けていた。今までは信仰心が足りていなかったから、影響が出ていなかった。しかし死霊魔力は貯蓄し続けた。それと俺の近くにいる事で、体内の死霊魔力が活性化したんだろう。お前のその異常な執着心は死霊術の影響の可能性もあるが」
「し、信じられない…。聞きたいんだけど、その膨張の死霊術って、まともに掛かっていたらどうなってたの?」
「全身が膨れ上がり、そのまま破裂する」
「ああ……」
目を点にし、言葉を失っているケリー。
「これは強力な死霊術の一種だ。悲観せず誇っていい事だ」
「私…ずっとアンデッド作成かと思ってた。わお」
苦笑いを溢すケリー。
「ふむ。あの墓は知り合いだったのか?」
「いいえ。あれは孤児院で私をからかってた子よ。ムカついてたから、アンデッドにでもしてやろうかと思って」片方の口角を上げ、ニヒルな笑みを浮かべるケリー。
「ネクロマンサーの素質がある」
「嬉しい!」
各々の希望があるわけか。
「どうだ? しばらくは死霊術を学ぶだけにして、ちゃんとした知識が身に付くまでは死霊術を控えるというのは」
「分かった。貴方が言うのならそうする。そうする他ない。ヴォイドの使者であるリッヂのあなたに言われたらね~。でも、私はこれからどうすればいいと思う?」
「意思にしろ影響にしろ、ネクロマンサーだからといって、死霊術だけに拘る必要もない。他に興味を持つ術を鍛練するのも良いかもな」
「そうよね! 分かった。他の魔法を身につけながら死霊術の知識をつけて鍛練して、自分なりに答えを探していく。ああ! 良いアドバイスありがとう」
ジャスミンに軽く何度か頷く。
しゃがみ、ジャスミンを撫でるケリー。
「ジャスミン。ありがとう。あなたのおかげでリッヂに会えたようなものよ。本当にありがとう。今日は忙しくなっちゃって遊んであげられないけど、今度必ず遊んであげるから許してね。それじゃあ」
ケリーが嬉しそうにし去っていく。
「流石ね。ありがとう」
「運が良かった」騎士の皮を被る。
ジャスミンが側まで来る。
「それも貴方の実力。もうケリーの体の心配がなくなって、尚且つあの子は自分の道も見つける事ができた。もう一度お礼を言わせて、本当にありがとう」
「あの子はリッヂになるのも、満更ではなかったようだが」
「そうね。ンフフ。あの子も大人になれば、また自分なりに答えを出すでしょ。あの子がちゃんと考えて、望む事なら何でもいい。私はそれを応援したいだけ」
「ふむ」
「さてと!今度は私の番ね。さあついてきて。例の死霊のにおいを辿ってあげる」
「ああ」
においを辿るジャスミンの後をついていく。
種族が行き交う中、少し通りの開けた場所へ、そして緩やかに曲がった道を右へと進んでいく。
道の端、背丈ほどある壁の方には道に沿って青い花が植えられた花壇になっていた。
花壇と道を隔てる壁には子供が数人座り、足を組んで揺らし、他の子供と談笑していた。




