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ヴォイドの呼び声  作者: 昔は良かったと口癖になり始めた人向け


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13

再びモートの眼窩がんかに意識を潜り込ませ、死の現場を検分する。そこには、巨大な角を持つメガロケロスを組み伏せ、その頸木くびきに毒牙を深く突き立てた「肥大したバジリスク」がいた。

メガロケロスの片方の角は折れ、バジリスクの毒牙が深く突き刺さっている。

バジリスクにしては肥えてるな。その大きな体は、行き過ぎた美食家が自らの欲望を肉に変えたかのような、醜悪で重厚な肉の塊のよう。

ミートと蜘蛛の中間辺り、種族があまり立ち入らないからか?

モートに監視と牽引をするよう指示を出す。モートがドラゴンに怯まなかったのは良い兆候だ。

「デュラハン、ミート来い。お前達は蜘蛛の側にいろよ」

「オッケー」

とにかく、戦力を増強しなければな。

バジリスクの元へ着く。

既にバジリスクは食事中だ。今回は状態の良い死体が欲しいところだ。

「デュラハン。ミートを囮にし、できるだけ一撃で仕留めろ」

御意。デュラハンのソウルを聞き取る。

「失望させるなよ。さあ行け」

ミートが囮となり、その目なき顔面でバジリスクの石化の視線を虚無へと返す。視線という刃が届かぬ肉塊に対し、バジリスクは苛立ちを募らせ、その長い首を伸ばしてミートの腹部へ貪欲に喰らい付いた。毒液が溢れ、肉が歪む。だが、痛覚という概念なきミートにとっては、ただの重い抱擁に過ぎない。

バジリスクが一旦後退し、長い首をくねらせミートを威嚇し始めた。バジリスクが目を光らせ、ミートに石化を放つ。ミートにはそのままバジリスクを引き付けるよう指示を送る。ミートとバジリスクが睨み合ったまま、一定の距離で間合いを取っている。

その間にバジリスクの後方からデュラハンを忍ばせ回り込ませる。

ミートを石化できないと悟ったのか、バジリスクが瞬時に首を伸ばしミートの腹に再びかぶりついた。

魔物との戦いは知性を消費しないのが利点だな。

ミートはバジリスクのかぶりつきに一切怯むことなく、バジリスクの前腹に強烈なパンチを食らわした。ミートの衝撃ある重いパンチにバジリスクは牙を抜き、悲鳴を上げながら後ずさる。

そしてバジリスクが後ずさる先に待機していたデュラハンが、死角から躍り出、デュラハンの一閃がバジリスクの後頭部から口腔までを串刺しにした。

剣が刺さり、そのままぐったりと全身の力が抜けたバジリスクは動かなくなった。だがすぐさま体を暴れさせ、尾でデュラハンを弾き飛ばした。デュラハンが木に衝突する。悶絶し、尾を振り回して最後の抵抗するバジリスク。暴れるバジリスクの影響で周囲に粉塵が舞う中、突き刺さった顔面部分から毒液が撒き散らされていく。ミートが両手で拳を作り、バジリスクの頭を叩いた。地面に叩きつけられ、完全に動かなくなったバジリスクから剣を抜く。

「良くやった」

「申し訳ありません」

「結果次第だ」

不手際を詫びるデュラハンの背を、軽い手つきで叩いた。

「ミート、お前も従順で良かったぞ」

ミートが拳で自らの胸を叩く。


ここへ来てようやく状態の良い死体が手に入った。やはり死体は新鮮なものに限る。すぐさまヴォイドの囁きをバジリスクに放つ。

八本の足が不自然な角度で地を掴み、修復される肉の音が森に響く。六つの虚ろな瞳が緑色の燐光を宿す。バジリスクの後頭部から上顎を貫いていたデュラハンの一撃の痕は徐々に修復していく。

傍らで、内臓を食い荒らされたメガロケロスもまた、キメラとして再誕し、即座にデュラハンの糧へと還元させた。

今し方思い返せば、蜘蛛の治癒力も見事だった。あの遺跡に長く住まい、朽ちるまで周囲の死体から魔力を吸い付くしていたことになるな。だとすれば、蜘蛛を昇格させておくのも悪くないかもしれない。

それかあえて体内に膨大な魔力を残し、現状の活力を活かすか。戦力が乏しい今は、どちらか最善か……う〜ん、悩ましいな。

「戻るぞ」

蜘蛛の元へ戻ると、マーラとイエナが出迎えた。

マーラは満足げに笑みを浮かべている。

「デュラハン、ミート。周囲を警戒しろ。バジリスク、蜘蛛に挨拶してこい」各々のアンデッドが命令通りに行動する「さてマーラ。聞こうか?」

「シャラ~ン!」

マーラが両手を広げ、舞台の幕を上げる役者のように新たに迎え直す。その傍らには、処刑を待つ罪人のようにかしこまるイエナ。

見上げれば、樹上には揺れるいくつもの繭。

緊張しているのか、隣でかしこまっているイエナ。

「繭?」複数の蜘蛛の繭が木の枝から吊り下げられている。

「そっ! イエナのアイディアで、待っている間、魔物を捕えておいたの。私とその蜘蛛ちゃんは手伝っただけ」

「ほお」

繭が動いている。

「生きたまま捕らえたのよ。ね?」

「はい」

「イエナ、良いアイディアだな。良くやった」

「ありがとうございます。2人のおかげです」

「さっそく見てみるか」

繭の前に向かう。

「やったね!」

「うん!」イエナとマーラがハイタッチを交わす。

「蜘蛛ちゃん、あんたも手伝ってくれたおかげで大成功よ」

「ギュルル」


「モート、剣を」

手を横に差し出す。

「ガル」

モートが蜘蛛の元まで駆け、くくりつけている布から剣を一本取り出し、すぐさま差し出した手に剣が届く。

繭に小さい切れ目を入れ、中身を確認する。

剣で繭を裂くと、抗うように放たれたのは黄色い胞子。

辺りに舞う黄色い胞子を見る。胞子が漂い、そしてゆっくりと舞い落ちていく。手の平に少し積もった胞子を片手で嗜める。麻痺性のある胞子か。

フングスだな。

フングスが続けて紫の胞子を放ってくる。剣を構え、フングスの額に剣先をゆっくりと突き刺していく。繭の中で激しく暴れるフングスを突き刺し、突き刺した剣に力を入れ抑制する。そして次第に暴れるフングスの動きが収まり静かになる。茶色の血が滴る剣を抜き、モートの方へと差し出す。

モートが剣を受け取る。

「残りを頼む」

「ガル」

イエナとマーラを眺める。生者と死者が手を取り合い「殺戮の収穫祭」を喜ぶ。美しい光景。

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