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ヴォイドの呼び声  作者: 昔は良かったと口癖になり始めた人向け


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2/13

2

通路を真っ直ぐ進んでいくと、遠くから剣を弾く音が微かに聞こえてきた。そっと耳を澄ます。

間違いないな。

何者かが争っているのか。音のする方へ向かう。近づくにつれ音は次第に大きくなってくる。想定よりは激しくないな。

ふむ、どうやらこの部屋のようだ。

無料のセキュリティ診断といこう。聳え立つ巨大な入り口。崩壊したドアの残骸の隙間を進み、先へ向かう。

完全に侵入し終える前にそっと中を覗き込む。

ジャイアントスパイダーと複数のスケルトン達が戦っていた。

デカい蜘蛛と骨か。

あの骨を仲間と思うには早計だが、奴らも俺のように目覚めたのか?


スケルトン達は錆びた剣や古びた盾を手に取り、蜘蛛と必死に戦っている。何とも滑稽な骨達だ。見ていて痛々しいな。戦況はあまり良くないか。

蜘蛛が勝つか、骨が勝つか。骨が勝つ方が俺にとっては好都合に転ぶ可能性は高い。

参戦するか。

まあ共闘すれば友情も深まる事だろう。友情などただの依存の始まりに過ぎないが、ここを無事に出るには仕方がない。ああ、なんて最高なんだ。


骨達と共闘すべく蜘蛛の方へ静かに向かう。ふむ、スケルトンには俺が見えている筈だが、こちらを見向きもしないな。仲間と思ってくれているのか、はたまた単に気付いていないだけか。

しかしあの蜘蛛、少し妙だな。

地面に転がる錆びた剣を拾い、蜘蛛へ接近する。

「グハッ!」

蜘蛛の尻から白い糸が突然飛び出し、呆気なく壁へと叩きつけられてしまった。

ええい! 迷惑な全身パックだ。剣で切り裂き地面に着地する。無駄に目が多いわけではないようだな。

避けたつもりだったんだが、思うように体が動かんな。まったく役に立たん骨だ。

この数の骨が相手でも、蜘蛛はこっちに対処する余裕があるようだ。尚更油断はできんな。

痛みは少しあったが、大したダメージではないようだ。思った以上に衝撃が大きかったがな。あの蜘蛛は見かけ以上にパワーがある。


蜘蛛が一体のスケルトンを弾き飛ばし壁に激突させた。

スケルトンは体の骨がバラバラになり、地面に音を立てながら散乱していく。


他のスケルトン達は俺や砕けた骨と違い、比較的、蜘蛛の攻撃を上手く躱して凌いでいるようだ。

戦うスケルトン達を眺める。ふと目に入るスケルトン達の足元に発生していた謎の赤いオーラ。

こちらに最も近いスケルトンの足元にも赤いオーラが出ている。

戦況を見るに、赤いオーラが出ているスケルトンのみが蜘蛛の攻撃を素早く交わし、蜘蛛に一撃を入れていた。

すぐさまスケルトン達の後方へ向かう。すると全てのスケルトン達に同様のオーラが発生した。

俺には他者に何らかの力を与える魔法が備わっているようだ。

血のオーラ。

頭によぎる言葉。不快感だな…。


血のオーラを浴び、攻勢が増したスケルトン達が次々と蜘蛛の腹へ剣を突き刺していく。繰り返される刺突が蜘蛛の敏捷さを削り取っていく。

勢いが増したスケルトン達の攻撃により、突き刺された蜘蛛の腹からは黄色い血が溢れ、地面へ大量に滴り落ちていく。

蜘蛛の攻撃を最小限の動きで回避していくスケルトン達。その体幹は決してブレず、翻弄される蜘蛛はただの操り人形のように映る。

蜘蛛はその後もスケルトン達の攻撃を受け続け、次第に動きが鈍くキレを失っていった。


スケルトン達の猛攻が続き、蜘蛛はとうとう地面に横たわったまま動かなくなってしまった。

蜘蛛が倒れた後も、スケルトン達は容赦なく蜘蛛の体を刺し続けていた。まるで枯れ木に実を求める愚者のように無心に刺し続けている。

既にスケルトンの持つ錆びた剣や彼らの腕は蜘蛛の黄色い血で染まりきっていた。

そして蜘蛛を殺し終えたと感じたスケルトン達が一斉に俺の方を向く。

「おっと。良い戦いだったな」スケルトン達は俺の方を見たまま、沈黙を続け微動だにしない「分かり辛かったとは思うが俺も助力したんだ。その足元のオーラでな」しかしスケルトン達からの返事はない「良かったら互いに協力しないか? ここから出るとして、味方は多い方が良いだろう? 違うか?」スケルトン達がじっと見つめ続けてくる「なんとか言ったらどうなんだ? 舌がなくとも話せるだろう? 俺のように」

「…………」

「話せないのか?」どの骨からも返事はない「本当に俺のように話せないのか? 誰も? 頷くぐらい出来るだろう? おい、どうなんだ?」俺の声だけがフロアへと響いていく「分かった。沈黙が答えなら、俺はもう行かせてもらう。言っておくが、構うのなら容赦はしないぞ」スケルトンらと目を合わせたまま、ゆっくり後退する。その時、スケルトン達が一斉に一歩踏み出しこちらへ近付いてきた「よせよ。無意味な戦いだ。素晴らしい提案とは思えん。互いに傷つき、何も残らない。実に生産的な結果になる。それともお前達は墓穴を掘るのが好きなの? スケルトン達は相変わらずこちらになんのリアクションも起こさない。


まったく、生前から舌がなかった連中なのか。

しかしこちらが一歩、また一歩と下がると、スケルトン達も一歩、また一歩と近付いてくる。

指を差し、人差し指で一体の骨をこちらへ招く。

「お前、その剣を寄越せ」スケルトンは剣を両手で携え俺の前へと差し出してきた。スケルトンから剣を受け取り腰へ携える「お前はローブを」同じくこちらにローブを差し出すスケルトン。


ローブを着た後、スケルトン達に再び命令する「膝まずけ」スケルトン達は一斉にこちらへと膝まずく。

ほお。

これ以上ない愉快な結末。しかしなぜ俺の命令を?

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