第一話・無事に五歳になったようですが、何やらきな臭いことが起きています
転生を果たして五年が経過した。
記憶と言語の取得、レベルアップとステータスアップが反映された。
しかし記憶が戻ったその日に大事件が起きてしまう……
意識がはっきりしたのは先ほどだ。
俺はこの世界の二番目に大きい大陸にあるシャバラ帝国の海沿いの村で産まれた。名はゼパイル・フォン・ホーバマー。裕福でも貧しくもない、下級貴族である一等魔法爵だ。俺は長男で三歳年下の弟がいる。
俺はこの世界で自由に生きると決めた。やりたい事をやる。
だが、秩序と義務を蔑ろにはしない。
その上で自由に生きる。
現在のレベル一億五千七百万強。現在も上がり続けている。
さてさて、早速スキルやら魔法やらを創っていくか。
まずは――。常時展開する結界。俺の体の周辺を薄皮一枚で展開する結界を創る。
その結界の能力は単純にステータスに乗じた防御力と俺自身の各種耐性無効を付与した常時展開型結界。
どうやって創るんだろうと思っていたが、案外あっさり出来上がった。
創造スキルには半透明のディスプレイのようなものが出現し、プログラミングのような要領で簡単に完成した。
常に俺の魔力が使用されているが、毎秒レベルアップし続けている俺には全く影響がない。
毎秒レベルアップがなくても膨大すぎる魔力と魔力回復量によって瞬時に消費魔力は回復する。
俺の現時点での魔力総量は約二千億。
因みにこの世界で最高峰の魔術師の魔力総量はおおよそ百万。
これだけで俺がどれだけ化け物かが分かる。
但し、ただ魔力が多くても、ただレベルが高くてもそんなのには意味がない。
使いこなせて初めて一流であろう。
次にステータスやその物の情報を読み取る事が出来る、鑑定スキルを作成。
通常の鑑定スキルは自分より格上の者の情報は読み取れない。
だが、俺の鑑定はそんなのを無視することが出来る。
その理由に通常は読み取れない情報には俺の魔力を消費して読み取る事が出来るように創ったからだ。
何故世界最高峰の魔術師の魔力や通常の鑑定スキルの事が分かるのかというと、創造スキルには創り出すものによって世界の常識のようなものが分かる。
それによっておおよその常識が分かった。
朝までスキルや魔法作りに励んでいた。
すっかり外は明るくなっており、村も賑わい始めている。
俺は自室を出てリビングへ行くと、両親と弟が食事をしていた。
「おはようゼパちゃん。遅かったわね。さぁ座って」
俺の母、ミーヤが笑顔で手招きしている。
「もう――。起こしてよ……」
俺は不貞腐れながら椅子に座ると、父オーガスタがガハガハ笑いながら俺の背中をバンバン叩いた。
「ハハハ! 一回だけ部屋に行ったんだぜ? だがな、お前が難しそうな顔をして何やらしていたから邪魔するのも悪いと思ってな」
オーガスタはガハハとまだ笑っていた。
普通の幼児ならばあの強さで背中を叩かれていたら背骨骨折でギャン泣きどころの騒ぎではなかっただろう。
俺の常時展開結界によって何事もなく済んでいた。
それから家族と喋りながら朝飯を食べ、一足先に俺は自室に戻り、再び創造を始めた。
暫く熱中していたが、外が騒がしくなっているのに気付いた。
自室の窓から外を見ると、領主であるオーガスタが領軍に何かの指示を出している。
何を言っているのか聞こえなかったため、すぐに創造で聞き耳スキルを作成した。
完成と同時にスキルを発動し、オーガスタと領軍の会話を聞くと、何やらモンスターが大量発生したらしく、人為的なものである可能性も拭えないらしい。
モンスターか。正直レベルやステータスは他を圧倒しているけど、それを使いこなせないと何の意味もない。
だからモンスターの討伐に俺も行きたいが、見た目は完全に五歳児だからなぁ……。百億パーセント反対される。
こっそり抜け出しても良いけど、跡取りである領主の息子がいなくなったとなれば大問題にもなりかねない――。
しかし、このまま黙ってはいられないのも事実だ。
転生しても尚困っている人などを放っとけないようだ。
それに、俺は貴族で、領主の息子だ。
俺は自室を出てオーガスタの元に向かった。
屋敷内は避難者などで慌ただしくなっているが、それを横目に屋敷を出た。
「ゼパー。どうしたんだ?」
オーガスタは突然現れた俺に一瞬驚いて、聞いた。
「父さん、俺もモンスターの討伐に行くよ」
俺が宣言すると、領軍がざわついた。
そして一拍置いて母のミーヤが飛び出してきた。
「何を言っているの! ダメよそんなの! あなたは避難していなさい!」
やはり母は猛反対している。
だが、オーガスタは冷静だった。怖いくらいに。
そして俺の目線に合わせて腰を屈めた。
「ゼパー、モンスターは数千はいるだろう。領軍だけで対処できるものでもない。勿論近隣領主に応援を頼んでいるが、到着にはまだまだかかる。加えてモンスター一匹一匹のレベルも高い。それでも行くのか?」
大反対されるのかと思ったのだが、オーガスタは真顔で俺を見つめている。
「あなた! いい加減にして! ゼパちゃんはまだ五歳なのよ!」
ミーヤが怒鳴り散らしているが、オーガスタは俺から目線を切らない。
ずっと俺の眼を見ている。
「行くよ。だって俺は領主の息子だから」
俺が言うと、オーガスタはニヤリと笑い、俺の頭をガシガシと撫でた。
そして立ち上がり、ミーヤと向き合った。
「この子は強い。途轍もなくな。だから俺はこの子を行かせる」
「何を言っているのよ! いくら私たちの子でもまだ五歳なの!」
「ミーヤ、俺の鑑定スキルでこの子を見た。朝この子を起こそうと思って部屋に行った時にな。結果は何も分からなかった。名前しか読み取れなかったんだよ」
「何を言っているの? だから何よ!」
「落ち着けミーヤ。君ほどの実力者なら分かるだろ?」
オーガスタが諭すように言うと、ミーヤは落ち着きを取り戻し、俺を見た。
多分鑑定スキルを発動しているのだろう。
そして驚愕の表情を浮かべた。
「ゼパちゃん、あなたのレベルはいくつなの?」
ミーヤも屈んで俺に小声で話しかけた。
今はレベルやステータスを隠す意味はない。
だから正直に答えた。
レベルは約一億五千七百万。魔力総量は約百五十兆。単純物理攻撃力は約七百八十八兆。単純魔力攻撃力も同じ。単純物理防御力は約四百七十三兆。魔法防御も同じ。勿論今も上がり続けている。
それをすべてミーヤに伝えると、一瞬恐怖の表情が浮かんだが、すぐに笑顔で頷いた。
「そっか――。あなたが強いのは分かったわ。行くのも止めないわ。だけど、約束してちょうだい。必ず生きて、五体満足で帰ってくるって。そして、帰ってきたらあなたに何があったのか、何故そんなステータスなのかを聞かせてちょうだい」
ミーヤは力強い眼で俺をまっすぐ見つめている。
「うん。約束するよ」
一瞬躊躇ったが、俺をここまで心配してくれる『親』を大事にしたい。そして嘘は言いたくない。
その気持ちを基に、俺は約束をした。
ミーヤはオーガスタに目配せをした。オーガスタは頷くと、口を開いた。
「ではゼパーは単独行動でモンスターの討伐。領軍は各隊長の指示に従い、各個討伐。ゼパーも領軍も報告は厳守せよ! 以上!」
オーガスタが大声で指示を出すと、領軍は敬礼した後に一瞬で散開した。
「ゼパー、念話魔法や通信スキルは持っているか?」
領軍が解散すると、オーガスタが俺に向き直って聞いた。
今は持っていないが、一瞬で作れる為、その場で念話魔法を創造した。
「今創ったから大丈夫だよ」
俺が言うと、困惑気味に笑顔が引き攣ったオーガスタだが、すぐに気を取り直し、頷いた。
「父さんの固有識別魔力だ。覚えておいてくれ」
この世界には指紋と同じように一人ひとりを識別できる固有の魔力がある。
その固有魔力を基に念話を発動する。
「分かった。何か見つけたりしたらすぐに連絡するね! 行ってくる!」
「気を付けるんだぞ!」
「気を付けてね!」
オーガスタとミーヤが声を合わせて手を振った。
騒ぎに気付く前に創造した浮遊魔法で飛び立ち、同時に索敵魔法で周辺のモンスターを探した。
村の東側に広大な森があり、その森に大量のモンスターの反応がある。領軍も向かっているようだが、徒歩での行軍のためまだ到着していない。
そのため浮遊魔法で上空から向かった。
モンスターの近くに着いたが、モンスター側も俺に気付いていて、翼があり、飛ぶことが出来るモンスターは上空で俺を待ち構えている。
全身が灰色で腰布一枚のガーゴイルのようなモンスターが咆哮で俺を威嚇している。
さて、どうやって料理をしようか――。
膨大な魔力と圧倒的な攻撃力で制圧をしても良いが、それだけでは技術も経験も付いていかない。
まずは鑑定で相手の情報を読み取る。
『種族ガーゴイル。性別男。年齢零歳。レベル五十。固有スキル:飛翔、毒牙』
レベルはそこそこだが、気になるのは年齢だ。
基本的にはモンスターも年齢があり、その生きている年でレベルも上昇する。
なのにこのガーゴイルは産まれてすぐにレベルが五十。
ガーゴイルが誕生と同時にレベルが五十ならば納得も出来るが、俺が作った『森羅万象』スキルによると、誕生と同時に高レベルなモンスターや魔物は一部のみらしい。
そういえば先ほどオーガスタと領軍の会話でこの反乱が人為的なものの可能性があると言っていた。
ならばこのモンスターたちは何かしらの操作を受けていて、その操作を行っている何者かがいる。
ガーゴイルの料理の前にオーガスタに報告しておくか。
念話でオーガスタに接続すると、すぐに返ってきた。
『どうした!? 何かあったのか?』
「うん。気になることがあってさ。この大氾濫が人為的なものの可能性があるって話をしてたよね?」
『!? 何でそれを――。まぁ良い。あくまでも可能性という話だ。それで、どうかしたのか?』
「うん。多分何かに操作されているのか、誕生間もないモンスターがレベル五十とかなんだ。今見ているのはガーゴイルなんだけど、年齢は零歳」
『分かった。他にも異常がないか見ておいてくれ。因みにモンスターの相手は出来そうか?』
「問題ないよ。大丈夫」
『分かった。では頼んだ』
念話を切ると同時にスキル弱点看破を発動した。
目の前のガーゴイルの弱点は背中から生えている羽と頭部。そして弱点属性は雷、水。大きな弱点はこの二つだった。
ならば――。
「雷槍!」
雷の槍を作り出し、ガーゴイルに放った。
勢いよく雷槍は手元を離れてガーゴイルの胸を貫いた。
その瞬間、ガーゴイルは絶命した。
ガーゴイルの絶命の瞬間を見ていた他のモンスターが俺を『敵』だと認識して一斉に飛び掛かってきた。
「雷槍・雷放槍陣!」
俺の正面に雷槍を出現させ、放射状に数十の雷槍を発射した。
飛翔が出来るモンスターは今の魔法で消滅した。
下にいるモンスターは何が起こったのか分からない様子で、キョロキョロしている。
俺はモンスターが跋扈している地面に降りた。
モンスターたちはまさか降りてくるとはといった具合に飛びのいた。
様々なモンスターがいる。
ガーゴイルのように人型だったり、獣のようなモンスターもいる。
軽く索敵しただけで数百はいるため、俺の技術力の上昇は一旦諦めて魔法を放つことにした。
幸いまだ領軍は近くにいない。
「雷槍・雷輪槍舞!」
念のため出力を絞って放った。
これも雷槍の派生技で、円形状に雷槍を発射する。
出力を絞ったため、雷槍が貫通することもあれば数匹だけ巻き込む形で雷槍が無くなる場合もあった。
しかし、周囲のモンスターはある程度間引けた。
だが、モンスターの困惑は一瞬だけで、周囲にいるモンスターの目つきが変わり、無表情で俺に向けて歩き出した。
その後何度か雷槍を放ったが、次々湧き出るモンスターにはキリがない。
だが、村へ向かっていたモンスターたちは俺に向かっている。
雷槍で牽制しつつ、オーガスタに念話を繋げた。
領軍を近づけないようにという事と、俺の索敵に反応した大型の『物体』を報告した。
そこからモンスターが生まれている。
俺の周囲のモンスターを全て消滅させた後に物体の方に行くから、領軍は物体の方に行ってほしいという旨を伝えた。
オーガスタは一瞬躊躇ったが、了承してくれた。
領軍の進行方法が変わったのを確認してモンスターに集中しなおした。
「魔砲震滅陣!」
属性を持たない、純粋な魔力を周囲三百六十度に放出した。
単純な魔法だが、俺の圧倒的な魔力を凝縮して発射しているため、その魔力砲に触れたモンスターは一瞬で塵になって消滅した。
モンスターだけでなく周囲の木々も消滅してしまったが、これは致し方ない。
あとで直すとして、もう一度周囲の索敵をした。
そして俺の周囲には一切モンスターがいなくなっていた。
先ほどの魔法で消滅したようだが、領軍が向かっている物体の方にモンスターが固まっている。
物体に向かっていると判断して防衛に徹しているようだ。
さて、向かうか。
浮遊魔法で物体へ向かった。
途中で領軍が見えたが、そのまま物体へ向かった。
嫌な予感がしたからだ。
物体の近くに到着した。
ドラゴン、トロール、その他巨大なモンスターが大量にいた。
その中心に物体がある。そして物体の前には黒いローブを着た魔術師のような者が五名いる。
こいつらが大氾濫を起こしていたのか――。
この作品は何か楽しく書けてます!
更新頻度は遅いかもしれないですが、数話書き溜めて、一話ずつ投稿&更新の予定ですので、よろしくお願いします!
っていうか主人公の魔法名が厨二病っぽいと思ったでしょう?
ワザとですw
後々理由が分かりますので、温かい目で読んでくださいw
ではまた!