02
ケルビンの手には連邦が誇る技術力と生産力の結晶である38式拳銃が握られていた。
「は?」
「何の真似だ?」
軍人でありながら、戦場に出たことがない彼ら高官たちは、銃口を向けられても、死を理解できずに首をかしげるだけだった。
ケルビンが引き金を引くと、端に座る階級の低い高官から撃ち抜かれていく。
何名かは、咄嗟にかがんで回避しようとしたが、間に合わない。
「目が、目があああああ!」
「がぁぁぁぁぁぁぁっ! 」
それどころか、逆に下手によけたせいで頭部から銃弾がずれ、余計に苦しむ羽目になった。
獣人よりかも獣らしい、けだもののような声をあげる男たちに、赤毛の女は心底気持ち悪そうな顔をし、黒髪の女はわずかに顔をしかめた。
そして、ケルビンの持つ銃は弾切れで、スライドストップする。
最後の一人は中央の席に座っていた大佐の階級章を付けた男だった。
「ユキノ」
「承知」
ケルビンが短く、黒髪の獣人を呼ぶと、彼女は自分の刀の鞘を握り、ケルビンに差し出した。
彼はそれを鞘から抜き取り、大佐の首筋に当てた。
「や、やめろ。
私は連邦中央指令部から派遣された指揮官だ。
私を殺す、すなわち、連邦を敵に回すということなんだぞ!?」
「承知の上です」
「何故、獣人なんぞの肩を持つのだ?」
「そんなんじゃありませんよ。
なんというか……我々は肩を組んでここまで来たんです」
「恥ずかしいこと言ってないで、早くとどめを刺しなさいよ」
猫耳の少女、アンが顔を背けてぶっきらぼうに言う。
だが、彼女の下半身から延びる尻尾は、ケルビンに巻き付いていた。
「連邦人としての誇りはないのか!?」
「連邦の誇りとは何でしょう?
獣人と俺は9千キロ㎡、我が第3獣人連隊はそれだけの地域を制圧してきた。
だが、連邦に住まう人間たちは何をしてきた?
もっと領土、酒、金が欲しいと、呻きながら、腐敗しながら、上流階級の者たちだけがブクブクと太っていくだけ。
努力は決して報われない国に従うつもりはない。
俺たちなら、もっと良い国を作れる」
「国を作る……!?まさか、貴様!?」
「ええ、天国からよく見ていてください」
ケルビンが刀を一閃した。