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「衛生兵ー!」


「ああ、女神様、どうか慈悲を!」


 連邦兵たちは、激しい銃火の中身動きが取れなくなっていた。

 トラックは引き返そうとしたもの含めて、全てが破壊された。

 道中、トラックがスタックして徒歩で来て兵士たちも後から戦闘に参加したが、疲弊した彼らに強固な防御陣地を相手する力は残されてなかった。


 運良く生き延びた兵士も、遮蔽物がないので、死んだ味方の死体を盾にしてやり過ごすしかなかった。


 その時、突然、射撃がやんだ。


「今だ! 全軍突撃!」


 生き残っていた指揮官が兵たちに命ずるも、兵士たちは我先にと後方へと敗走を始めた。


「何をしている!?」


「もう嫌だ!」

「死にたくない!」


 無様に逃げ出す兵の中には指揮官もいた。

 だが、その直後、彼らが逃げ出した方向――すなわち、進軍してきた平野が突然爆発を起こした。


「な、なんだ!? 地雷か!?」


「もし地雷なら来た時に踏んでいるはずです! 

 これは一体!?」


「まさか、挟み撃ちじゃ!?」


「い、いや、聞いたことがある! 

 天候を操り、雷を落とす……獣人の呪いだ! 

 あ、あああ、ああああああああああっ!?」


 挟み撃ちの可能性や、獣人にかかわる伝承を思い出した兵士の一部はパニックになった。


 もちろん、獣人にそんな能力はない。

 この爆発は対人地雷だ。

 ただし、踏まれてから15分後に起爆するようセットされた地雷だ。

 遅れて徒歩でやってきた歩兵たちは疲労で足の感覚がなくなり、地雷を踏んだことに気が付かなかった。

 そして、彼らが戦意を失い、敗走したタイミングでセットされたタイマー通りに起爆した。


 このトリッキーな戦術により、連邦軍は完全に烏合の衆となった。


 そして、最後の決め手は。


 戦場にラッパの音が響く。

 兵たちは凍り付いた。


「と、突撃喇叭……!」


 獣人達の防衛ラインの中央がゲートのように開き、中から眼をギラギラと輝かせた獣人たちが現れた。

 そして、彼らは突撃のやり方を忘れてしまった連邦兵たちに、突撃のやりかたを教えるのだった。



 ◇


 連邦のわずかな残党に対する突撃殲滅を以って、この戦いは終わった。


 幾多の残骸と死体の転がる戦場で、ユキノは何かを見つけ、ケルビンを手招きした。

 そこには重傷を負い、真っ青になりながらも、虫の息があるマックスが倒れていた。


 マックスはケルビンに顔を上げるとそう伝えた。


「この獣人どもに私を殺すな、と伝えろ」


「俺の要求を呑んでくれた時には、話が通じる奴だと思ったんだが……。

 次はないと、言ったはずだぞ。


 何故、そこまで獣人を恨んでいる?」


 ケルビンは拳銃を向けるが、トリガーに手をかけたまま、動かさない。

 マックスはしばし考えた後、こう言った。


「幼少期、獣人たちに母を殺された。


 その悲劇を起こさない為にだ……!」


「……」


 だが、その時、マックスの傍らで倒れていた兵が目を覚まし、最後の力を振り絞るように口に出した。


「で、でたらめだ。

 そいつの母は、連邦議会の政治家で今も元気に生きている!

 はったりだ……! 

 こんな奴の名誉のために!」


「ち、違う!

 待て!」


 ケルビンの銃口が火を噴いた。


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