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09

 

 連邦軍、二個連隊。


 トラック数十台で構成された隊列を組みながら、連邦軍は荒野を進撃する。

 彼らは優れた最新鋭技術により、機械化された軍隊を持っている。

 連邦は重火器の開発により、世界や獣人を圧倒してきたが、それだけではない。


 トラックといった輸送車両も彼らの発明品だ。

 彼らは従来の徒歩よりも早く進撃し、破竹の進撃を遂げた。


 しかしながら、これは連邦軍を驕らせるものでもあった。


『最強の連邦軍』を恐れた敵は、戦わずして逃げることも多く、連邦軍人たちに中身のない勝利を与えた。

 勇敢な敵もいた。

 彼らは連邦を恐れず、鹵獲兵器の使用、地形を使った戦闘で抵抗しようとした。


 しかし、連邦軍には獣人部隊が居た。

 敵の強固な陣地に獣人部隊を突撃させ、敵が壊滅状態になってから、自分たちはようやく突撃するのだ。


 こうして、連邦軍は『勝利』を重ねてきたのだ。


 だが、空虚の勝利で実力がつくはずがなかった。


「くっ、車輪が土に埋まった!」


「ええい、何をしているか!? 

 貴様らは徒歩でついてこい!」


 また一台、トラックがスタックした。


 この時期の連邦郊外は朝方にかけて雪が降るような気候だった。

 日が昇れば雪は解けるが、大地をぬかるみにして、重量のあるトラックの車輪が埋まってしまう。


「くそぅ、足の感覚がないぜ」


「急がないと、トラックに置いて行かれるぞ」


 徒歩での踏破はさらに困難だ。

 ぬかるみはとにかく不快で、ブーツから泥が入り込み、足の感覚を奪う。

 先頭を行くトラック、不調のトラック、徒歩の兵士の隊列は伸びきっていたが、彼らは進軍を続けた。


【ここから先より、獣人連隊支配地域、命の保証せず】


「舐めやがって!」


 徒歩の兵士が立っていた看板を蹴りたくる。


 そして、連邦軍は予定よりも何時間も遅れながら、獣人たちの防衛線へと到達した。

 遠くにぼんやりと見える防衛ラインは、まるでビーバーが作ったダムのように、強固なものに見えた。


 先鋒を務めるマックス指揮官は、自らを奮い立たせ、号令を発した。


「全軍、突撃開始!」


 ◇


 連邦軍の襲撃は、荒野の茂みに潜んでいた斥候によって、発見されていた。

 トムという数少ない男の狼の獣人は、遠吠えを行うことで、防衛線の味方に危機を伝えた。


 獣人といっても個人差がある。

 例えば、アンとユキノは人間の少女に猫耳と尻尾が生えただけのように見えるが、トムは狼をそのまま二足歩行にした外見をしている。

 連邦の人々は、前世で犯した罪が重いほど獣に近くなるだという迷信を信じているが、人との交わり具合とか、遺伝子的な要因だろう。


 ともあれ、トムのお陰で、ケルビンらは余裕をもって配置につくことができた。


 獣人たちが武器を持ち、決められた配置につく。

 身体が資本の獣人連隊には旧式の精度の悪い武器しか渡されないが、彼らには第7中隊が残した性能の良い武器があった。

 

 ケルビンは連邦軍の到着を双眼鏡で眺めながら、どこかの前線で聞いた敵の歌を口ずさんでいた。


「勇敢な連邦人(おまえたち)たちは、銃と大砲で、槍と剣で武装したおぞましい敵を倒したんだ」


「……いい歌だな。歌詞に共感した」


隣にいたユキノが皮肉気に笑って見せた。

彼女は砲弾を手にして、迫撃砲に押し込もうとしていた。


自分の腕っぷしに自信がある獣人たちに、人間の武器を使わせるのはとても骨が折れる説得だった。

だが、それでもケルビンはやり遂げ、5年かけて愚連隊は統制された連隊へと変貌したのだ。


一方、目の前から雄たけびを上げて突撃する連邦軍は何の進歩もしていない。

そうすれば、勝てると思っているから。


「防衛戦開始、砲撃はじめ!」


だから負けるはずがない、ケルビンはそう確信していた。



残念ではありますが、ほとんど見てもらえていないので、この戦いの結末までで打ち切りにさせていただきます。

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