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暫く、短めにしつつ、投降頻度を上げます。

 

 森を抜けると、アビシキ村の関所が見えてきた。

 ケルビンはトラックを道に乗せ、如何にも、別の都市から走ってきたように見せかけた。

 そして、アンとユキノに身を隠すように伝える。


 二人は後部座席に移り、毛布をかぶって身を隠した。


 関所には、警備がいた。

 国境ではなく、あくまで連邦国内での警備のため、警棒とホイッスルといったものしか持っていないが、それでも仲間を呼ぶことができる。


 騒ぎを起こす、強行突破は得策ではなかった。

 だからこそ、特殊部隊『ハゲタカ』の出番だ。


 ケリーたちは荷台から降り立ち、警備兵の元へと向かう。

 立哨の警備兵は薄汚れた作業服姿のケリーたちを、物流業者と思ったようだ。


「よ、よぅ!

 今日は冷えるな」


「無駄話はいい、積み荷はなんだ?」


「ああ、小麦だよ」


「小麦? そんな予定は聞いてないぞ。

 荷台を見せろ 」


 警備兵は、ケリーたちを押しのけ、荷台を確認しに回った。

 そこに積まれているものを見て、警備兵は怒号を上げた。


「なんだこれは!? 説明しろ!」


 そこに積まれていたのは、樽に入った金属類だった。

 ……それらは先の獣人と連邦西部軍との戦いで将校らが持っていた金の勲章や懐中時計だった。

 警備兵が仲間たちを呼ぼうとしたとき、ケリーが彼の胸元のポケットに、金の懐中時計を入れた。


「何?」


「あ、あんたも大変だよな。こんな朝っぱらから、立ち仕事なんて。

 見ろよ。

 お仲間は部屋の中でトランプしているみたいじゃないか。


 下っ端は大変だよな。

 真面目に働くなんて、馬鹿馬鹿しいそうは思わないか?


 これは前金、商品がうまく売りさばけたら、帰りにアンタに分け前をやるよ。

 な?」


 警備兵はしばしたまりこんだ後、わざとらしく大声を上げた。


「ふむ、積み荷に問題はないようだ!

 行っていいぞ!」


 かくして、ケリーたちはトラックの荷台に乗り込む。

 ケルビンも手を上げて、警備兵に感謝する。

 関所を通り抜けると、荷台でケリーたちが大きなため息をついた。


「……何とかなったな」


「大根演技だったが、中々やるではないか、人間」


「ど、どうも、ありがとうございます」


「畏まるな、次のお主らの仕事はさっきとは真逆の役なのだぞ」


「あ、ああ。そうだな!」


「ば、馬鹿者、いきなり着替えるな!」


 次の仕事の為に、ケリーらは急いでその制服に着替える。

 ユキノは慌てて背後の荷台から眼をそらし、逆に、アンは興味深そうに凝視していた。

 暫くして、運転するケルビンの前に大きな灰色の壁が現れた。

 自分の少年期の記憶にはない中世の城のような、歪な建物だった。


 軍人として立派になったら、家族に認めてもらうため、故郷に凱旋しようと考えていた時期もあった。

 しかし、故郷の姿は打って変わってしまっていた。

 ケルビンが世話した花壇も、地盤工事の下に埋もれてしまったのだろう。


 ケルビンは感傷を振り払い、命令を下した。


「作戦の第二段階に移行する」



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