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モートが繭を切り開いていく。
地面にフングスの死体が落ちる。
落ちた地面には茶色い血だまりができ広がっていく。
フングスにヴォイドの囁きを放つ。
ヴォイドの囁きをかけると、すぐさまフングスの両目に緑の輝きが宿り、アンデッドになったフングスが起き上がる。
フングスは右足で立ち左足を震わせ、今度は左足で立ち右足を震わせる。
「あ~! 元の姿のまま、ぷっくりキノコで可愛い。少し元より毒々しすぎる色になってるけど」
デスフラワーの傘を触ろうと手を伸ばすマーラ。
「触れない方がいい。生者にとっては危険だぞ」
そっと手を戻し、アンデッドフングスから距離を取るマーラ。
「どれくらい危険なの?」
尾を脚の間へしまうマーラ。
「耐性がなければ、吸い込んだ胞子で内蔵がじわじわ溶けていくだろうな。それから次第に意識を失い……まあそんなところだ」
「なんて恐ろしい子なの」
「そうだな」
手の平を曲げるマーラ。
「生者は私だけ。アンデッドはお気楽でいいわよね。まるで歩く時限爆弾」
「気を付けろよ」
「ねえ、あのキノコに命令する時は事前に私に言ってよね」
「それとなくな。忘れなければきっと」
「本気で言ってよね。生きたまま内臓溶けるなんて冗談じゃない!」
「分かっている。ジョークだ」
マーラが呆れた顔で首を左右に振る
モートが次の繭を切り開く。
こいつは……。
「マーラ、耳を塞げ」
「えっ」
耳を寝かせ、上から手で押さえるマーラ。
「ギャァァァァ!!」
周囲に高音の絶叫が響く。
強烈な音波に驚き、目を点にするマーラ。
絶叫したマンドレイクがこと切れる。
マンドレイクの体は縮小し、干からび萎んでいた。
「捕らえた時、マンドレイクだと知らなかったのか?」
「知らなかった。手当たり次第に捕らえたから。はぁ~、にしてもビックリした」
ヴォイドの囁きを干からびたマンドレイクに放つ。
マンドレイクがキメラへと変化する。
「ソースボムじゃないんだ」
「よく知ってるな。だがソースボムを生み出すには一手間がかかるんだ」
「どういう風に?」
「マンドレイクは死を悟ると、体内にある生命力と魔力を融合させて、今のような音波を放つんだ。それを発生させないようにする必要がある。眠らせたりして、口を塞いだりしてな」
「ふ~ん。ソースボムは手間に見合うの?」
「用途次第だろう」
「死霊術って思ってたより奥が深いのね」
「それを追い求めるのは楽しいだろう?」
「まあね。面白い。ネクロマンサーが少ない今なら特に」
「ふむ。モート次だ」
モートが次の繭を切り開く。
死んだゴブリンの頭が繭からどろりと垂れる。
ゴブリンの顎を掴み、上を向かせ、額を見る。
遺跡で見たのと同様の刻印が額に刻まれていた。
「なにこの変な模様」
「見た事ないのか?」
「うん。ゴブリンはよく戦化粧してるけど、これは何か違うかな」
「ふむ」烙印から覚えのある魔力の痕跡を感じるな「魔法の類いだろう」
「どんな魔法?」
「さあな」
モートが繭の切り口を広げ、ゴブリンの死体が地面に落ちる。
ヴォイドの囁きをゴブリンに放つ。
死霊術をかけるとゴブリンの体は塵と化した。
マーラはしゃがみ込み、ゴブリンの塵を手で掴む「何かに使えるって聞いた事がある」マーラが小指の方から塵を落としていく。
「食ってみろ」
「ンフフ、笑える。錬金材料になるらしいから、一応確保」
「確かに役立つかもな。錬金術に覚えがあるのか?」
「あるけど。大した程じゃない。あなたは?」
「俺もさ。だが強力な魔物なら分かるが、ゴブリンはどうだろうな」
「まあね」
マーラが布袋にゴブリンの塵を入れる。
ゴブリンの塵が入った布袋の底を軽く叩き、笑顔を見せるマーラ。
それとなく相槌を送る。
モートが次の繭を切り開く。
フングスが出てくる。
こいつはさっきの個体と違い、あまり元気がないな。
モートがフングスにとどめをさし、繭を切り開き地面に落とす。
ヴォイドの囁きをフングスに放つ。
アンデッドフングスに変化する。
次で最後か。
これは他よりもでかいな。用心しておかなければ。
「ミート」
ミートを繭の側につかせる
モートに頷き、モートが大きな繭に切り口を入れる。
「グァァァァ!!」
モートが繭を開くと同時に、魔物の咆哮が響き渡る。
鋭利な牙が多数生える大きな口が襲いかかってくる。
ミートが魔物の首を掴み、繭が吊るされていた巨木の幹へと激しく打ち付けた。力任せに打ち付けたミートの力の衝撃で巨木の幹に衝突痕ができた。
大きな口を持つ魔物は、自身の首に押し当てられたミートの手をどかそうと必死にミートの腕を引っ掻いている。
暴れる魔物の手から伸びる鋭利な爪には、ミートの肉とはまた違った真新しい別の獲物の肉が残っていた。
「大丈夫なの!?」
俺の背を押し、背後に隠れているマーラ。
「いいや、大丈夫じゃない。お前のせいで食われかけた」
「リッヂだから大丈夫じゃない?」
「リッヂも無敵じゃない」
「冗談でしょ」
マーラの方を向く。背後ではミートが抵抗する魔物を抑え続けている。
「いいや、正直な話、遺跡の騎士連中に塵にされていた可能性も十分あった」
背後のミートを気にしているマーラ。
「凄く冷静そうに見えるけど」
「そう見えるかもしれんが、いつ虚無に返されるか気が気じゃないんだ」
「凄く冷静そうに見えるけど」
「意外とキテると」
「そんなとこだ」
「オッケー、あ~、真面目な空気って私苦手」口角を上げ、肩を少し竦めるマーラ。
「俺もさ」
魔物の方を向く。
「それにしても、どうしてアリゲーターがこんな深い森のところにいると思う?」
アリゲーターか。太ったリザードンマンかと思ったが。
「近隣の魔物ではないのか?」
「うん。ここら辺じゃいない。沼とか、海とか、そういう感じ?」
「今いる場所は随分と内陸部なんだな」
マーラが軽く何度か頷く。
ミートが両手でアリゲーターの首を掴み、へし折った。
「おっと、大きな林檎」
「良い音だな」ミートの元へ行く「ミート良くやった」
地面に横たわるアリゲーターを眺める。
アリゲーターは腹が異様に肥え、全体的に太っている。
「こんな太ったアリゲーターがいるなんてね」




