晩蝉
いつか聞いた晩蝉の鳴き声
少しづつ遠くなっていく
過ぎて行く時間は容赦がなくて
私のことを一息に飲み込む
あの町で青々と茂っていた雑木が
あなたのことを攫っていく
始めから存在していなかったかのように
跡形も残らないように
いつか見た日暮れの泣き顔
少しずつ遠くなっていく
考え方や感じ方は違うけれど
それでも夕焼けは平等に飲み込む
紅く染まる夕日が
あなたを大切にし
あなたに寄り添い
あなたと進んでいく
冷たい炭酸飲料が
細胞に染み渡るような速さで
薄暗くなった町を
橙色に染めていく
二度目はないという覚悟を持って
まだ消化しきれていない愛を探している
あの晩蝉が命を焦がしていくように
あなたもあの日鳴いていた
掠れて届きづらい鳴き声でも
短い蝋燭に火を灯している
ゆっくりと夏は終わっていく
あなたのことを思い出しています