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アクション日刊ランキング4位ありがとうございます。

「は。警備兵たちがガスを使用する前に、マックス指揮官たちは何処かへ立ち去っていたと報告を受けています」


 刑務所長室では、伝令兵が騒ぎの鎮圧を報告していた。

 だが、それをねぎらう様子はなかった。


「ちっ、身柄を確保すれば、責任を追及できたものの!」


「貴方、西部軍と中央軍に抗議の抗議文を! 

 このような無礼な態度、処罰に値しますわ!」


「わかっている、青二才の指揮官め!」


 その時、部屋の扉が開け放たれ、別の兵が息を切らしながら飛び込んできた。


「な、なんだ!?

 どいつもこいつも、礼儀知らずの無能の田舎者どもめ!

 貴様ら、全員不敬罪で……!」


「し、所長!敵に侵入されました!

 死傷者多数!

 何者かの仕業で、獣人たちが檻から出ています! 」


「何!?」

「なんですって!?」


 マイヤー夫妻は驚愕し、混乱した。

 そして、夫の方がヒステリックに叫んだ。


「何をしている、逃げ出した獣人どもを捕らえぬか!

 殺してでも、構わん!」


「て、敵は精強で、逃げ出した獣人達もいます。

 我々だけでは太刀打ちできません!

 どうか、今すぐ狼煙を上げ、軍の駐屯地に援軍を要請してください!」 


「何を言うか!? 私に恥を晒せというのか!?」


 兵は指揮官の言葉に絶句し、押し黙るしかなかった。

 だが、その時、廊下の奥から兵の悲鳴が聞こえた。


「ああ、獣人たちが上ってきているわ!? 」


「ええい、お前達、此処に獣どもを近寄せるんじゃない!

 早くいけ!」



 ◇


 刑務所長室のある三階へ、ケルビンとアンは踏み込んでいた。

 監獄とは打って変わり、豪華な装飾が施された廊下には、テーブルや椅子で簡易的なバリケードを作り、二人を待ち構える兵たちがいた。


「随分と舐められたものね!」


 だが、アンは臆することなく、自信満々に進み、両手のリボルバーを放った。


 二丁拳銃……それは連邦や他国が拳銃を開発した際、考案された撃ち方の一つだ。

 コンパクトで片手撃ちができる拳銃ならば両手で構えて、火力をあげたり、同時に別々の敵を倒すことができるというアイデアだ。


 しかし、すぐに廃れた。

 拳銃とはいえ、片手で反動コントロールするのは至難の技であり、なおかつ、それをコントロールして複数の敵を狙うなんて言うのは不可能だ。

 人間にとっては。


 アンにとっては違った。

 彼女の獣人としての優れた握力、そして、獣人の中でも突出した空間把握能力は二丁拳銃を可能にさせた。


「アン、容赦するな。敵はアマチュアだ」


「りょーかい!」


 ケルビンの命令を受けると、アンはリボルバーを撃ち放った。

 警備兵たちは物陰に身を隠し、銃撃をやり過ごそうとした。


「は、ははは、やっぱり獣は馬鹿だ!

 遮蔽物越しに撃ってくるなん――うごっ!?」


「ショーン!」


 アマチュア、ケルビンが彼らをそう評したのは、ただ侮ったわけではなかった。

 テーブルや椅子そんなもので身を護れると思い込み、室内では長すぎるライフル銃で武装した彼らは、実戦経験もなければ、自己研磨の為の訓練もしていない、正しくアマチュアだった。

 バリケードの配置も酷く、味方が椅子を貫通して撃たれたのを見て、より硬そうな遮蔽物に逃げようとした兵は自らの配置した机の脚に引っ掛かり、転倒した。

 そこをケルビンが撃ち抜く。


 アンの両手から放たれる弾道は、逃げる敵、反撃する敵全てを撃ち抜く。


「リロード!」


 アンは八重歯を見せながら、そう叫ぶと、弾を排球し、袖から弾を宙に放り投げ、それをリボルバーのシリンダーで装填(キャッチ)した。

 異次元の空間把握能力が成す、革命的なリロードだった。


 瞬く間に、警備兵が殲滅されて、恐怖に怯えた一人の兵が武器を放り投げ、走り出した。


「こ、殺さないでくれぇ!」


「おい!」


 ケルビンは思わず声を上げたが、無駄だった。

 錯乱したのか、諦めたのか、彼は窓から勢いよく身を投げた。


「自業自得でしょ、それだけのことをやって来たんだから」


「ああ……。

 そうだ、そうだな。


 だからこそ、ここの刑務所長がどんなことをしてきたのか、聞きださないとな」


「いきなり殺すなってことでしょ? さっき聞いたって! 」


 ケルビンたちは、無人となった廊下を通り抜け、『刑務所長室』の前に来た。

 ケルビンは床に落ちている機関銃を拾った後、豪華な両開き扉に手をかけた。


「ねぇ、ケルビン。

 どうして、手が震えているの?

 怖いの?」


「……まさか、そんなはずはないだろ?」


 ケルビンは自分にも言い聞かせるようにそう言い、笑みを見えた。

 だが、扉のステンドグラスに反射する自分の顔は少し引きつっていた。

 首を振りかぶり、彼は扉を開け放った。


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